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5 崩壊する玲の日常
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日に日に玲の胸が大きくなっていく。何度も医者に通うが、進行を止めるすべは薬しかない。その薬も、ホルモンバランスが崩れると言うことで、死ぬ危険がある。
通常の女性ホルモンが分泌されるだけならまだいいが、玲の体では子宮までもが作られている。ここでホルモンバランスを崩すと、内臓機能に影響が出て死ぬ。
もし治療すると言っても、玲の家は中流階級の家庭だ。高額な医療費は払えない。玲は、このまま女になるしか道は残されていなかった。
玲の父は、息子の病気を聞いた時、号泣していた。
「玲! すまん! 本当にすまん! 俺が金を持っていたら、もしかしたらお前の治療が出来たかもしれないのに! すまん! 許してくれ!」
玲の父は禿げた頭を床にこすり付け、土下座をしていた。不良ではあるが、玲はたった一人の息子なのだ。それが女に生まれ変わるなど、父親としては許せない気持ちだ。
「あら。別にいいじゃないの。私は女の子が欲しかったの」
逆に玲の母親はあっけらかんとしている。最初は驚いたが、死ぬ病気ではないと分かって正気を取り戻していた。しかもこの母親は娘が欲しかったようだ。
玲が可愛い女の子になるのなら別の道もある。水商売をしたこともある玲の母親は、息子の変化を気に留めなくなった。
「玲ちゃん。今度下着を買いに行きましょう。お料理の仕方も教えてあげるからね」
「何言ってるんだ涼子! 息子が娘になるんだぞ! 男の娘じゃないんだぞ! 分かってるのか!」
「別にいいじゃないのヒロちゃん」
涼子というのは玲の母の名前で、ヒロちゃんというのは父の名前だ。弘明という名前だ。
「何がいいと言うんだ! 玲には俺の会社を継いでもらうつもりだったんだぞ! 嫁に行かせたら誰が会社を継ぐんだ!」
「社員は他にもいるでしょ」
「うおおおおお! 俺の会社なんだぞぉ!」
「家族経営なんて古いわ。有能な人が上に立つべきよ。玲ちゃんはこれから立派なお嫁さんになるんだから、いいじゃないの」
父と母で、温度差がすごい。玲は目の前で両親の修羅場を見せられ、冷や汗をかく。自分の所為で両親が喧嘩するなど見たくない。いくら不良でも、両親は大切だと思っている。ここまで育てて来てくれた恩は感じているのだ。
「俺、嫁に行くとか信じられねぇよ。まだ男だし、男を好きになるとかありえねぇよ」
「あらそうなの? でも、女の子になったらどうなるか分かるわよ。きっと」
「そうなのか?」
「久しぶりに亜里沙ちゃんのところに行って来たら? 唯一、まじめな話を聞いてくれる女友達でしょ?」
亜里沙か……。
玲は子供の頃通っていた、合気道の道場娘を思い出した。ものすごい怖い親父が師範の道場だ。娘である亜里沙は師範代で、しかも強い。女関係で喧嘩別れしてからはずっと会っていなかったが、確かに頼れる女ではある。幼馴染だし、そろそろ謝って仲直りしてもいいかもしれない。
「行きたくないが、そうも言ってられないか? そうだな。行ってみるか」
玲にはろくな友達がいない。特に女友達はひどい。セックスフレンドを何人も作ってはとっかえひっかえしていたし、性病を移されたこともあった。番長で、強い男に群がる女は多い。特に学校という閉鎖された空間ならなおさらだ。親友の武尊が女に溺れないのは不思議だったが、玲は女関係がひどいのだ。
そんなことから、玲には頼れる女友達がいない。亜里沙という幼馴染を除いて。
「うおおおおおおおお! これから俺はどうすればいいんだぁー!!」
父、弘明は号泣が止まらない。中年親父の泣き叫ぶ姿など気持ち悪いだけである。
「親父さ。だったら新しい子供作りゃいいじゃん。おふくろはまだ若いし、弟の一人や二人産めるだろ」
