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3 TS病を武尊に打ち明ける
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玲は一週間ぶりに学校に復帰した。
一部の人間は、玲が自主退学でもしてくれないかと思っていた。不良グループの番長的存在の玲は、一般の生徒から見れば恐怖だ。
玲はカツアゲなどをしないが、他の不良たちは当然のようにしている。それが玲の命令によってやらされていると思われている。
玲のイメージは学校内では最悪であり、副番長的な存在、宮藤武尊のイメージも最悪だった。
「玲、あれからどうなった? 見舞いに行こうとしたけど病室教えてくれなかったろ? 病気はなんだったんだ?」
朝、教室に座っていた武尊が玲に話しかけてくる。
「昼休みに話してやるよ。今ここじゃ不味い」
玲は武尊の耳元で、誰にも聞かれないように喋った。
「わかったよ。昼休みだな? 場所は?」
「体育館裏とかでいいだろ」
「了解」
武尊はそういうと、ホームルーム前だというのに寝始めた。
玲はいつもこいつは寝ているなとあきれるが、自分も授業の時は寝ているのでお互い様だった。
★★★
昼休み、体育館裏。
玲は母親の作った弁当と水筒を持って、昼ご飯を食べていた。逆に武尊は菓子パンと牛乳だ。
「相変わらず玲の弁当美味そうだな」
「やらねぇぞ。俺は食べ盛りなんだ」
そういって、弁当用の小さなコロッケを食べる。
「それで? 病気はなんだったんだ? 普通に飯を食べてるくらいだから、治ったんだよな?」
「治ってねぇよ。病気は現在進行形だ」
「は? マジか? なんだよ? もったいぶらずに教えろ! 命に別状はねぇんだよな!?」
武尊はずいっと玲に近寄る。体がでかいので、かなり威圧感がある。
「死なねぇよ。TS病だってよ。俺の病気。お前だけに言っとくわ」
「TS病?」
「最近ニュースになってるだろ。男が女になる病気だってよ」
「なんだって? 男が女に? お前が? ウソだろ? ハハッ! 笑わせんな」
武尊が鼻で笑うが、玲の目は笑っていない。
「マジだよ。俺、女になるってよ。もう止められねぇみたいだぜ。薬もないみたいだし」
「…………ウソだろ? 本気か?」
「医者がマジだってよ。俺さ、これからどんどん女になっていくみたいだからよ。お前にだけは言っとくわ。助けてもらおうとかおこがましいけどよ、頼む。他校の奴らと喧嘩になりそうだったら、助けてくれ」
玲はプライドが高い男だった。特に腕力に関しては、誰にも負けない自負があった。二メートルを誇る武尊の体格でも、玲は完勝している。一度も負けたことが無い。得意の合気道で一本も取られたことが無い。それなのに、頭を下げて助けてくれと頼んでいる。
「お前が俺に助けを求めるなんて、いつ以来だ? 本気かよ?」
「筋肉がいきなり落ちたんだよ。たった一週間で。強い奴と喧嘩したら、負けるかもしれねぇ。だから頼む。恥を忍んで頼む! 助けてくれ! なぁ、ダメか?」
玲は上目づかいで、武尊に頼み込む。
武尊は玲の上目使いを見て、「うっ」と思った。中性的な玲の容姿は、女性の顔つきになりつつある。女みたいに頼み込まれると、少し変な気分になる。
「最強の番長様が、俺に助けを求めるとか、本気か? 今までの玲じゃねぇぞ」
玲自身、それは分かっているが、どうしようもない。この一週間、肉体の変化が著しいのだ。いきなり筋肉量が落ちているのだ。このままいけば、玲の体はプヨプヨの柔らかい体になってしまう。女の体になってしまう。
「大丈夫か? お前、玲だよな?」
「………すまねぇ。ははは。そうだな。俺らしくねぇよな。弱気になってた」
玲は武尊に助けを求めるのを辞めた。弱気になってどうする。これまで通りだ。俺が女になっても、負けない強さを身につければいいんだ。合気道は相手の力を利用した技だ。力が非力でも負けない技だ。
「とにかく、俺は女になるみてぇだ。他の奴に言うなよ?」
「…………ああ。言えるかよこんなこと」
「でもよかったよ。俺が倒れた時トイレにお前しかいなくて。あんな恥ずかしい姿誰にも見せられねぇよな。ハハハ。…………ハハハ」
力なく笑う玲。
モソモソと弁当を食べる玲を見て、武尊は少し思うところがあった。素直に、玲の求めに応じればよかった。助けてやると言えばよかった。
