最推しの義兄を愛でるため、長生きします!

朝陽天満

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御子誕生編

夜の逢瀬

 俺は本当に指折り数えて兄様との約束の夜を迎えた。
 今日一日がとても長かった……。早く来てほしい時ほど時間の経過は長く感じるんだね……。そして兄様との時間はあっという間に過ぎてしまうんだよね。明日も出仕しないといけないから遅くまで時間を取るのもいけないし。
 やっぱり早く卒業して一緒に王宮に出仕するのが一番のような気がしてきた。朝も夜も一緒の馬車に乗って、昼だって会おうと思えばいつでも会える距離にいるなんて、想像するだけでバラ色の未来だよね。
 そんなことを思いながら学園の復習をしていたら、部屋にノックの音が響いた。

「はーい! どうぞ」

 慌てて椅子から立ち上がって扉に向かうと、ドアが開いて兄様が入ってくるなり俺の身体を抱きしめてきた。

「アルバ、ごめんね夜の遅い時間に。どうしても顔が見たくて。そしてアルバと直接こうして触れ合いたくて」
「僕もです。兄様いつも遅い時間までお疲れ様です。疲れてませんか? ご飯食べました?」

 さっき馬車が着いた音がしたから、まっすぐ来たんだよね。お腹すいてないかな、と兄様を見あげると、兄様が俺のおでこにチュッとキスをした。

「今日は伝言魔法ありがとう。アルバの伝言魔法がとても素敵すぎて、ミラ妃殿下が大絶賛していたよ」
「そうなんですね。あれ以外の形だとどうもうまくまとまらなくて。兄様の蝶がとても綺麗なのでまねしようとしたら、光の粒にしかならなかったんですよ……攻撃魔法もそうだし、やっぱり僕の魔法はだめだめですね……」
「だめなんかじゃないよ。だってちゃんと僕にメッセージが届いたから。本当に嬉しくて、少しの間一人でその嬉しさを噛み締めていたよ」

 ちゅ、ちゅ、と何度もおでこにキスをする兄様に、胸がキュンキュンする。
 いつもの笑顔ともちょっと違う、少しだけ艶を含んだその顔は、直視すると心臓が止まりそうなほどにエッチで美麗だった。年齢制限ありの兄様の破壊力よ……! まっすぐそのお顔を見れない……!

「アルバが夜を楽しみにしてくれて、とても嬉しい……」

 吐息交じりのエロセクシー全開の囁きに、俺は心臓が止まりそうになった。
 やっぱりあのメッセージ全部届いてた……!
 一瞬にして顔がゆでだこになる。
 うああああ……夜のお誘いとか、なんか俺とんでもなく破廉恥なことを叫んでいたような気がする! 頭が真っ白になって自分でも何を伝えたのか把握できなかったけれど、冷静になった今ではあんな変態チックなことを叫んだ俺最悪だと頭を抱えていたのに。
 その後返事がなかったから失敗に終わったと安心していたのに……!
 あまりのいたたまれなさに両手で顔を覆うと、その上からまた兄様がチュッとキスをしてきた。
 そして、いきなり身体が浮いて、俺は「うわっ」と声を上げて慌てて掴まれる場所に手を伸ばした。
 掴まった場所は兄様の首で。
 俺は不意打ちで抱き上げられていた。

「アルバ真っ赤で可愛い」
「~~~~っ」

 にこっと笑う兄様の方が格段に可愛いですから……! 
 腕が兄様の首に回っちゃったから顔を手で覆うこともできずに、俺は熱い頬を何とかしようとぎゅううっと目を閉じた。兄様のご尊顔をこんな間近で見ていたら通常でも頬が熱くなるからね!
 落ち着け、俺……と心の中で唱えていると、今度は唇にふにっという感触があった。
 それはすぐに離れていったけれど、ずっと兄様とああーんな魔力補充をしている俺はわかる。
 今のはキスだ……!
 落ち着かない————!
 こんな風にキスされたら無理————!
 羞恥やら興奮やら歓喜やらが混ぜ合わさって、叫びたい衝動に駆られる。
 あれだけたくさん兄様から口移しで魔力補充してもらってるのに、全然冷静に受け止められない。好きすぎる。顔がよすぎる。声がよすぎる。俺を抱えても全然苦じゃなさそうな意外な力強さもよすぎる。総じて、兄様は最高オブ最高。
 そんな最高な兄様に慣れてしまうなんて、一生無理なのでは……?

「心臓止まりそう……」
「もうそろそろキスに慣れていいころだと思うのだけどね」

 はい兄様から「キス」のお言葉いただきました……! 魔力補充じゃない、キス! 

