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520、価値観ってより倫理観
ミニさんが『レッドガルスパイス』の畑を作っている間に、サウ村の獣人さんたちがわらわらと集まってきた。
長老らしき獣人さんとミニさんが何やら相談している中、俺とヒイロさんは実の使い方を考えていた。ヴィデロさんは護衛をしてくれていたけど、獣人さんたちが来た辺りからは魔物が出ても他の人が倒すから、と俺たちの近くにいながら上の獣人さんと話をしている。
「効能がなあ。『スタミナ上限時間内上昇』と『ヒートエフェクト』だろ。でもってバッドステータスで『スタミナ消費アップ』『微麻痺』ってのがなあ……」
「俺そこまで読めませんでした」
「鑑定眼を使いこなせるようになったら読めるようになるから頑張れ」
ヒイロさんの言葉に返事をして鑑定眼のレベルを見ると、まだまだ50にも届かない。見えないわけだよ。頑張ろう。
それにしてもヒートエフェクトって何だろう。スタミナの上限値が少しだけ上がるけど、その分スタミナの減りは早いよって感じかな?
使えそうで結構難しいよね。
「とりあえず色々やってみるか。マック、ヴィデロ、帰るよ」
ヒイロさんは実を数個腰のカバンにしまうと、ミニさんとサウ村の人たちに「じゃあな」と気楽に声をかけてナム村へ続く魔法陣への道を歩き始めた。
俺とヴィデロさんもヒイロさんに付いていく。
デートはとうとう修行にとって代わってしまったってことかな。あれえ。これ、パターンになりつつあるんじゃないかな。
ヴィデロさんと手を繋ぎつつ首を捻ってると、ヴィデロさんが「どうしたんだ?」と俺の顔を覗き込んできた。
「なんか、俺たちのデートっていつもデートじゃなくなるよねって思って」
「はは、そうだな。でも俺はマックと一緒にいられるならそれだけでいいんだけどな」
「俺も! だけど、たまには二人っきりで出かけたいっていうか。二人っきりでいるのはいつも家デートだし」
「家デートも大歓迎だけどな。外では見れないマックを見ることが出来る」
はい、愛し合ってる時のことね。確かにそうだし、愛し合うのもすっごく大事だと思う。でもこうやって手を繋いで二人でお出掛けも捨てがたいんだよ。
ってちょっとだけ狭量になってる俺の手に繋がれたヴィデロさんの手に、ギュッと力が入った。そして俺の顔を覗き込んだ状態からチュッとキスをすると、ヴィデロさんはスッと頭を上げた。
「はいはい、俺が邪魔なのはとってもよく分かったよ。でも少しだけ付き合ってくれマック。どう考えてもこの刺激物は俺一人では手に余るからな。その後ならいくらでも発情していいから。何なら奥の治療用ベッド貸すから」
くるっとヒイロさんが振り返って笑いながらそんなことを言う。邪魔、とかじゃないんだけど、多分俺半分くらい発情してたのかも。だってヴィデロさんを独り占めしたかったんだもん。
「ごめんなさい。師匠を邪魔だとは思ってないです。ただ、デートだって気合い入れてこっちに来ると大抵何かが起こるから」
「謝ることじゃねえよ。俺らにとっては番は唯一だ。二人でいたいってのもよくわかる。俺は番はいねえから体験したことはねえけど本能だから。俺らの種族じゃ、発情した奴らを邪魔するのはタブーに近いんだよ。邪魔しちまって発情期を逃したら次どうなるかほんとわからねえからな。それが繰り返されると俺らの間に子が生まれなくなる。そうなると、種族としては、先がなくなるんだ。今もまだこれだけいることの方が奇跡に近いんだよ。細々と生きてきたからな、俺らは。だから、マックが思うことは、謝るようなことじゃねえんだよ」
何せ本能だからな、とヒイロさんは足を止めて俺の頭をポンポンした。
そうか。俺がヴィデロさんを好きなのも独り占めしたいのも本能なのか。それじゃ抗えないよね、本能だし。
