最推しの義兄を愛でるため、長生きします!

朝陽天満

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御子誕生編

お迎え嬉しいけれどああああ

 
「……ルバ、アルバ?」

 耳元で声が聞こえてきて、俺はそっと目を開けた。
 どうやら少しの間寝ちゃってたらしい。
 目の前には、セドリック君とジュール君が並んで俺の顔を覗き込んでいた。

「ああ……お二人とも、お疲れ様です」

 身体を起こそうとしたら、セドリック君に阻止されてしまう。

「起きなくていい。お疲れなのはアルバだろ。めちゃくちゃ顔色悪いよ」
「ちょっと……魔法が、暴走してしまって」
「えっ、それは初耳……ってそうか。今はリコル先生じゃないんだもんな。言えるわけないか。こんな時に、内情を知る先生がいない弊害が……んで、ロッソ先生はアルバに付いてなくていいのか?」
「僕は魔力がちょっと足りないくらいなので、大丈夫だから」

 俺の言葉に、セドリック君はむっとしたような顔をした。

「でもブルーノ様にきいた話では、アルバはほぼ自力で魔力回復できないんだろ? 寝てたところで復活しないって事じゃん」
「……」

 ブルーノ君そこまで伝えてたのかあ。確かにね。いまだに自力で魔力の回復はなかなかできないし、他の人の回復時間よりかなり遅いんだけどね。

「今は兄上も王宮に行っているんですよね」

 ジュール君も表情が曇っている。
 ごめんね、めちゃくちゃ心配かけちゃってるね。

「皆はどんな感じですか? 僕だけじゃなくて、フレッド君も休ませたいんですけど」
「フレッドは着替えてリリーアン君に回復魔法をかけて貰ったら顔色よくなってたよ。かなり強い魔物が出てきたんだって?」

 寝てろ、と俺の額を掌で抑えながら、セドリック君がちらりと記入用机に視線を向ける。
 俺もつられてそっちに目を向けると、ぼろぼろで血まみれの服がそこに置かれていた。
 もしかして俺が寝てる間にここにきて着替えていったのかな。全然気づかなかった。

「本格的に寝ちゃってたんですね……こんなところで熟睡とか、自分でもびっくり」
「熟睡じゃない。ほぼ気絶に近かったんじゃないのか?」
「そうなのかな……」

 そっと手を持ち上げると、そこにフレッド君の血はついていなかった。俺は拭いた記憶がないんだけど、誰かが拭いてくれたってことか……本気で、気づかなかった。

「アルバ様、今日はもう、家に戻って休みましょう。ここに迎えを呼ぶので」
「迎え……?」

 ジュール君の言葉に首をかしげる。今は皆忙しいから、迎えなんて難しいと思うけれど。
 義父も兄様も王宮だし、スウェンは義父の補佐で家のことをやってくれているし、他の人は学園に入る許可を取ることからになるし……
 俺がちゃんと歩いて帰るのが一番無難だと思うんだけど。少し寝たらさっきよりはましになった気がするしね。
 そう伝えようとして口を開いたのと同時に、ジュール君の手からシュルンと水のお魚が消えていった。

「主任の先生とロッソ先生には、アルバ様がよくならない場合先に帰ることをお伝えしていますし、許可も得ていますから、心配なさらず、少しだけここで横になって待っていてください」

 にこっと笑うその顔は、俺を安心させるブルーノ君の笑顔とそっくりで、やっぱりまだ本調子じゃなかった俺は、まるでブルーノ君に言われたような気分になって、安心して頷いたのだった。


 んだけど……

「アルバ、また無茶したんだって?」

 と言いながらお迎えに来てくれたのは、あの麗しの、そして誰よりも忙しいはずの、兄様で……

「兄様……? なんで?」
「こういう時に迎えに来るのは、婚約者である僕の特権でしょ」

 側近の制服を身に着けた兄様は、簡易ベッドに転がっていた俺を、いとも容易く姫抱っこで持ち上げた。
 さっきまで一緒にいたセドリック君とジュール君は、兄様が入ってくるのと交代でテントを出ていき、今ここにいるのは俺と兄様だけ……

「魔力が空っぽだね。こういう時にちゃんと竜のうろこの魔力を使ってって言ってあるでしょう?」

 兄様の視線が俺の胸元に落ちる。
 兄様の魔力がたっぷり込められたきれいな紫色の竜の鱗は、確かに手に握り込めばその内装魔力を取り込むことができる。
 けれど。
 そういわれ続けているけれど。

「だって、魔力を使ったら兄様の色が消えちゃうから……」

 魔力が尽きたら白に戻っちゃうんだよ……! そんなのもったいなくて無理。
 そんな意味を込めて首を横に振ったら、兄様が悲しそうな顔をした。

「僕が渡したものを大事にしてもらえるのは嬉しいけれどね、アルバ。僕はアルバの方がよほど大事だし、また魔力を込めたら色は戻るんだよ。いくらでも補充するから、ためらわないで使って。使い方はわかるよね。ほら、取り出して」

 両手のふさがっている兄様は、俺の首元に顔を近づけると、ちらりと見えている鎖を歯で咥えて、優しく引っ張った。
 鎖は切れることなくするりと制服の首元から姿を現し、兄様の顔はとてつもなく近く。兄様の頬の感触が俺の首元に。首元に……!
 あぁぁああ……と悶えている間に、俺の口元にひやりとしたものが押し当てられた。
 こここれは竜の鱗……! が間に挟まったキッスでは……⁉
 俺の唇に鱗を押し当てるように、兄様の唇が押し付けられている。
 もうもうなにこれエッチすぎる……! 
 固まって身動き取れない俺の唇から、じわじわと兄様の魔力が染み渡っていく。
 これは鱗からなの? それとも兄様の口からの魔力? もうわけわからないよ……っ!
 パニックになっている間に、俺は兄様にメノウの森から連れ去られていたらしい。見慣れた自分の部屋のベッドに下ろされるまで、俺は結構な魔力を補充してもらっていたことにも自分の部屋に戻ってきたことにも気付かなかった。

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