俺は大型トラックになった~トラックで無双する異世界旅~

無名

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17 魔物狩り

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 俺とジェーンは一旦トラックに帰ることにした。ジェーンに関しては認証協会に行かなければならない。すぐに村に戻る必要があるが、馬のフリードのこともある。トラックに戻ることにした。

 それと、買取で得た金はいくらかマリアに渡し、明日の昼にまた会うと約束した。

 イリスとヒバリには俺が手に入れた魔石を渡し、売るように頼む。値段設定は出来るだけ安くていいと伝えた。

 村を出てトラックに戻ってからは、フリードをトラックに収納。ジェーンに関してはまた村に戻って行ったが、俺はレベルアップと魔石の確保の為、魔物を狩りまくることにした。

 基本は増えすぎたグレイジャッカルや、それに類する小型魔物の駆除だ。俺のレベルもそう簡単に上がらなくなってきている。グレイジャッカルをたくさん狩っても問題ないだろう。

 荷台にフリードがいるので、出来るだけ振動を与えないように走り、グレイジャッカルの群れを見つけては、チェーンマシンガンで狩りまくった。

 夜になる頃にジェーンが帰って来た。人体生成を解除して、竹林付近で停車していた。

 俺は狩りまくったグレイジャッカルを一か所に集めており、ジェーンに解体してくれと頼んだ。
さすがのジェーンも疲れていたのか、解体は明日にしてくれということで、グレイジャッカルの死体はそのままになった。

★★★

 翌日。

 ジェーンは俺が狩ったグレイジャッカルを必死になって解体している。金になるとはいえ、血まみれになって解体するジェーンを見ると、俺も辟易する。

 ついでに言うと、大量のジャッカルを狩ったことにより、俺のレベルは50に上がった。

 ガソリン満タン、各種オイル類の交換がなされ、俺は元気を取り戻している。

 レベルアップ特典には、ナビのアップデートを頼み、通信販売の充実を図る。魔石の買取値段もアップする。

 すべてが順調に済み、俺はイリスとヒバリに大量の魔石を届けた。

「な! なんだいこの魔石の量は!!」

 イリスは俺がたくさん魔石を持ってきたから驚いているようだ。フリードの背中にたくさん積んできたからな。

「一体どうやってこれほどの魔石を? 盗んできたっていうレベルじゃないよこれは」

 イリスとヒバリは驚いているが、もはや俺にとっては当たり前になりつつある。

「ジェーン。あたしはあんたが犯罪はしない奴だって分かってる。だけど、出所がはっきりしないものは売れない。どうやってこれだけの量の魔石を手に入れたんだい?」

 ジェーンはイリスの言葉に「うっ」と詰まる。俺も無言になる。

 トラックのことはあまり多くの人に喋るべきではない。イリスが信用できないとか以前の問題だ。俺のことで無用なトラブルに巻き込む可能性だってある。

 いや、すでに巻き込んだも同じか? 取ってきた魔石を売ってくれっていう時点で、すでに巻き込んでいるよな。

「ジェーン。言えないなら、悪いけど持って帰っておくれ。私もこの店を立て直したいけど、犯罪を犯して奴隷になるのだけは嫌だからね」

 つい昨日渡した量とは比べ物にならない。今回持ってきたのは、まさに米俵いっぱいの魔石と言っていい。それくらいの量があるのだ。さすがのイリスも、個人でこれだけ取ってくるのはおかしいと思うだろう。昨日渡した、幼稚園児用のポーチに入る量じゃないからな。

「私たちのことを思ってしてくれたのは嬉しいけど、ごめんね」

 イリスは頭を下げる。

 俺とジェーンは悩んだ。魔石をいっぱい持ってきすぎた。張り切りすぎたのが失敗につながった。いらぬ不信感をイリスに与えてしまったようだ。

 こうなると、真実を話すべきだろうか?

 騎士団のシェルツ団長を味方に引き込めば、この村である程度自由がきく。それを踏まえたうえで、彼女たちに本当のことを話すべきか?

 魔石の知識は欲しいし、遅かれ早かれ俺のことは知られる。ならば彼女たちと専属契約を結んでもいいのではないか?