「そうそう。本能本能。だから発情するのも本能。ただし、他の奴の番に発情するのは本能とは言えねえからな。でもってその発情した相手に手を出すのはダメだ。そっちはタブー中のタブーだ。そこを侵したらここにはいられねえ。まあ、マック達はそこらへんは全く心配してねえけどな。人族にはそういうのを好む最悪なやつもいるっていうのは聞いてるけど、聞いてるだけでムカッとするし、どうして人族はそういうやつを平気でのさばらせておくのかそれだけはいまだに謎だ」
「番相手が唯一ですもんね」
「お互い納得ずくで番解消するんなら別にいいんだよ。相手が早くに死別した場合でも問題はねえ。でもなあ、人族はそういうんじゃねえだろ。価値観が人族と俺らとで全く違うってのはわかってるけど、そういうところだけは人族は好きになれねえなあ」
ヒイロさんの言葉に、俺は自然眉を寄せた。相手がいる人から奪う的なアレは、俺だって好きになれない。それは単純に人族と獣人の違いとは違う気がする。全然違う気がする。
人族と獣人との猥談の内容的齟齬はカルチャーショックだったけど。
「相手がいるやつを無理やりとか、そういうのは人族がどうとかいうのではなく、犯罪だ」
ヴィデロさんも、はっきりとヒイロさんに反論した。そういうのは牢獄に入るのが人族でも普通だと。
それを聞いたヒイロさんは、驚いた後に、すごくホッとした顔になった。
「そっか、犯罪かあ。よかった、犯罪だよなあ。最悪だよなあ。人族もそう思っててくれたことがわかってよかった。昔はそういうのが普通だって聞いてたからなあ」
「今は、少なくともヒイロたちと価値観が近くなったからこそ、俺たちはこうして行き来が出来るようになったんだろ。……もし、人族の街に来た折に何かあれば、俺もできる限りのことはする。だから、必ず教えて欲しい」
「今は全くそんなことはねえよ。異邦人たちも好意的なのが多いしよ。それに異邦人の見た目に俺らそっくりの身体を纏ってる奴らもいるだろ。そういうのがあるから、なんかオラン様が言うにはすごく獣人にとって生きやすくなったってさ。昔、まだ魔王なんて物騒なもんがなかったころの、大陸みたいになってきたってよ。でも、ありがとな、ヴィデロ。なんかあったらヴィデロを頼るよ。タタンもガレンもいるしな。マックも……うん。まあ、頼りにしてる、よ?」
なんか最後俺の名前はとりあえず付け足してみた程度のアレでしたね師匠。まあ、俺が頼りになるかって言うと微妙なところだけど。でももしヒイロさんたちに何かあったら、何を使ってでも誰かに土下座して頼んででも何とかしたいけど。
何もないことを切に祈ろう。願わくば、この間みたいに面白ずくで害を為そうとする異邦人が出ませんように。結構いろんな情報が出回ってると思うんだけど、耳に入らないのかな。公式からだってちゃんと色々なルールが載せられてるのに。
ヒイロさんの家に着くと、俺とヒイロさんは早速『レッドガルスパイスの実』を取り出した。
匂いを嗅げば嗅ぐほど唐辛子風だった。
これ、調薬もアレだけど、料理に使ってみたいなあ。
ということで、調薬器具を前に頭を捻っているヒイロさんちのキッチンを借りた俺は、料理をしてみることにした。
新鮮野菜をグツグツして、魔物肉をぶち込んで。肉をまろやかにするために三角ねぎを入れて、ベースは長トマト。グツグツして、最後に『レッドガルスパイスの実』を絞って少しだけ入れてみる。ツンと鼻につくスパイスの香りが漂う中、俺は味を調整すべくお玉でスープを掬った。
一口味見をしてみると、レッドガルスパイスは、まんま七味唐辛子を使ったような味になった。美味い。もう少し入れてもいいかもしれない。ピリリと辛いのがなかなか美味しい。
塩とハーブとその他の調味料で味を調えた俺は、小さな皿二つに一口分のスープを分けて、ヴィデロさんとヒイロさんに持って行った。
「お、こうしてスープに入れるとキツくねえな」
「いい香りだ」
二人とも一息にスープを呷った。
そして、目を輝かせた。
