114 / 228
三章
3-8 明日の作戦会議でも、どうかな?
「本人が言った通り、お隣にある雑貨屋さんのお嬢さんだよ。お兄さんと二人暮らしをしているんだ。ドルンリートっていうお店なんだけど」
所長がそう言うやいなや、ディオンさんが大きく咽た。
「ま、まさか、スターチス・ブルーメの……!」
「そうそう。それが、今の子のお兄さんだね」
あれ? スーさんの事を知ってるのか?
「嘘だろ……」
「スーさん、嫌な人なのか?」
「いや、スーさんはいい人だよ」
ディオンさんの反応がよくわからなくて、オレは所長に尋ねた。が、所長はにっこりと笑って返す。
「ただ、本当は凄い人っていうだけで」
「え!?」
凄いって何? 本性はコスモス!?
「うちの隣なんかで雑貨屋をやってるけど、あの人、本当は人気デザイナーだからねぇ」
「人気デザイナー!?」
え? 待って、じゃあ、オレが今着ているこの制服って高級品か!?
「あー、わかる。スーさんのお洋服、中々いいお値段なんだよねぇ」
「ちょ、おい、お前は知ってたのか!」
「え? うん。うちにも何着かあったし」
「だー! お嬢め!」
高級な服が何着もある家って何だよ!
スティアが、スーさんの話を聞いてから制服をもそもそ触っている。わかる、それの値段、気になるよな。
「というか、ブルーメ一族っていうと、第一にいると結構耳にするよー。なんでも、王族のお洋服を作ってるらしい、って」
「マジか」
一族って事は、スーさんのお父さんとかお母さんも凄いのか。え? じゃあ、コスモスも?
うっそ、そんな気は全くしなかったんだけど。
オレ、今まであそこはフリルとレースが蔓延る魔窟だとばかり……。特にコスモスに飾り立てられるし。
「ただいま帰ったわ!」
「お帰り。ここは君の家じゃないけどね」
早ぇよ! そして当たり前のように突然入ってくるのか!
「お兄ちゃんから許可を貰えたの!」
あー、スーさんなら駄目って言わなそうだもんな。あの穏やかな人が人気デザイナーか。
「あの、本当にいいの? 君の家って」
「あぁ、いいのいいの。部屋ならあるわ! そして、とびきり可愛くしてあげる!」
「可愛く……?」
この大男が、可愛い部屋に寝泊りするの? 可愛い部屋ってどんな部屋? ピンク、フリル、レース、リボン、みたいな感じ?
「ま、そんなわけだから、夜には家に来てね。隣だから」
「あ、ありがとう」
どうやら話はまとまったらしい。基本的にコスモスが一人でさっさと決めてしまったような気はするが。
「ご飯はどうする? ベルが出す?」
「どっちでもいいけど」
ベルはそう返しながら、ディオンさんへと視線を向けた。
「あ、俺達は俺達でどうにかするのでお構いなく」
「……だって」
「わかったわ!」
慌ててぶんぶんと首を振った彼の言葉を受け、コスモスは大きく頷いた。
「もしも必要になったら言ってね。うちでも用意出来るから!」
ご飯までばっちりサポートが出来るのか。意外と至れり尽くせりの宿だ。本当は宿じゃないけど。
「じゃ!」
「本当にそれだけ言いに来たんだね!?」
「そうよ」
コスモス、すげぇ。
彼女は大きく頷いてから、手を振って去っていった。激しい。
「……えっと、明日の作戦会議でも、どうかな?」
嵐が去っていった後の何でも屋で、ディオンさんがポツリと呟く。
「そうしよう」
そう同意したのは誰だったか。いや、大会に出る全員だったかもしれない。
「まさか別のチームがいる前で作戦会議をするってわけにもいかないし、ちょっと一緒に外に行きませんか?」
「あ、はい!」
「僕は兄さんに従うよ。ここでも、外でも、火の中でも、どこでも!」
「ラナ、火の中は危ないからやめよう」
丸焦げになるぞ。
エーアトベーベンはこちらのツークフォーゲルを見ながら「焼き鳥か」と呟く。その連想ゲームやめろ! ツークフォーゲルも自ら「じゅー」って言うの止めろ。焼けちゃってるだろ、それ。
「夕方には食事の支度をするから。夕食までには帰って来いよ」
「わかった」
今日のご飯、何だろ。鶏肉を焼くのかな。じゅー。
「ベユ、あいつらが外に行くなら、おれ達はここで作戦会議しよーよ」
「うん」
その方がいいだろう。ベル、今は所長の近くに居たいだろうし。
「スティア、いいか?」
「構わん」
ベルがスティアに確認すると、すぐに頷く。これで、それぞれの行動は決まった。
「じゃ、また後で」
そうしてオレ達は別れて作戦会議をする事にした。
***
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~
ネコ軍団
ファンタジー
魅惑の新大陸へようこうそ! 冒険者支援課にお任せください!
