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三章
3-10 さっきの話の続きだよ
「で、クルト」
「何だ?」
「さっきの話の続きだよ」
どこに着地した、この話。えーっと……あ、大将はディオンっていうあたりか!
「大将を誰にするのかは置いておくとして、どうして君はそんなに自信がないのかな?」
「あ……」
確かにさっきのオレの返しは、どこからどう聞いても自信がないのがありありと伝わってしまうものだった。オレが口ごもっていると、ディオンは俺のすぐそばまで移動してきて、真正面から見てくる。
でかい奴が、オレと視線を合わせる為にその場に膝を立てている様は、なんだか悪い事をしている気分になってくるものだ。これが仮にシアがやっている事なら「子供扱いすんな」とでも言うのだろうが、どういうわけかこの人にはそんな風に言う気も起きない。
「どうして、っていうか、オレじゃ足手まといになるだけかな、って……」
結局回答にもならない言葉をモゴモゴと口にする。どうしよう、この前の事、言ってもいいのかな。
「うーん、それに対して俺は、絶対にそんな事はないって言ってあげられない」
そう、だよな。会ったばかりだし、自分を卑下するばかりのヤツの言葉なんて、あまりいい気分のするものじゃないだろうし。
「だって俺は君の実力を知らないから、否定も出来ないんだ」
……あれ。オレの予想と違う答えだ。オレは意外な回答に、パチパチと瞬きをした。
そっか。知らないからこそ、肯定も否定も出来ないって事か。
「だけど、急ごしらえのメンバーでもオレ達は、今は仲間だ。出来れば信頼し合いたいし、背中を預けたい」
ディオンの言っている事は理解出来る。そして、こいつが良いヤツだという事も。
こういう、人を放っておけない性格だからこそ、ラナは「兄さん兄さん」とウザ……間違った。熱心に尊敬と愛情を向けているのだろう。
「だから、作戦会議は一回休憩して、お互いの事を話したい。完全に、深くわかり合うのは難しいかもしれないけど、せめてお互いを知るきっかけが欲しいって思うんだ」
これからお互い同じチームとしてやっていくのだから、願ってもない事だ。たとえオレのネガティブからスタートしていても。
「って急に言われても困るかな」
「いや、ありがとう。オレもそう出来たら、嬉しい」
オレの事を考えてくれていたからこその提案だ。嫌なわけも、困るわけもない。
「よかった。それじゃあ作戦会議は一回休憩。こっちは後でさらっとやろう」
「さらっとでいいのか?」
「大丈夫大丈夫」
オレがちょっと心配になって尋ねれば、心配なんて全部吹き飛ばすような明るい笑みが迎えてくれた。
「そうだよ。兄さんが大丈夫だって言っているなら、全く問題ないよ!」
続けたのはラナだ。ん、んん……なんだろ、この感じ。
「僕だってクルトの事、知りたいんだから」
どうしてこいつが同じような事を言うと、全く響いてこないのか。いいんだけどさ。
「とりあえず、俺達がどうしてこの大会で精術師を探していたか、っていうところを詳しく話そう。こんな話をして、クルトから言わせるのは何だか嫌だしね」
「え、それはさっき事務所で……」
「他にもあるんだ」
どうやら先程話したものが全てというわけではないらしい。それもそうか。あれはあくまで、依頼をする為の「説明」だ。
「どこから話そうかな……。えーっと、まずは結論からにしよう」
ディオンさんは少しだけ考えてから、ポンと手を打つ。
「最近は精術師同士の交流もあまりない、という事自体に危機感を抱いていた」
「え? あ、あー、確かになー。依頼受けたりしてる時の関係で、くらいでしか会わないもんな!」
「……あ、そうだね。ツークフォーゲルはそうだ」
ツークフォーゲルは? 他は違うのか?
「えっと、それ、どういう事?」
「もしかして君は……君達兄妹は聞いていないのかな」
オレの全くわかりません、みたいな態度に驚いたように、彼は目を瞬かせた。オレもさっき、そんな風にパチパチしたわ。
「年に一回、精術師の元締めのような立ち位置のヴニヴェルズムの家に集まる話」
「へ? ヴニヴェルズム?」
オレはその辺にいたツークフォーゲルに「どういう事だ?」と尋ねた。オレ達が話している間中、エーアトベーベンと戯れていたツークフォーゲルは「だってレヴィン、いきたがらないから」と言う。
レヴィンって、親父の事で、つまり親父が行きたがらないって事で……。
「え、何で?」
「うーん、ちゃんとした理由は分からないけど……」
そりゃそうか。うちの親父が何で集まりに出ないのか、って話だもんな。もしかして……旅費、ケチってた?
スティア並みに、いや、スティア以上にがめつい親父の事だ。旅費をケチってるから、って言われても納得はする。そもそも家族旅行自体が稀だったんだから、そりゃあ集まりもすっぽかすか。
「少なくとも、その集まりにはエーアトベーベンも出ていなかった」
「え? ディオンの家も、親父が行きたがらなかったのか?」
「そう、なるかな」
ディオンの家の親父もがめついのかな。
「家の場合はね……もう、両親も祖父母も、精霊に興味がないんだ。そもそも見えているのかすら怪しい」
「えっと、どういう事、だ?」
がめついどころの話じゃない。
「えっと……」
「僕のせいなんだ!」
「ん、んん⁉」
急にラナが入ってきてびっくりした! なんだ急に! あ、毎回急だったわ!
「僕が12枚で産まれたものだから、家族の関心が世間一般でいうところの大魔法使い様信仰に目覚めてしまったんだ」
「ま、まぁ、それだけではないんだけどね」
暴走気味のラナに、ディオンが補足のようなものを入れる。正確にはメインはディオンの話だったんだけどな。ラナが割って入っただけで。
「エーアトベーベンの家は、徐々に精術師離れをしていた。なんというか、他の人からの蔑みの視線に耐えられなかったんだろうね。だからこそ、ラナが産まれてからはあまり興味が無くなったらしい」
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