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解放されたお嬢様
「やったわ」
「やりましたね、お嬢様!」
帰りの馬車で、シャンフレックは勝ち誇った。
隣に座る侍女のサリナも喜色満面の笑みを浮かべる。
実は斥候から、ユリスが婚約破棄する予定だと聞いていたのだ。
最初は耳を疑ったが、婚約破棄が実現して天にも昇る心地だった。
ユリスは強力な後ろ盾がなく、フェアシュヴィンデ公爵家と婚約を結ばされたのだ。まさかその後ろ盾を自分から手放すとは。本当にアホにも程がある。
これでユリスの王位継承は絶望的になっただろう。
はたして真実の愛とやらを見つけた相手、アマリス男爵令嬢にユリスの妻が務まるのか。そして準備金を用意できるのか。
赤の他人になったシャンフレックの知ったことではない。
「これでやっと仕事に専念できる……」
シャンフレックは淑女として完璧なだけではない。
経営者としても完璧な人間だった。
王都各地に服飾店や書店を展開し、すさまじい利益を上げているのだ。
経理のスキルは領地経営にも役立ち、父の執政を支えている。
今まではユリスの婚約者として彼に尽くしてきたが、その束縛はもはやなくなる。これからはより一層、仕事に精を出せるというもの。
「本当にユリス殿下は厄介でしたね。しきりに屋敷にやってきてはお嬢様を連れまわし、物をねだり、公爵家の名誉もついでに落としていく……」
「もうあの男の話はやめてくれる? さっさと忘れたいの」
「そうですね、すみません。お嬢様の人生にユリス殿下は不要です」
しかし、今後の対応も面倒だ。
再び縁談は舞い込んでくるだろうし、両親への説明もめんどくさいし、課題は山積みだ。だがシャンフレックからすれば、そういった問題は些事。
すぐに片づけて仕事に移るだけだ。
***
フェアシュヴィンデ公爵領の屋敷に帰ると、執事が慌てて駆け寄ってきた。
彼の名はアガン。
両親の代から使える老人執事である。
「お嬢様、お戻りになりましたか! 婚約破棄されたというのは本当なのですか!?」
「ええ、本当よ」
「おお、なんという……ユリス王子は本当にどうしようもない。旦那様への報告はいかがいたしましょう」
「そういえば父上は出張中だったわね。父上には私から報告するわ」
父のファデレン公は、しばらく実家には戻ってこない。
隣国に行っており、当分帰ってこない予定なのだ。
婚約破棄された旨を聞いたら、父はどんな反応をするだろうか。
呆れるか、怒るか、同情するか。
どんな態度をされても、ユリスと復縁する気はないが。
「まったく、何の落ち度もないお嬢様との婚約を破棄するなど……あまりにフェアシュヴィンデ家を馬鹿にしていますな。そもそもユリス王子は……」
ぐちぐちと文句を垂れるアガンは放っておいて、シャンフレックは急ぎ足で書斎に向かう。
父とシャンフレックがいない間、雑用係に経理を任せていた。
早いところ現状を確認し、事業を整理しなければならない。
「殿下に構う時間が減ったぶん、仕事ができるわね。新しい事業も考えてみようかしら……? ふ、ふふふっ……」
公爵家として充分すぎる金を持っているのに、シャンフレックはまだまだ稼ぐ気だった。
純粋に金はいくらあっても困らない。
また、管理する領地のフェアシュヴィンデ公爵領の軍備を行う必要もあった。最近は諸国の情勢が緊迫しているからだ。
「王家とのつながりなんてなくても、私はやるわ。第一王子はまだしも、ユリス殿下が王位を継ぐなんてことになったら……王家は没落するのでしょうね」
せいぜい「真実の愛」とやらに酔っていることだ。
これより先、ユリスのことは一切考えないと決めた。
「やりましたね、お嬢様!」
帰りの馬車で、シャンフレックは勝ち誇った。
隣に座る侍女のサリナも喜色満面の笑みを浮かべる。
実は斥候から、ユリスが婚約破棄する予定だと聞いていたのだ。
最初は耳を疑ったが、婚約破棄が実現して天にも昇る心地だった。
ユリスは強力な後ろ盾がなく、フェアシュヴィンデ公爵家と婚約を結ばされたのだ。まさかその後ろ盾を自分から手放すとは。本当にアホにも程がある。
これでユリスの王位継承は絶望的になっただろう。
はたして真実の愛とやらを見つけた相手、アマリス男爵令嬢にユリスの妻が務まるのか。そして準備金を用意できるのか。
赤の他人になったシャンフレックの知ったことではない。
「これでやっと仕事に専念できる……」
シャンフレックは淑女として完璧なだけではない。
経営者としても完璧な人間だった。
王都各地に服飾店や書店を展開し、すさまじい利益を上げているのだ。
経理のスキルは領地経営にも役立ち、父の執政を支えている。
今まではユリスの婚約者として彼に尽くしてきたが、その束縛はもはやなくなる。これからはより一層、仕事に精を出せるというもの。
「本当にユリス殿下は厄介でしたね。しきりに屋敷にやってきてはお嬢様を連れまわし、物をねだり、公爵家の名誉もついでに落としていく……」
「もうあの男の話はやめてくれる? さっさと忘れたいの」
「そうですね、すみません。お嬢様の人生にユリス殿下は不要です」
しかし、今後の対応も面倒だ。
再び縁談は舞い込んでくるだろうし、両親への説明もめんどくさいし、課題は山積みだ。だがシャンフレックからすれば、そういった問題は些事。
すぐに片づけて仕事に移るだけだ。
***
フェアシュヴィンデ公爵領の屋敷に帰ると、執事が慌てて駆け寄ってきた。
彼の名はアガン。
両親の代から使える老人執事である。
「お嬢様、お戻りになりましたか! 婚約破棄されたというのは本当なのですか!?」
「ええ、本当よ」
「おお、なんという……ユリス王子は本当にどうしようもない。旦那様への報告はいかがいたしましょう」
「そういえば父上は出張中だったわね。父上には私から報告するわ」
父のファデレン公は、しばらく実家には戻ってこない。
隣国に行っており、当分帰ってこない予定なのだ。
婚約破棄された旨を聞いたら、父はどんな反応をするだろうか。
呆れるか、怒るか、同情するか。
どんな態度をされても、ユリスと復縁する気はないが。
「まったく、何の落ち度もないお嬢様との婚約を破棄するなど……あまりにフェアシュヴィンデ家を馬鹿にしていますな。そもそもユリス王子は……」
ぐちぐちと文句を垂れるアガンは放っておいて、シャンフレックは急ぎ足で書斎に向かう。
父とシャンフレックがいない間、雑用係に経理を任せていた。
早いところ現状を確認し、事業を整理しなければならない。
「殿下に構う時間が減ったぶん、仕事ができるわね。新しい事業も考えてみようかしら……? ふ、ふふふっ……」
公爵家として充分すぎる金を持っているのに、シャンフレックはまだまだ稼ぐ気だった。
純粋に金はいくらあっても困らない。
また、管理する領地のフェアシュヴィンデ公爵領の軍備を行う必要もあった。最近は諸国の情勢が緊迫しているからだ。
「王家とのつながりなんてなくても、私はやるわ。第一王子はまだしも、ユリス殿下が王位を継ぐなんてことになったら……王家は没落するのでしょうね」
せいぜい「真実の愛」とやらに酔っていることだ。
これより先、ユリスのことは一切考えないと決めた。
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