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少し落ち着いてから、私は近藤君……いや、行為が終わった今は近藤さんに戻すべきか。彼と眠りについた。この状況で眠れるとは、我ながら図太い。
眠って、朝になって目が覚めると、彼はすでに起きていた。
「おはよう」
「おはようございます」
挨拶をしてから、シャワーを浴びて、身を清める。最初とは違い、お互い、バラバラに入った。
何を着たらいいものか迷って、私はバスローブを身に着けていたが、シャワーを浴び終えた近藤さんも同じような姿をしていた。
「最後に、君を整えてもいいかな?」
「どうぞ」
彼のリクエストは断らず、されるがままにしておく。
肌を整え、制服とは別に買ってきていた下着と、女性らしい衣類を差し出されたので着替える。
下着も衣類も、社会人にふさわしいものであった。
繊細な刺繍がついていて、胸を綺麗に見せるデザインの薄水色の下着。
それから、毛玉がなくてチクチクしない、鎖骨の当たりが綺麗に見えるニット。ひざ丈の落ち着いたスカートに、肌触りの良いストッキング。学生服とは違うが、かといって母の年代に多い服装でもない。
丁度、私の年齢に合うものばかりであった。
それらを身に着けると、彼は丁寧に化粧を施し、薄い色のネイルまで塗ってくれた。
「卒業おめでとう」
「卒業?」
私が問うと、直ぐに「学生の卒業、かな」と続く。申し訳ないが、正直、処女喪失の話かと思った。
「それから、これ」
私の支度がすべて整うと、お札を渡された。一万二万ではなさそう。
数えてはいないが、十枚くらいあるのではないだろうか。
「これが、僕が君に渡せる君の価値だから」
「ありがとうございます」
「いや、こちらこそ」
近藤さんも身支度を整え、私達は、後はこの部屋を後にしたら他人になる。
私は今しがた着込んだ服の上にコートだけ羽織ると、制服も元々着ていた服やマフラーも全部ごっちゃにして袋に詰めて持った。
股の間がちょっと変な感じがするが、これが昨日と今日の間で起こった事の証明だ。
ホテルを出ると夜よりは少し暖かい風が吹いている。
「それじゃあ」
私は近藤さんにお辞儀一つ。駅の方へと向かう。
「あの、よかったら、今後も」
「気持ちは嬉しいけど、ごめんなさい」
呼び止められた言葉は意外なものであったが、私は私の意思で断った、彼は「それもそうか」と笑うと、もう一度お礼を口にして私とは反対側の道へと消えていった。彼の背中を居送ってから、私は再度駅へと向かった。
コートのポケットに入れっぱなしにしていたスマートフォンの電源をつけると、おびただしい量の通知が来たので、もう一度電源を切る。通知の主は、全て母であった。
「もう、止めよう!」
駅までつくと、私は晴れ晴れとした気持ちでコートを脱ぐ。そして、衣類をごっちゃにした袋と共に、朝のゴミ箱に全て捨てた。
人の言う通りにするだけの人生は卒業しよう。かつて少女だった私は、もう昨晩卒業した。
ハルと名乗って、全て売ってしまった。
青春は戻らない。少しでも片鱗を味わえたのだからそれでいい。
もう誰かに、母に支配された人生も終わらせて、私を始めようと心に決めて、電車までの時間をカフェで過ごしてみることにした。昨日までの私と決別するように。
眠って、朝になって目が覚めると、彼はすでに起きていた。
「おはよう」
「おはようございます」
挨拶をしてから、シャワーを浴びて、身を清める。最初とは違い、お互い、バラバラに入った。
何を着たらいいものか迷って、私はバスローブを身に着けていたが、シャワーを浴び終えた近藤さんも同じような姿をしていた。
「最後に、君を整えてもいいかな?」
「どうぞ」
彼のリクエストは断らず、されるがままにしておく。
肌を整え、制服とは別に買ってきていた下着と、女性らしい衣類を差し出されたので着替える。
下着も衣類も、社会人にふさわしいものであった。
繊細な刺繍がついていて、胸を綺麗に見せるデザインの薄水色の下着。
それから、毛玉がなくてチクチクしない、鎖骨の当たりが綺麗に見えるニット。ひざ丈の落ち着いたスカートに、肌触りの良いストッキング。学生服とは違うが、かといって母の年代に多い服装でもない。
丁度、私の年齢に合うものばかりであった。
それらを身に着けると、彼は丁寧に化粧を施し、薄い色のネイルまで塗ってくれた。
「卒業おめでとう」
「卒業?」
私が問うと、直ぐに「学生の卒業、かな」と続く。申し訳ないが、正直、処女喪失の話かと思った。
「それから、これ」
私の支度がすべて整うと、お札を渡された。一万二万ではなさそう。
数えてはいないが、十枚くらいあるのではないだろうか。
「これが、僕が君に渡せる君の価値だから」
「ありがとうございます」
「いや、こちらこそ」
近藤さんも身支度を整え、私達は、後はこの部屋を後にしたら他人になる。
私は今しがた着込んだ服の上にコートだけ羽織ると、制服も元々着ていた服やマフラーも全部ごっちゃにして袋に詰めて持った。
股の間がちょっと変な感じがするが、これが昨日と今日の間で起こった事の証明だ。
ホテルを出ると夜よりは少し暖かい風が吹いている。
「それじゃあ」
私は近藤さんにお辞儀一つ。駅の方へと向かう。
「あの、よかったら、今後も」
「気持ちは嬉しいけど、ごめんなさい」
呼び止められた言葉は意外なものであったが、私は私の意思で断った、彼は「それもそうか」と笑うと、もう一度お礼を口にして私とは反対側の道へと消えていった。彼の背中を居送ってから、私は再度駅へと向かった。
コートのポケットに入れっぱなしにしていたスマートフォンの電源をつけると、おびただしい量の通知が来たので、もう一度電源を切る。通知の主は、全て母であった。
「もう、止めよう!」
駅までつくと、私は晴れ晴れとした気持ちでコートを脱ぐ。そして、衣類をごっちゃにした袋と共に、朝のゴミ箱に全て捨てた。
人の言う通りにするだけの人生は卒業しよう。かつて少女だった私は、もう昨晩卒業した。
ハルと名乗って、全て売ってしまった。
青春は戻らない。少しでも片鱗を味わえたのだからそれでいい。
もう誰かに、母に支配された人生も終わらせて、私を始めようと心に決めて、電車までの時間をカフェで過ごしてみることにした。昨日までの私と決別するように。
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