「エル。すまん。私が先走りすぎたせいで、イリスを不安にさせてしまった。どうしたらいいか分からない。エルのことを話すべきだろうか? トラックのことを」 

「そうだな。シェルツ隊長にも話すし、いずれはばれることだ。イリスやヒバリは良い人そうだし、何とかなるんじゃないか?」

 俺とジェーンはこそこそと話すが、二人には丸聞こえ。

「あのさ、トラックって何?」

「うっ! それは!」

 ジェーンはイリスさんに聞かれ、後ずさる。俺はそんなジェーンの姿を見て、面倒くさくなった。

「もういいや。魔石に関していろいろ聞きたいし、魔法も勉強したい。二人には協力者になってもらおう」

 あまりに楽観的で、短絡的で、危険だが、大丈夫な気がする。イリスさんとヒバリさんは人が良さそうだし。秘密など、どうとでもなる。俺は魔石に興味が湧いたし、これから役に立つかもしれない。二人の知識を利用させてもらおう。

 俺は二人へ簡単に説明し、トラックに招待することにした。

 ジェーンだが、少し複雑な表情をしている。どうしたのか聞くと、トラックのベッドは私の物だと言ってきた。エルのトラックにあるベッドは、私だけのベッドだと言った。

 どういうことか聞くと、イリスとヒバリが増えると、トラックでの生活が窮屈になると言うのだ。今まで一人で独占して使っていたからな。イリスやヒバリが増えると、ベッドがなくなるもんな。

「ははは。ジェーンは機械騎士なのに欲張りだなぁ」

「私は人間と同じ感情を持って生まれたのだ。精神構造に少し違いがあるが、欲を張るのは人間のお家芸だ。仕方ないだろうが」

 ふうん。精神構造? よく分からないがそうなのか? 

 まぁ、ジェーンの不安に思うことはないだろう。きっとレベルアップ特典に、居住区の拡大があるはずだ。それに、イリスとヒバリは、店がある。トラックでの旅に同行するとは思えない。

★★★

 まだマリアとの約束の時間までは時間がある。それまでに俺のことを説明するとイリスとヒバリに伝えた。

 俺について説明するには、トラックを見せるしかない。

 善は急げだ。すぐに行動に移そう。

 馬のフリードに、ヒバリとイリスを乗せる。俺はジェーンにおんぶされて、トラックまで移動だ。

 街の門番にはこれで何度もすれ違ったが、魔石の採取があると言えば普通に通してくれた。もはや顔なじみだぜ。

 そこからしばらく移動。魔物を出来るだけ避けて移動し、小さな竹林に到着する。

「着いたぞ。これがイリスとヒバリに見せたいものだ」

 竹林に隠してあるトラックは、威風堂々と貫禄たっぷりに停車している。

 うむ。竹という「和」の雰囲気になじむ、素晴らしいトラックだ。さすが俺。

 俺とトラックはリンクしているから、どんなに遠く離れても意識は繋がっている。トラックに危機が訪れれば、俺はすぐさまトラックを発進できる。問題ない。

 イリスとヒバリは大型トラックを見て腰を抜かしていた。まるでドラゴンでも見るような驚き方だ。

 やはり、大きな車はこの世界では珍しいんだな。

 腰を抜かした二人を何とか立たせ、運転席まで登らせる。

「な! なんだいこのキッチンは!! 冷蔵庫もすごい!!! 食材がいっぱい!! というか、貴族様のお屋敷みたいじゃないか!!」

 こんな小さな屋敷があるか。

 それに人の家の冷蔵庫を勝手に開けないでほしい。さらに言うと、反応がジェーンと同じなんだが。業務用の巨大冷蔵庫はそんなにすごいのか?

「このふわふわのベッド。すごい。寝たい」

 ヒバリはふわふわのベッドにウットリ。腰を下ろして柔らかさを確かめている。

「だ! ダメだ! そのベッドは私のだ!」

「ええ!? ジェーンさんここに住んでいるんですか!? ずるいです!!」

「だ、ダメだぞ! これは私んだ!!」

 なんだジェーン。「私んだ」ってのは。俺はお前のトラックになっちまったのか?

「使うならそっちの二階のベッドを使え!」

 ジェーンは運転席の上にある簡易ベッドを指さした。小さな階段を上った所にある寝台だ。

「上にも寝る場所があるの? すごい、秘密基地みたい」

 年の若いヒバリは冒険心があるのだろう。目をキラキラさせてトラックの中を探検している。しかも確認もせずに、あちこち引出を開けたりしている。どこかの勇者がやる行動だ。そのうち壺を割って中身を確認するんじゃないだろうな? 薬草なんて入ってないからな?

「二人とも! 遊びに来たんじゃないぞ! エルがどういう存在か説明しに来たんだ! ちゃんと話を聞け!」

 ジェーンが怒鳴りつけ、備え付けの椅子とテーブルに着席させる。

 それから二人をトラックにあれこれ説明する。これまでのいきさつと、魔石をどうやって得たかを。

 彼女らは驚愕の表情をしつつも、どこかウソだろうと思っているみたいだ。

 そうだよな。

 俺がトラックだもんな。日本語おかしいよな。

 俺、トラック。

 どう聞いてもおかしいよ。疑う。精霊とかの概念があっても、信じられないよ。

 でも、俺が人体生成を解除し、光になったら半分信じてくれた。スピーカーから話しかければ、嫌でも信じざるを得ないだろう。この世界にはない技術みたいだしな。

 完全には信じてくれていないが、俺は二人に言った。

「二人はシートベルトを締めて。俺が魔物を倒すから。今から魔石を取ったやり方を見せる」

 ジェーンがシートベルトの締め方を二人に教える。

 レーダー(中)で探知したら、近くに巨大なトカゲがいることが分かった。ナビが言うには、サンドドレイクという、竜種らしい。初めて聞く名前だが、今の俺には関係ない。チェーンマシンガンで蜂の巣にしてくれる。