二十年前に発見された新大陸ノウリッジでは、未踏の地である大陸の東端を目指して開発が進んでいた。
港町テオドールはノウレッジの南西に位置する新大陸の玄関口だ。魔王の出現により遅れていた、新大陸の開発が本格的に始まってから五年、この町には一攫千金を夢見る冒険者たちが日々たくさん訪れていた。同時に未知の魔物や厳しい自然、罠が張り巡らされた遺跡やダンジョンなどで幾多の冒険者が傷つき命を落としていた。港町は夢と希望を抱く者たちが希望に満ちて旅立つ場所であり、夢破れ新大陸から去っていく者たちを静かに見送る場所でもあった。
冒険者ギルドは冒険者たちの新大陸離れを危惧し、新たに冒険者支援課を設立した。彼らの仕事は道案内から始まり、冒険者が発見した遺物などの研究や運搬の手伝い。他にも支給品の配布や死体回収などの地味な作業から、魔物が巣食う遺跡やダンジョンの休憩所であるセーフルームの確保、さらには大型モンスターの討伐を手助けしたりと様々だ。それに時には有害と判断された冒険者を秘密裏に処理したりするこも……
支援課に所属するグレンはかつて冒険者だった。しかし、五年前に仲間に裏切られ死にかけ、支援員の先輩であるクレアに救われた。クレアはグレンの特異な才能に気づき、彼を引き取り冒険者支援員として育てたのだった。
今日もたくさんの冒険者が新大陸へやって来る。その中にエリィとキティルという二人の少女冒険者がいた。彼女らも他の冒険者と同じく新大陸で一旗揚げることを夢を見ていた。
ある事件をきっかけに二人と親しくなったグレンは、新大陸に存在すると言われる伝説の”白金郷”をめぐる争いへ巻き込まれていくのであった。
※更新は不定期です。小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
※3/15~3/19 は投稿を休みます。
【最終話執筆済完結保証】悪役令嬢の『影』に転生した俺、ポンコツな主の破滅を物理で無言回避させる
積野 読
ファンタジー
喋れない。触れない。警告できない。——それでも俺は、このポンコツ令嬢を死なせない。
ブラック企業で過労死した中間管理職・黒田忠司(34)が目覚めたのは、乙女ゲーム『月光のエトワール』の悪役令嬢ロゼリアの「影」の中だった。
声は出せない。主から10メートルも離れられない。光の強い場所では力が半減する。できるのは、物をほんの少しだけ動かすことだけ。
それでも——破滅フラグは待ってくれない。
ドレスの裾を引っ張り、シャンデリアを落とし、毒杯を弾く。影の全力の裏方工作で主の破滅をへし折るたび、なぜかロゼリアは「底知れぬ黒幕令嬢」として周囲に畏怖されていく。
情報の女帝。軍神。守護者。革命家。——全部、影のせい。
本人は何もしていない。
だが令嬢は知らない。自分の足元で、存在が薄くなりながら守り続けている者がいることを。
「いるなら、おやすみなさい」——その一言が、影のすべてを変えた。
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
[完]異世界銭湯
三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。
しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。
暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。