声をそろえて「美味い」とこっちを振り向いた。よし、料理には普通に使える。
「すぐ食べれます」
声を掛けると、二人ともすぐさまキッチンにやってきた。
たくさんある魚もこの実と油で漬けてマリネに出来るかもしれない。
そんなことを思いながらスープを分けて席に着く。
すると、玄関の方からガチャッとドアが開く音がした。
「なんか美味そうな匂いがしてるんだけど、何か作ったのか?」
と、ヴィデロさんの友達の獣人さんたちが数人顔をのぞかせた。
長老らしき獣人さんとミニさんが何やら相談している中、俺とヒイロさんは実の使い方を考えていた。ヴィデロさんは護衛をしてくれていたけど、獣人さんたちが来た辺りからは魔物が出ても他の人が倒すから、と俺たちの近くにいながら上の獣人さんと話をしている。
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「俺そこまで読めませんでした」
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使えそうで結構難しいよね。
「とりあえず色々やってみるか。マック、ヴィデロ、帰るよ」
ヒイロさんは実を数個腰のカバンにしまうと、ミニさんとサウ村の人たちに「じゃあな」と気楽に声をかけてナム村へ続く魔法陣への道を歩き始めた。
俺とヴィデロさんもヒイロさんに付いていく。
デートはとうとう修行にとって代わってしまったってことかな。あれえ。これ、パターンになりつつあるんじゃないかな。
ヴィデロさんと手を繋ぎつつ首を捻ってると、ヴィデロさんが「どうしたんだ?」と俺の顔を覗き込んできた。
「なんか、俺たちのデートっていつもデートじゃなくなるよねって思って」
「はは、そうだな。でも俺はマックと一緒にいられるならそれだけでいいんだけどな」
「俺も! だけど、たまには二人っきりで出かけたいっていうか。二人っきりでいるのはいつも家デートだし」
「家デートも大歓迎だけどな。外では見れないマックを見ることが出来る」
はい、愛し合ってる時のことね。確かにそうだし、愛し合うのもすっごく大事だと思う。でもこうやって手を繋いで二人でお出掛けも捨てがたいんだよ。
ってちょっとだけ狭量になってる俺の手に繋がれたヴィデロさんの手に、ギュッと力が入った。そして俺の顔を覗き込んだ状態からチュッとキスをすると、ヴィデロさんはスッと頭を上げた。
「はいはい、俺が邪魔なのはとってもよく分かったよ。でも少しだけ付き合ってくれマック。どう考えてもこの刺激物は俺一人では手に余るからな。その後ならいくらでも発情していいから。何なら奥の治療用ベッド貸すから」
くるっとヒイロさんが振り返って笑いながらそんなことを言う。邪魔、とかじゃないんだけど、多分俺半分くらい発情してたのかも。だってヴィデロさんを独り占めしたかったんだもん。
「ごめんなさい。師匠を邪魔だとは思ってないです。ただ、デートだって気合い入れてこっちに来ると大抵何かが起こるから」
「謝ることじゃねえよ。俺らにとっては番は唯一だ。二人でいたいってのもよくわかる。俺は番はいねえから体験したことはねえけど本能だから。俺らの種族じゃ、発情した奴らを邪魔するのはタブーに近いんだよ。邪魔しちまって発情期を逃したら次どうなるかほんとわからねえからな。それが繰り返されると俺らの間に子が生まれなくなる。そうなると、種族としては、先がなくなるんだ。今もまだこれだけいることの方が奇跡に近いんだよ。細々と生きてきたからな、俺らは。だから、マックが思うことは、謝るようなことじゃねえんだよ」
何せ本能だからな、とヒイロさんは足を止めて俺の頭をポンポンした。
そうか。俺がヴィデロさんを好きなのも独り占めしたいのも本能なのか。それじゃ抗えないよね、本能だし。