 俺はトラックをゆっくりと走らせる。少し開けた土地に、馬のような魔物を食っている、サンドドレイクが見えてきた。

 見ると、かなりデカい。砂の鎧をまとった、馬鹿でかいトカゲだ。大きさ的に、ミニバンくらいあるぞ。

 俺はゆっくりと近づく。明らかにサンドドレイクは気づいているが、俺を無視している。倒されないとでも思っているのか。

 俺は完璧な位置に着く。遮蔽物がなく、風向きも追い風。チェーンマシンガンの射程距離だ。

 狙いを定め、「すまんが俺の糧になってくれ」と言って、魔力弾を掃射した。

 サンドドレイクは意外と硬く、何発か魔力弾を「チュイン」と弾いたが、圧倒的な面攻撃の前にすぐに死んだ。

 チェーンマシンガンの連射で、土煙がもうもうと上がっている。

 俺の大火力の前に、イリスとヒバリは絶句していた。

「どうだ。すごい威力だろう」

 運転席に座っているジェーンは、そんな二人に対して、自分のことのように偉そうだ。

『レベルが上がりました。レベルが58に上がりました』

 かなりレベルが上がった。なんと、サンドドレイクはかなりの強敵だったらしい。一気に8ものレベルが上がった。

「ジェーン、あの魔物にフックを取り付けてきて」

「わかった」

 ジェーンはウインチのフックを持って走っていく。

『レベルアップによる、新しい改造があります』

 お? なんだ?

 いいのを頼むぞ?

『荷台の空間領域を拡張できるようになりました』

 おお!! ついに来たか! 居住区の拡大じゃないが、荷台の拡張は欲しかった改造だ!!

「そうだ。改造するのはいいが、トラックの大きさはどうなる?」

『変わりません。荷台の空間のみを広げます。ただし、荷台のウイング展開機能はなくなります。空間を保持するので、大きく荷台を開くことはできません』

 ナビがなんだか分からないことを言っている。空間がどうのこうのと。

「空間の話は分からない。要は、荷台のウイング展開機能がなくなるのか? 荷物の出し入れはどうする?」

『主が許可したものを自動的に荷台へ転移させます。半径5メートル以内にあるものは、主の意思で荷台へ転移可能です』

 え。何? 近くにあるものを転送だって?

 荷物を荷台に瞬間移動させるのか? まじか?

「そんなことが可能なのか? 念じただけで荷台に転送できるのか? 使用する魔素は?」

『可能です。一回の荷台への転送で、一律1リットルの消費です』

 すげぇなそりゃ。今回の改造はすげぇぞ。ガソリンを食うが、すごい機能だ。

「そうか。他の改造は後回しにするから、まずは荷台の拡張を行ってくれ」

『かしこまりました』 

 それから、荷台が光り輝く。いつもの謎の技術が使われたらしい。

『完了しました』

「おう。ありがとう」

 俺とナビはそんなやり取りをしているが、イリスとヒバリは未だ絶句したまま。

 そんなに珍しいのか? この世界の技術水準はそんなに低くなさそうだが。飛空艇とかあるくらいだし、機械騎士もすごい技術だ。ナビとかの、人工知能は珍しいのだろうか?
 
 俺がナビとやり取りをしていると、満面の笑顔でジェーンが走ってくるのが見えた。かなり良質な素材を剥ぎ取れるんだろう。

「ウインチは引っかけたぞ! 引っ張ってくれ!!」

 と、ジェーンが言ってきたが、すでに荷台の拡張改造をしたあとだ。いつのまにかウインチが外に設置され、荷台のウイングが閉じてしまった。

 仕方ない。近くまで引っ張った後で、新技の「荷台への転送魔法」を使ってみるか!



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感想 8

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みんなの感想(8件)

4416chiba
2018.05.31 4416chiba

楽しく読ませていただきました。いつか気が向いたら更新してもらえたら嬉しいです。

解除
じゅん
2017.11.09 じゅん

面白い設定ですね!トラックが主人公の話は初めてなので凄く新鮮です!続きが気になります。更新楽しみに待ってます!

解除
きくらげ
2016.11.14 きくらげ

1話の
180℃とか360℃
の℃は温度の単位ですね。
角度は°です。
発想が面白いので、更新楽しみにしてます。

2016.11.15 無名

ご指摘ありがとうございます! あとで直しておきます!

解除

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