最推しの義兄を愛でるため、長生きします!

朝陽天満

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御子誕生編

お祝いは気に入ってもらえたみたい

 
「アルバ君いらっしゃい!」

 元気な声と共に、ミラ妃殿下が部屋にやってきた。
 一緒に来た兄様は、早々に俺の横に腰を下ろしている。
 そんなに動いて大丈夫なのかなとハラハラと迎え入れる。

「お元気そうで何よりです。この度はご出産おめでとうございます!」
「ふふ、ありがとう。オルシスにアルバ君がお祝いを持ってきてくれたって聞いて、つい来てしまったわ」

 動きもかなりしっかりとしており、声も張りがある。
 ブルーノ君やリコル先生、そして宮廷医の人達がきっと頑張ったんだろうなあ。

「まだ王子は見せることができないんだけどね。アルバ君なら見せてもいいと思うのに」

 もう少ししっかりしてからなんですって、と頬を膨らませるミラ妃殿下は、お腹に御子がいた時の不調など忘れたかのように元気だった。

「いいえ、お披露目の時を楽しみにしています。僕からのお祝いは、先ほど描き上げたばかりなのですが、ミラ妃殿下の姿絵です。どこか端っこにでも飾ってもらえたらと思います」

 先ほど使用人に用意してもらったイーゼルに立てかけていた絵を見せると、ミラ妃殿下もまた、絵に視線を向けて動きを止めた。

「……もう、魔術陣技師よりも私専属の絵師にならない? その腕でうちの子をたくさん描いて欲しいわ……」

 絵に視線を向けながら、かなり真剣な表情でミラ妃殿下が呟く。その横ではヴォルフラム陛下もうんうん頷いていた。

「もちろん王子殿下のお姿を僕の絵で残すのはやぶさかではないのですが。魔術陣技師もやりたかったことの一つなので。王宮にはもちろん兄様と共に通いますので空いた時間にでも」

 腕を買ってもらえるのは嬉しいけどね。
 俺はうちの家族と後は仲のいい人達くらいしか描けないよ。
 絵って感情を乗せないとただ綺麗なだけの平たんなものになっちゃいそうな気がするし。俺の絵をすごいと思ってもらえるのは、きっとそこに気持ちが乗っているからだと思うんだ。特に兄様の絵は全身全霊で描くから余計に。

「ヴォル、この絵は一番というところに飾りましょう。謁見の間に飾ってもいいくらい。あそこの装飾にも負けないわ」
「それはいいな。歴代の先祖たちに並べて飾るのはとてももったいないと思っていたんだ。けれど執務室はもう飾ってあるから」
「離宮に飾ってもらうために描いたのですよ……?」

 お二人がとても恐ろしいことを言い始めたので、やんわりと釘をさす。けれど、兄様は諦めたような菩薩のような顔で首を横に振った。

「アルバの絵は最高だからね」

 兄様のその言葉には、何やら含みがあるような気がした。

「一番嬉しいお祝いだわ」

 妃殿下はニコニコしながらお礼を伝えてくれて、妃殿下にも気に入ってもらえたことにほっとした。

「私がアルバ君のパトロンになりたいわ……」

 冗談のようなその呟きが本気の響きを伴っていたのは、気のせい気のせい。



 王子殿下はブルーノ君とリコル先生がつきっきりで見ることになったらしい。
 俺という実績があるから、宮廷医師たちも文句は言えないらしい。それに、ミラ妃殿下の産後ケアはまるっと宮廷医師たちが行うので、いい采配だと思う。それに御子を産んだ後は問題なく宮廷医師の回復魔法を受けることが出来るようになったらしく、いい感じであのごたごたは落ち着いたらしい。何より、宮廷医師たちは御子がラオネン病だったことにショックを受け、ブルーノ君たちが慌ただしく処置をする中、何もできなかったんだそうだ。それからはお互いを尊重するようになったって言ってた。
 そっと、ブルーノ君の地位が今や薬草界のトップに君臨するから、リスペクトしているんだと兄様が教えてくれた。揉めてなくてよかった。

「アルバ君が教えてくれなかったら心の準備も出来なかったから、本当によかったわ。何より、ブルーノがすっごく頼りになるの」

 それにね、とミラ妃殿下は身を屈めて声を潜めた。

「ヴォルの魔力を渡すと、うちの子本当に落ち着くのよ。お父様大好きなのよ。可愛いわよね」
「妃殿下と陛下がラブラブで何よりです」

 思わず笑いながらそう返すと、陛下は苦笑をしながらも、頬を緩めていた。

「陛下も妃殿下も魔力が多いから、咄嗟の発作も安心ですね。少しでも果汁を飲めば魔力が逃げることはなくなるので、たくさん魔力を注いであげてください。僕も、ずっと兄様にそうやって助けてもらっていましたから」

 ブルーノ君もリコル先生も魔力が潤沢だから、魔力補充人員には事欠かないね。

「ミリィ夫人にはもうお会いになったのですか?」
「ええ。ミリィはずっと部屋にいてもらったの。ミリィがいてくれなかったら途中でくじけていたわ」
「恥ずかしながら、私は廊下でうろうろするくらいしかできなかったな。オルシスが冷静に別室で書類を捌いてくれなかったらかなり仕事に穴が開いていたと思う」

 肩を竦めてヴォルフラム陛下がぶっちゃける。俺もお祝い絵を描いたらって言われなかったら同じような状態だったから笑えないね。そんな中でもちゃんと仕事をこなしていた兄様偉すぎる。俺は兄様リスペクトだよ。

「さて、長居してもよくないから、アルバは家に戻ろうか。転移の魔術陣はあるけれど、馬車もすぐ用意できるよ」
「そうですね。ミラ妃殿下のお身体を休ませないとですもんね。次はお元気な王子殿下を抱いている姿をぜひ描かせて欲しいですが、今日のところはこれで失礼します」

 兄様と共に腰を上げると、お二人も立ち上がった。

「アルバ君の顔が見れて元気出たわ。ブルーノもリコル先生も頑張ってくれているし、アルバ君も無理せず頑張ってね。次に王宮に通うのは新年の長期休暇かしら」
「そうですね。学園の長期休暇はぜひ通いたいと思います。少しでも力になれたら嬉しいので」

 それに兄様と王宮に通える毎日は俺にとって至福です。
 きりっと返すと、考えていたことがばれたのか、ミラ妃殿下が口元を隠して肩を震わせた。

「アルバ、本音が漏れていたよ」

 陛下に言われて、口から思考が漏れていたことが発覚。カッと頬を熱くしてから、慌てて頭を下げて兄様と共に部屋を出た。兄様ずっとくすくすと笑っていて、この二日間兄様成分の不足していた俺は、必死でオルシス様成分を吸収した。
 はー、満足。
 
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