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三章
3-68 言付けのお兄さん
結局試合が終わり、お昼になったために、ご飯に行くことになった。デンドロビウムも一緒に。
残念ながら、昼までにツルバギアさんは帰って来る事が出来なかったのだ。
オレ達何でも屋メンバーと、エーアトベーベン兄弟、ベルンシュタイン姉弟、テロペア、ルースはその辺のお店に入ってご飯を食べることにしたが、デンドロビウムはどうしようとおろおろしていたので、ついでに連れていく事にした。
残る組に、「ツルバギアさんが帰ってきたら待たせておいて」と言い残し、総勢13人でこの場を離れた。13という数字に若干デンドロビウムは引いていたが「全員一緒の席で食べられるわけでもないんだから」とテロペアが言ったので、一応納得したように頷く。
やっぱり死を刻む悪魔の被害者となると、3の倍数や13という数字は恐ろしいのだろう。とはいえ、オレ達が固まって動くだけで、他のメンバーが全く動かないわけではない。結果的にこの場に死を刻む悪魔の好きな数字だけのメンバーしか残らない可能性も高いのだから、どちらについていっても同じなのである。
わいわいしながら、比較的空いている様子のレストランに入った。
入ってみたら、ビュッフェ形式だから席を立っている人が多かった、というオチだったわけだが、タイミングよく団体客が出たところだったため、近い位置の大型のテーブル席を二か所確保できた。
六人と七人に分かれて座る。
オレは、スティア、ベル、シア、ルース、デンドロビウムの六人で席に着き、近くの席には残りのメンバーが腰かけた。テロペアはちゃっかりアリアさんの隣を確保しているのは、どう考えても食事の世話の為だろう。
ちなみにアリアさんの反対隣りには、道中ですっかり仲良くなったフルールが腰かけたので、彼女もきっとアリアさんの食事の世話をしてくれる事だろう。
一度席を立って、各々好きな食べ物を取ってきたが、なんとアリアさんはデザートのフルーツをちょっとだけ盛ったものを確保していた。「あ!」と思ったのはオレだけではなかったようで、スティアは「おい、アリア」と一言いいながら皿の空白に一口大の肉を置いてから席に戻り、シアも「だめだよー」と言いながらトマトを一つ置いた。さらに隣のフルールは微笑みながら「スープもどうぞ」と自分用に取ってきたのであろうスープを差し出し、反対隣のテロペアはソーセージをアリアさんに差し出す。
うん、完璧だ。スティアとシアの行動は席も違うし想定外だったけど、ナイス!
オレは頷きながら持って来た、お肉をいい感じに焼いた食べ物をもぐもぐと食べていると、唐突に「やあ」と声を掛けられる。
誰だ?
オレが顔を上げるのとほぼ同時に、ベルの嬉しそうな「リリウムさん!」という声が躍り出た。
その人を見ると、白い管理官の制服に身を包んだ、赤い髪の男。えーっと、確か、開会式の時にカサブランカ様の言付けを言っていた人! と、一緒に壇上にいたカサブランカ様の従者とかで、精術師の元締めのヴニヴェルズム家の娘……だったはずの人。この二人が食事をもってすぐそこに立っていたのだ。
明るい声のベルとは対照的に、ルースが「……チッス」とテンション低めに挨拶しているのが印象的だ。お前にも苦手な人っているんだな。
どっちがダメなんだ? 言付けお兄さんか? ヴニヴェルズムのお姉さんか?
「奇遇だね、ベル君」
ルースには会釈だけして、言付けのお兄さんはベルに話しかけた。
「久しぶり。元気だった?」
「はい、元気です」
近くにいたヴニヴェルズムのお姉さんは、隣の席の所長に向かって「すみません、ちょっとだけお邪魔します」と小さく言っている。どうやらこの、言付けお兄さんの世話には慣れているようだ。しかも、やっぱり何でも屋との面識がありそうだ。
所長は困ったように笑うと、少し場所を作り、持って来た食事を置くように促した。ヴニヴェルズムのお姉さんは「助かります」と軽く頭を下げると一度食事を置き、リリウムさんが持ちっぱなしの食事も預かってからテーブルに置いた。
「あの、ま、まさかなぁーって思うんだけど」
「うん」
オレの横で、シアが引きつった表情を浮かべながら言付けお兄さんを見る。
「リリちゃん先輩?」
「はぁい、そうだよ。僕は君の言う所のリリちゃん先輩だよ。久しぶりだね、シアちゃん」
「うそん」
彼女はヒクっと口元をゆがませた。
「シア、この言付けお兄さんと知り合いなのか?」
「多分。あたしが思っている人と本当に同一人物なら、あたしの先輩だよ」
「どういう意味だ?」
疑問符だらけなのは、スティアも同じだ。スティアも眉間に皺を寄せてシアに尋ねる。
ちなみに、オレの席ではデンドロビウムが出来るだけ小さくなりながら、小動物のようにパンを食べ進めている。ごめん、お前、完全に関係ないもんな。オレ達のグループと。
気を使わせているようで申し訳ない。
「えっと、大幅なキャラチェン?」
「何言ってるの? 僕はずっとこのキャラだよ!」
「……シア、多分、お前の言っている人と同一人物だと思う」
困ったような顔をしたシアに、言付けお兄さんはパチンとウインクをして見せたが、今度はそこにベルが口を挟んだ。
「リリウムさん、昔はクールだったから」
「あ、うん、そう。リリちゃん先輩、昔はクールで、チェス盤片手に構内うろうろしてる人で」
「そうそう。それで休日にはチェス盤持ってその辺うろうろしてて」
クールな人って、チェス盤持ちながらうろうろするかなぁ。オレの中のクールとは相いれないクールさなんだけど。
「で、所長と俺に知り合った」
突然の所長。いや、でも、従者の女の人が所長に話しかけてたんだから、そうか。だからさっき、何でも屋と顔見知りなのかなぁ、的に思ったわけで。
「この人はリリウム・ドライツェーン・バーナーさんって言って、俺が所長の養子に迎えられた頃にその辺でフリーハグならぬ、フリーチェスしてたんだ」
「フリーチェス」
えーっと、フリーハグがその辺の人と抱き合う行為だから、フリーチェスって事は、その辺の人とチェスしてたのか? 変な人。
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