これは報われない恋だ。

朝陽天満

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747、雑貨屋魔大陸支店店長兼冒険者ギルド魔大陸支店臨時職員クラッシュ

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 ヴィデロさんと愛し合って、もうあと少しで朝陽が上るよ、という時間にくっついて眠りについた俺たち。

 頭がドロドロになるくらい愛し合った後のせいか、起きたのはもうすぐ昼になるかという時間だった。

 寝過ごした! 朝ご飯! と飛び起きると、隣にはすでにヴィデロさんの姿はなく、「ゆっくりして」と簡単な書置きが残されていた。

 取り敢えずシャワーを浴びようとベッドから降りると、太腿と腕が筋肉痛っぽくなっていた。抱っこされた状態で愛し合ったりもしたから、しがみ付いてた腕が筋肉痛になったらしい。俺の筋肉が脆弱すぎて笑えない。よろよろと部屋から出ると、リビングのテーブルの上には、パンが置いてあった。ヴィデロさんが朝のうちにサンドイッチを作ってくれたらしい。嬉しい。好き。

 スッキリさっぱりして一人リビングでサンドイッチを食べていると、ピロンと携帯端末の通知音が鳴った。

 開いてみると、ヴィルさんだった。

 簡易結婚式の会場に、俺も小さいころよく雄太と遊びに行った神社を選んだらしい。結構街中にある神社で、お祭りのときは良く屋台の食べ物を買いに行った場所だ。

 そこって結婚式も挙げることが出来るんだ、と初めて知る。

 日付は二か月後に予約を入れたらしく、どうやら、その日がヴィデロさんの誕生日らしい。っていうかヴィデロさんの誕生日って気にしたことはあったけれど、一度も教えてもらったことなかった。盲点だった……。

 ヴィデロさんの誕生日を知らなかったことに静かにダメージを受けながら続きを読むと、神社の近くのレストランもその後貸し切ったとか、神前式だから和装の店を予約したとか、今度二人で行って衣装合わせしてくれとか、ほぼすべての段取りをヴィルさんが取り仕切っていた。

 待って、俺のお金じゃさすがにレストラン貸し切りは無理だよ。いくら必要なんだろ。神社での式自体は簡易式らしいけど。

 そんな懸念を浮かべた俺をまるで横で見ているかのように、最後に「パーティーの資金はラウロ家と郷野家の家族で二人へのはなむけに負担するから大人しく受け取りなさい」と書かれていた。



 サプライズだ。誕生日も式も。

 俺もヴィデロさんの誕生日に何かあげたい。けれど、このパーティー以上に喜ばれる物なんて用意できなそう。

 嬉しい。けれど、なんだか悔しい。

 そんな複雑な思いを抱えながら、俺はサンドイッチの載っていた皿を片付けた。





 そして、ヴィルさんが新しく着手した何かは、新たな事業として立ち上げることになったらしい。

 それも結構壮大な話になったということは軽く教えてもらった。国家関係を巻き込むんだとかなんだとか。

 いったい何をしてるんだよお兄ちゃん。

 ヴィルさんの会社は既に佐久間さんが代表代理として機能していて、常に数人が仕事をしている状態であり、ヴィルさんは時々帰って来てはまたしばらく留守にする、というサイクルを繰り返した。

 どうやら裏の研究所と類似した物を神社の所に建てるとかいう話らしいけれど、詳しくは全くわからない。基本俺が働く会社と裏の研究所は別会社のような物らしいから。大人の事業関係、全くわからない。そのうち詳しく教えてくれるらしいけれど、それはちゃんと新事業が起動し始めたらだそうだ。機密らしいから。でもそのせいで滅茶苦茶忙しくなってしまったらしく、ほぼADOにログインすることがなくなった。



 ヴィルさんがログインしなくなったことで、クラッシュは「つまらない」と口を尖らせた。

 今俺がいるのは、雑貨屋魔大陸支店。

 今やここはクラッシュが仕切る店となり果てている。ちなみに店の隅にギルド出張所もあり、クラッシュはそれも兼業し始めたらしい。エミリさんはクラッシュにギルド統括を継がせたいと言ってたけれど、クラッシュがきっぱりさっぱり断っていた。自分は気楽に雑貨屋をやっていたいと。でも支部は置いていいし、ここにいることが出来る自分が兼任してもいい、とのこと。