「そうそう。本能本能。だから発情するのも本能。ただし、他の奴の番に発情するのは本能とは言えねえからな。でもってその発情した相手に手を出すのはダメだ。そっちはタブー中のタブーだ。そこを侵したらここにはいられねえ。まあ、マック達はそこらへんは全く心配してねえけどな。人族にはそういうのを好む最悪なやつもいるっていうのは聞いてるけど、聞いてるだけでムカッとするし、どうして人族はそういうやつを平気でのさばらせておくのかそれだけはいまだに謎だ」
「番相手が唯一ですもんね」
「お互い納得ずくで番解消するんなら別にいいんだよ。相手が早くに死別した場合でも問題はねえ。でもなあ、人族はそういうんじゃねえだろ。価値観が人族と俺らとで全く違うってのはわかってるけど、そういうところだけは人族は好きになれねえなあ」
ヒイロさんの言葉に、俺は自然眉を寄せた。相手がいる人から奪う的なアレは、俺だって好きになれない。それは単純に人族と獣人の違いとは違う気がする。全然違う気がする。
人族と獣人との猥談の内容的齟齬はカルチャーショックだったけど。
「相手がいるやつを無理やりとか、そういうのは人族がどうとかいうのではなく、犯罪だ」
ヴィデロさんも、はっきりとヒイロさんに反論した。そういうのは牢獄に入るのが人族でも普通だと。
それを聞いたヒイロさんは、驚いた後に、すごくホッとした顔になった。
「そっか、犯罪かあ。よかった、犯罪だよなあ。最悪だよなあ。人族もそう思っててくれたことがわかってよかった。昔はそういうのが普通だって聞いてたからなあ」
「今は、少なくともヒイロたちと価値観が近くなったからこそ、俺たちはこうして行き来が出来るようになったんだろ。……もし、人族の街に来た折に何かあれば、俺もできる限りのことはする。だから、必ず教えて欲しい」
「今は全くそんなことはねえよ。異邦人たちも好意的なのが多いしよ。それに異邦人の見た目に俺らそっくりの身体を纏ってる奴らもいるだろ。そういうのがあるから、なんかオラン様が言うにはすごく獣人にとって生きやすくなったってさ。昔、まだ魔王なんて物騒なもんがなかったころの、大陸みたいになってきたってよ。でも、ありがとな、ヴィデロ。なんかあったらヴィデロを頼るよ。タタンもガレンもいるしな。マックも……うん。まあ、頼りにしてる、よ?」
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ということで、調薬器具を前に頭を捻っているヒイロさんちのキッチンを借りた俺は、料理をしてみることにした。
新鮮野菜をグツグツして、魔物肉をぶち込んで。肉をまろやかにするために三角ねぎを入れて、ベースは長トマト。グツグツして、最後に『レッドガルスパイスの実』を絞って少しだけ入れてみる。ツンと鼻につくスパイスの香りが漂う中、俺は味を調整すべくお玉でスープを掬った。
一口味見をしてみると、レッドガルスパイスは、まんま七味唐辛子を使ったような味になった。美味い。もう少し入れてもいいかもしれない。ピリリと辛いのがなかなか美味しい。
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「お、こうしてスープに入れるとキツくねえな」
「いい香りだ」
二人とも一息にスープを呷った。
そして、目を輝かせた。
声をそろえて「美味い」とこっちを振り向いた。よし、料理には普通に使える。
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そんなことを思いながらスープを分けて席に着く。
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手料理が繋ぐ心と体。身分差を越えた、最強α皇帝と隠れΩ料理人の美味しくて甘い辺境スローライフが幕を開ける!
※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。