今まで喧嘩や運動、スポーツ。すべて一位だった斉藤玲。学校でもそれ以外でも、ボスみたいになってる。そんな最強でプライドの高い玲が落ち込み、ため息をつきながら飯を食べている。
こんな姿、見たことない。こいつはいつも全力疾走だった。それがため息をつきながら飯を食べるなんて。
玲は今、本当に病気になっている。一週間前の強気の玲がいない。武尊は、本気で彼を助けなければならないと思った。
恥ずかしくて口には出せなかったが、陰ながら玲を守ると誓った。
一部の人間は、玲が自主退学でもしてくれないかと思っていた。不良グループの番長的存在の玲は、一般の生徒から見れば恐怖だ。
玲はカツアゲなどをしないが、他の不良たちは当然のようにしている。それが玲の命令によってやらされていると思われている。
玲のイメージは学校内では最悪であり、副番長的な存在、宮藤武尊のイメージも最悪だった。
「玲、あれからどうなった? 見舞いに行こうとしたけど病室教えてくれなかったろ? 病気はなんだったんだ?」
朝、教室に座っていた武尊が玲に話しかけてくる。
「昼休みに話してやるよ。今ここじゃ不味い」
玲は武尊の耳元で、誰にも聞かれないように喋った。
「わかったよ。昼休みだな? 場所は?」
「体育館裏とかでいいだろ」
「了解」
武尊はそういうと、ホームルーム前だというのに寝始めた。
玲はいつもこいつは寝ているなとあきれるが、自分も授業の時は寝ているのでお互い様だった。
★★★
昼休み、体育館裏。
玲は母親の作った弁当と水筒を持って、昼ご飯を食べていた。逆に武尊は菓子パンと牛乳だ。
「相変わらず玲の弁当美味そうだな」
「やらねぇぞ。俺は食べ盛りなんだ」
そういって、弁当用の小さなコロッケを食べる。
「それで? 病気はなんだったんだ? 普通に飯を食べてるくらいだから、治ったんだよな?」
「治ってねぇよ。病気は現在進行形だ」
「は? マジか? なんだよ? もったいぶらずに教えろ! 命に別状はねぇんだよな!?」
武尊はずいっと玲に近寄る。体がでかいので、かなり威圧感がある。
「死なねぇよ。TS病だってよ。俺の病気。お前だけに言っとくわ」
「TS病?」
「最近ニュースになってるだろ。男が女になる病気だってよ」
「なんだって? 男が女に? お前が? ウソだろ? ハハッ! 笑わせんな」
武尊が鼻で笑うが、玲の目は笑っていない。
「マジだよ。俺、女になるってよ。もう止められねぇみたいだぜ。薬もないみたいだし」
「…………ウソだろ? 本気か?」
「医者がマジだってよ。俺さ、これからどんどん女になっていくみたいだからよ。お前にだけは言っとくわ。助けてもらおうとかおこがましいけどよ、頼む。他校の奴らと喧嘩になりそうだったら、助けてくれ」
玲はプライドが高い男だった。特に腕力に関しては、誰にも負けない自負があった。二メートルを誇る武尊の体格でも、玲は完勝している。一度も負けたことが無い。得意の合気道で一本も取られたことが無い。それなのに、頭を下げて助けてくれと頼んでいる。
「お前が俺に助けを求めるなんて、いつ以来だ? 本気かよ?」
「筋肉がいきなり落ちたんだよ。たった一週間で。強い奴と喧嘩したら、負けるかもしれねぇ。だから頼む。恥を忍んで頼む! 助けてくれ! なぁ、ダメか?」
玲は上目づかいで、武尊に頼み込む。
武尊は玲の上目使いを見て、「うっ」と思った。中性的な玲の容姿は、女性の顔つきになりつつある。女みたいに頼み込まれると、少し変な気分になる。
「最強の番長様が、俺に助けを求めるとか、本気か? 今までの玲じゃねぇぞ」
玲自身、それは分かっているが、どうしようもない。この一週間、肉体の変化が著しいのだ。いきなり筋肉量が落ちているのだ。このままいけば、玲の体はプヨプヨの柔らかい体になってしまう。女の体になってしまう。
「大丈夫か? お前、玲だよな?」
「………すまねぇ。ははは。そうだな。俺らしくねぇよな。弱気になってた」
玲は武尊に助けを求めるのを辞めた。弱気になってどうする。これまで通りだ。俺が女になっても、負けない強さを身につければいいんだ。合気道は相手の力を利用した技だ。力が非力でも負けない技だ。
「とにかく、俺は女になるみてぇだ。他の奴に言うなよ?」
「…………ああ。言えるかよこんなこと」
「でもよかったよ。俺が倒れた時トイレにお前しかいなくて。あんな恥ずかしい姿誰にも見せられねぇよな。ハハハ。…………ハハハ」
力なく笑う玲。
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