「そういえばヴィルから託された魔道具が大量にあるんだけど、マックに渡してもいい?」



 クラッシュが店を掃除しながらそんなことを言い出した。

 何だろう、と思いながら見ていると、出てきたのは、結界の魔道具だった。まさにこの村に置いてある魔道具と全く同じ物。

 もしかして、これで魔大陸の村を浄化しろと。俺一人では絶対無理なんだけど。あれはブレイブいてこそなんだけど。



「『高橋と愉快な仲間たち』も最近は魔大陸に入り浸ってるから、手伝ってもらえると思うよ。さっきも来てたし」



 クラッシュは笑顔でなんて事のない情報の様にそう言った。



「なんなら、ユイに他の村に跳んでもらったらいいよ。結構広範囲を探索してるみたいだから。この間初めて見る魔物素材を売りに来てたし。思わず買い取っちゃったよ。見る?」



 ニコニコ顔のクラッシュにとって、雄太たちは上得意様らしい。満面の笑みなのは、きっと優れた素材を納品してくれるからだと思う。それにきっと躊躇いなく商品を買っていってくれるんだろうなあ。最近雄太が金欠だって聞かないから、お互い儲けてるんだろうと思う。

 また鎧新しくするんだろうな、なんて考えていると、クラッシュが素材を出してきた。



「これ、ギルドでランク高い人にだけ特別に売ることが出来る素材なんだけどね。マックはランクBだっけ。母さんが早くAになってほしいって滅茶苦茶言ってたよ。指名依頼したいのにランクと依頼内容が噛み合わなくて受けれないんだって」

「マジか……っていうかエミリさん直々の指名依頼って何だろ怖い。ランクはね、最近ギルドの依頼受けてないからまだAになるのは先になると思うんだ。俺もその素材買いたいから頑張ってはいるんだけど」



 クラッシュの出してきた、魔大陸魔物の骨素材を見ながら溜息を零すと、クラッシュが目を輝かせて「それを待ってた!」と手を打った。



「もしマックがランクアップしたいって言ったらこれをって母さんから頼まれてた依頼があるんだ。これをクリアしたら、ランクアップさせたいっていうやつ。一人で難しそうなら、俺も付き合うからさ、依頼受けない? 正直マックに買い取ってもらいたい素材が山になってるんだよね。俺も懐を潤わせたいし」



 ね、とイケメンに笑顔を向けられて、俺は半眼になった。

 あれか。要するに、売れ残ってる在庫を、俺にさっさと売りたいと。そのためのランクが足りないから、手伝うと。



「私利私欲じゃん。ダメじゃん、臨時ギルド職員!」

「え、いいんだよお。俺、監視員の役目も果たすから。普通だったらランクが上の異邦人に見届けてもらってもいいんだけど、俺でもいいなら人件費かからないじゃん」

「根っからの商売人だね」

「褒めてもらえて嬉しい」



 呆れ半分でそう言うと、クラッシュは本当に嬉しそうに笑った。

 そして、一枚の依頼書をカウンターの裏から取り出して、俺に差し出した。

 途端にピロン、と通知が来る。

 依頼書を見つつ、クエスト欄を開く。



『【NEW】魔大陸産素材を使用可能な状態にしよう



 未だ魔大陸は穢れた高濃度魔素に覆われており、素材も穢れていて、本国では使うことが出来ない。

 魔大陸素材を誰でも使える状態に出来るよう尽力せよ



 魔大陸産素材の収集およそ20種類採取 及び入手アイテムの穢れ消去方法の提示と 穢れを消去した素材の納品

 穢れ消去用アイテム納品及びレシピ提供



 クリア報酬:ギルドランク上昇 レシピの特許取得及び他者レシピ使用時使用料利権取得 素材優先買取権取得 魔大陸産素材使用のアイテム売却時買取額20%上乗せ



 クエスト失敗:レシピ提出ならず 魔大陸産素材他者使用不可状態継続時失敗 ギルドランク上昇ならず レシピ特許取得ならず』

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