玲はしれっと、とんでもないことを言った。
「え?」
「え?」
弘明と涼子は顔を見合わせる。そして真っ赤になる。
「いや、お前。それは、なぁ」
「え、でも。私はまだ産めるけど。毛の処理だってもう何年も……」
二人は恥ずかしげに、目を合わせては、視線を逸らしている。
変な修羅場をまた作ってしまい、玲はしまったと思った。
本当に弟が出てきても怖いので、この話を切り上げて、玲は自室に引っ込んでいった。
通常の女性ホルモンが分泌されるだけならまだいいが、玲の体では子宮までもが作られている。ここでホルモンバランスを崩すと、内臓機能に影響が出て死ぬ。
もし治療すると言っても、玲の家は中流階級の家庭だ。高額な医療費は払えない。玲は、このまま女になるしか道は残されていなかった。
玲の父は、息子の病気を聞いた時、号泣していた。
「玲! すまん! 本当にすまん! 俺が金を持っていたら、もしかしたらお前の治療が出来たかもしれないのに! すまん! 許してくれ!」
玲の父は禿げた頭を床にこすり付け、土下座をしていた。不良ではあるが、玲はたった一人の息子なのだ。それが女に生まれ変わるなど、父親としては許せない気持ちだ。
「あら。別にいいじゃないの。私は女の子が欲しかったの」
逆に玲の母親はあっけらかんとしている。最初は驚いたが、死ぬ病気ではないと分かって正気を取り戻していた。しかもこの母親は娘が欲しかったようだ。
玲が可愛い女の子になるのなら別の道もある。水商売をしたこともある玲の母親は、息子の変化を気に留めなくなった。
「玲ちゃん。今度下着を買いに行きましょう。お料理の仕方も教えてあげるからね」
「何言ってるんだ涼子! 息子が娘になるんだぞ! 男の娘じゃないんだぞ! 分かってるのか!」
「別にいいじゃないのヒロちゃん」
涼子というのは玲の母の名前で、ヒロちゃんというのは父の名前だ。弘明という名前だ。
「何がいいと言うんだ! 玲には俺の会社を継いでもらうつもりだったんだぞ! 嫁に行かせたら誰が会社を継ぐんだ!」
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「うおおおおお! 俺の会社なんだぞぉ!」
「家族経営なんて古いわ。有能な人が上に立つべきよ。玲ちゃんはこれから立派なお嫁さんになるんだから、いいじゃないの」
父と母で、温度差がすごい。玲は目の前で両親の修羅場を見せられ、冷や汗をかく。自分の所為で両親が喧嘩するなど見たくない。いくら不良でも、両親は大切だと思っている。ここまで育てて来てくれた恩は感じているのだ。
「俺、嫁に行くとか信じられねぇよ。まだ男だし、男を好きになるとかありえねぇよ」
「あらそうなの? でも、女の子になったらどうなるか分かるわよ。きっと」
「そうなのか?」
「久しぶりに亜里沙ちゃんのところに行って来たら? 唯一、まじめな話を聞いてくれる女友達でしょ?」
亜里沙か……。
玲は子供の頃通っていた、合気道の道場娘を思い出した。ものすごい怖い親父が師範の道場だ。娘である亜里沙は師範代で、しかも強い。女関係で喧嘩別れしてからはずっと会っていなかったが、確かに頼れる女ではある。幼馴染だし、そろそろ謝って仲直りしてもいいかもしれない。
「行きたくないが、そうも言ってられないか? そうだな。行ってみるか」
玲にはろくな友達がいない。特に女友達はひどい。セックスフレンドを何人も作ってはとっかえひっかえしていたし、性病を移されたこともあった。番長で、強い男に群がる女は多い。特に学校という閉鎖された空間ならなおさらだ。親友の武尊が女に溺れないのは不思議だったが、玲は女関係がひどいのだ。
そんなことから、玲には頼れる女友達がいない。亜里沙という幼馴染を除いて。
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