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4、俺からのプレゼント
テーブルも片付き、ヴィルさんたちも自分の部屋に戻ると、部屋には心地よい静寂が訪れた。
ソファに座ってグラスを傾けるヴィデロさんの横で、滅茶苦茶アルコール度数の低いお酒を飲むのは、なかなかに至福の時間だった。
そうだ、俺、料理しかまだプレゼントしてなかった。
ヴィデロさんの横から立ち上がると、俺はちょっと待ってて、と寝室の方に向かった。
そっとクローゼットにしまっていた物を取り出して、ソファーに戻る。
ずっと考えていたけれど、実は俺、ヴィデロさんが本当に欲しいモノってわからないんだ。聞いても「ケンゴがいればいい」って言ってくれるし。俺も同じ気持ちだから、他の何か、なんて聞くことも出来ない。だから、ヴィデロさんにプレゼントを買うのっていつも難題なんだ。本当に喜んで欲しいから余計に。
だからすっごく頭を捻って、あんまり頭の良くない俺が思いついたのなんて、たいしたことないのかもしれないけれど。
「ヴィデロさん、ハッピーバレンタイン。これ、受け取って」
俺が箱を渡すと、ヴィデロさんは驚いたように目を開いた後、その綺麗な瞳を隠すようにフッと目を細めて、受け取ってくれた。
小さな箱の中には、ヴィデロさんが昔描いて見せてくれたオルランド家の紋章を彫って貰ったロケットペンダントが二つ入っている。
一つは俺の、とかじゃない。
「ペンダントが、二つ? これ……」
「特注で作って貰ったんだ。二つともヴィデロさんが持っていてね」
「二つとも? 一つはケンゴのではないのか?」
「違うよ」
これをね、と紋章の入ったペンダントヘッドを開いて、中に入った写真を見せる。それは、俺とヴィデロさんの結婚式の時に雄太に撮って貰った写真で、ヴィデロさんと俺、アリッサさんとヴィルさんが映った家族写真だった。
「もしもさ、気軽にグランデに行けるようになったら、これを、ヴィデロさんのお父さんにあげたいから、ヴィデロさんが二つとも持ってて欲しいんだ。里帰りして、墓参りしよ。お父さんにちゃんと挨拶したい。ヴィデロさんを貰いますって。幸せにしますって」
「ケンゴ……」
ね、と顔を上げた途端、ヴィデロさんの腕に包まれた。
いつもより少しだけキツイ抱擁。
ちょっとだけ苦しいけれど、ヴィデロさんの腕に包まれてるんだと思うと、胸が跳ねる。
「ケンゴ……愛してる。きっと明日は今日よりもっと愛してると思う」
「うん。俺も。毎日ヴィデロさんに惚れ直して、見惚れてるもん。見飽きるっていうことがないっていうか。際限なく好きっていう気持ちが増えて大変」
今日も倒れるんじゃないかってくらいかっこよかった、と暴露すると、いい終わるか終わらないかのうちに口を塞がれた。
少しだけ野性味のあるキスに、さっき軽く愛し合った余韻が沸き上がる。
下腹部がキュウッと疼いて、胸が跳ねる。
「父に、ケンゴを見せたかった。絶対に父は喜んで祝杯を挙げると思う。そして、母と素敵な伴侶を得たなって、自慢げに……」
閉じていた目を薄っすらと開けると、ヴィデロさんの目が心なしか潤んでいた。
その瞳に見惚れていると、身体を持ち上げられて、ヴィデロさんの膝の上に降ろされた。
キスをしながらお互いの服を脱がし、寝室まで行く余裕もなく、俺たちはソファーで愛し合った。
身体中でヴィデロさんを感じて、奥まで愛されて、ヴィデロさんの首に縋りつき、熱にうかされたように愛を囁き合う。
洩れる声は全てが睦言のようで、水音や吐息すら俺たちの熱を煽った。
「ヴィデロさ……っ、好き、も、好き」
「ケンゴ、愛してる……っ、どれだけ抱いても抱き足りない。もっと沢山ケンゴが欲しい」
「うん……っ、ん、あ、もっと、もっと……っ!」
その存在感を俺の身体の奥に焼き付けているヴィデロさんのヴィデロさんをぎゅうっと締め付けて、俺は何度も何度も高みに昇った。
ヴィデロさんも沢山俺の中に熱を吐き出して、熱を擦りつけて、零れ落ちるそれを更に俺に擦り付けていく。
途中、浴室、寝室と場所を変えて、何度も俺たちは愛し合った。
俺のプレゼントは、その後数年お父さんのお墓にお供えすることは出来なかった。
何年も経って、ヴィデロさんがお父さんの亡くなった歳近くになって、ようやくヴィデロさんは俺を連れて里帰りをしてくれた。
それまでに数人のこっちの人が向こうに向かい、クラッシュが気ままにこっちに遊びに来るくらいには異世界間が身近になったけれど、俺とヴィデロさんが揃って向こうに足を向けたのは、かなり時間が経ってからだった。ヴィルさんが自ら安全を保障してくれてたんだけどね。ヴィデロさんの気持ち的に色々葛藤があったみたい。いつかは「あの頃はこんなことを考えてたんだよ」なんて笑いながら話して欲しいな、と思いながら、俺はヴィデロさんの気持ちの整理がつくのを気長に待っていた。
俺が初めてこの足でグランデを踏んだ時は、すでに俺もおっさんと呼ばれる歳になりかけていて。
ヴィデロさんはお父さんの亡骸が眠っているお墓に俺を連れて行ってくれて、ようやく生身で挨拶をすることが出来た。
俺が、ヴィデロさんは幸せです。挨拶が遅くなってすいません。って報告した時、ヴィデロさんの目から一筋の涙がこぼれたのは、俺の中でいつまでも色あせずに胸の中に残っている。
毎年バレンタインのプレゼントを贈って贈られているけれど、お父さんへの贈り物を一緒に贈られた時が最高に嬉しかった、とヴィデロさんはお父さんへプレゼントを渡してからそっと教えてくれた。毎年嬉しいけれどって前置きして。
毎年あの年の俺に負けてるっていうのがちょっと悔しいけれど、でも、思い出す度に幸せそうに笑って愛を囁いてくれるヴィデロさんが今も隣にいるから、あの年の俺グッジョブ、って思う。複雑。
毎年こうしてプレゼントを贈りあえて、いつでもヴィデロさんから幸せを貰えてほんと最高の人生だよな、と今年もまた頭を捻って用意したプレゼントを抱えながら、俺はそっとほくそ笑むのだった。
終わり。
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