「慣れたいですけど……難しいデス」
「いつまでもドキドキしてくれるアルバも可愛いけれど。結婚したらちゃんと一緒のベッドで寝るんだからね。僕はアルバに腕枕をしてあげたいんだよ。そして、アルバをたくさん愛したいし、可愛がりたいんだよ。結婚したら伴侶として当たり前のことをしたいのに、軽いキスで音を上げられると困るから、アルバがちゃんと慣れるように、自分から僕にキスをしてくれるくらいにたくさんするね」

 今までもたくさんしてるんだけどね……と少しだけ拗ねたような口調に、さらに心臓が激しくなる。
 俺を、愛して可愛がる……? それはまるで、兄様が上側のような発言だね……はて、オル攻本なんて、あったっけ……?
 女神のような兄様はどちらかというと愛される方のようなイメージがあったのだが……待って、俺と結婚するってことは、パートナー俺。はい俺。絵面が想像つかない。

「ちょっと熱出そうだからとりあえず続きはまた今度ね。ゆっくり座ろう」

 兄様は苦笑しながらそう言うと、俺を抱き上げたまま移動し、ソファーに腰を下ろした。
 俺は、そのまま膝の上。

「改めてアルバ、伝言の魔法の成功おめでとう。初めてのメッセージをありがとう。魔法で描かれた魔術陣を見た時はアルバらしいなって思ったよ」
「無事届いてよかったです……最初は全然形にならなくて、攻撃魔法練習したときのように光の粒がふよふよと浮かぶだけだったんです。でもジュール君の助言がとても分かりやすくて」
「そうなんだね。さすがジュールだね。妃殿下がいるときにアルバの伝言魔法が届いたんだけどね、妃殿下がとても感激していて、必死で魔術陣型の伝言魔法を練習していたよ」
 にこりと微笑んだ兄様は、一瞬だけひやりとする冷気を発した。何かあったのかな。
「もちろん妃殿下は魔術陣を嗜んでいないから成功なんてするわけないんだけれどもね。これが出来たらアルバと妃殿下のおそろい魔法だとかなんだとか寝言をほざいていたのに成功しなかったよ。もちろん手を叩いて賞賛しておいたよ」

 兄様の言葉に、思わずフフッと笑ってしまう。
 想像つきすぎる。

「妃殿下は光の小さな鳥を模して伝言魔法を使うから、陛下も鳥で並んだらお似合いだとお伝えしたら、陛下に怒られてしまったけれどね」

 とても和やかな執務室の話に、声を上げて笑ってしまう。とても和やかで羨ましい。兄様が楽しそうならそれが一番だよね。

「こんなことで嫉妬をしてしまう心の狭い僕でも許してくれる?」
「許すも何も。兄様はどんな兄様でも最高に最高なので……嫉妬」

 今気付いたけど、兄様が嫉妬。
 とても攻撃力が高いです。許すどころか……萌えます。悶えそうです。兄様が俺に嫉妬してくれるなんて、いいのかな。

「兄様大好き……」

 さっきからハートにクリティカルヒット連発なんだけど、俺今日心臓止まらないかな。

 ハカハカ浅い呼吸をしていると、兄様が背中をゆっくりと撫でてくれた。

「……ありがとうございます、ちょっと落ち着きました」
「どんなアルバも可愛いけれど、本当にラオネン病が完治していてよかった……」
「兄様の可愛い表情や可愛い動きを見れたらもう毎回思い残すことがないと思ってましたけどね。人生悔いなしです」
「僕と結婚しなくても悔いを残さないの? 僕はきっと悔いだらけだよ。アルバとずっと一緒に笑いながら暮らすのが夢だから」
「兄様……」

 兄様はやっぱり綺麗に微笑むと、もう一度俺のおでこにチュッとキスをした。



「一度、アルバに聞いてみたいと思っていたんだ」
「僕に、ですか?」
「うん。アルバは、僕の違う未来の姿を知っているわけでしょう? その僕と、今の僕、どう違うのかって。もしくは、どこが同じなのかなって」

 兄様は俺を膝に抱えたまま、ほんの少しだけ思案顔になった。
 さっきまでの甘々な雰囲気はなくなり、背筋が伸びる。

「アルバは、こんな風にならなかった僕を好きだったわけでしょう? だったら、今の僕はどうなのかなって、ちょっと気になって」

 ぎゅっと俺を抱きしめる腕に力が籠められる。
 くっついている兄様の身体から、心臓のドキドキが聞こえる。さっきよりもほんの少しだけ早い心臓の動きに、俺は兄様の顔を改めてみつめた。
 宝石のような紫の瞳が、いつになく不安そうに揺らめいている気がした。
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