女体化してしまった俺と親友の恋

無名

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6 武尊との買い物(デート) 前編

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 玲は親友である武尊と買い物に出かけることにした。

 場所は大型ショッピングモールの女性物コーナーだ。

 最近、玲の体は女性化が著しく、胸だけでなくお尻も出て来た。中性的な顔つきはさらに女っぽさを増し、まつ毛もどんどん長くなっていく。武骨に角ばっていた肩の骨も、すっかりと丸くなってしまった。

 体も縮んできたので、学校の休みに、玲の体に合わせた服を買うことになったのだ。

 下着は母親が簡単に見繕ってくれたものを履いているが、いずれはきちんとしたブラが必要になる。今はまだAカップからBカップの中間なので、ウニクロのスポーツブラでごまかしている。

「玲。俺を誘うとかマジかよ。服なら母親と買いに行けよ。お前、俺とは違って両親と仲が良いだろう?」

「おふくろは今日、親父と出かけてるんだよ」

「お前の親父さんと? どこに行ったんだよ? 葬式か?」

「違うよ。デートだよ」

「は? 玲、冗談いうなよ? お前の両親だよな?」

「いや、ちょっとした間違いでな。弟が欲しいと言いだしてな? まぁ。俺の所為でもあるんだが」

 玲は気まずそうにポリポリと頬をかく。

「あぁ~。そういうことか。弟が欲しくなったのか」

 武尊はそう言って、黙り込む。今は電車に揺られていて、次のホームが見えてくるところだった。

 休日の為か人が多く、二人は立ったまま話していたが、玲の容姿から二人は仲の良いカップルに見えたかもしれない。玲はまだ身長が175センチと女の割に高身長だが、見た目でおかしなところはない。ニューハーフよりも女らしい体つきになっている。

 玲と武尊は吊革につかまりつつ、外の景色を眺めていると、大型ショッピングモールが窓越しに見えてきた。そろそろ到着駅に差し掛かる。

「玲、次で降りるぞ。俺の手を握れ」

「はぁ!?」 


 玲は素っ頓狂な声を上げる。まだ声は低いが、少しずつ女性に近づいている。大きな声で周りの客に見られたが、玲は気にしない。


「何言ってんだ? 電車から降りるだけでなんでお前の手を握らなきゃならんのだ」

「お前とはぐれたら大変だろう。お前は目を離すとすぐにいなくなるからな。電話にも出ないし」

 これから、休日のショッピングモールに行くのだ。人気のショッピングモールの為、休日はお祭り状態だ。ものすごい人混みの為、はぐれたら探すのが大変だ。ましてや玲は病気だ。途中で倒れでもしたら大変なことになる。

「いいから手をつなげ。俺もつなぎたくて繋ぐんじゃない。お前の体を想ってのことだ」

「う~。なんだか気持ちわりぃな。マジかよ。武尊と手を繋ぐなんて、幼稚園児でもあったか?」

 玲は差し出された武尊の手を握る。かなりごつごつとしており、こんなに大きな手だったかとびっくりする。逆に握られた武尊の方は、玲の手がフニャフニャしており、柔らかくてびっくりした。

 こいつ、本当に女になって行ってんだな。俺が守ってやらねぇと……。

 武尊は唯一の親友という責任から、どんな時でも玲を守ると誓う。

「はぁ。男と手を繋ぐとか、俺はついにゲイの道に踏み出しちまった」

 玲は武尊の手を握ってがっかりしている反面、高揚してもいた。胸がドキドキしていたが、それがなんなのかよく分かっていなかった。

「ほら行くぞ。駅に着いたぞ。俺の手を離すなよ」

「わかったよ、騎士様」



◆◆◆◆◆◆◆


 武尊と玲はショッピングモールに到着し、女性物の服を見に行った。もちろん、専門店ではなく、ワゴンで安売りしているような、男も女も入れる大きな売り場だ。ここでなら大男の武尊がいても、そこまで変な目で見られない。彼女と買い物に来たくらいにしか見られない。

 玲も今の格好は、ジーパンにパーカーなので、特に目立ったりはしていない。

 玲は自分に合いそうな女物の服を探し始める中、武尊は玲の体の、ある部分が気になった。

「玲。耳にピアスするの、止めねぇか?」 


「あ? なんでだよ? 俺の勝手だろうが」

「いや、なんとなくさ。ピアスが無い方がいい気がしただけだ。悪気はない」

 武尊はそう言って、玲から視線を逸らす。

「ピアスは昔からしてるだろう? 何で今さら言うんだよ」

「いや、すまん。本当に、なんとなくだ。俺も何で言ったのか分からん」

「ふうん。まぁいいよ。武尊が嫌なら止めてやるよ。別に大切なピアスでもねぇしな」

「そ、そうか。玲がそう言うならいいんだ」

 武尊も自分自身、なぜそんなことを言ったのか分からなかった。ただ、女顔になっていく玲が、ピアスをしているせいで遊んでいるように見えるのが嫌だったのかもしれない。武尊は古い日本男児のような男だった。

 玲は売り場をグルグル回り、レギンスやらなんやらを選び出し、ため息をしてレジで精算を済ませた。

「最悪だぜ。なんで俺が女物の服を買わにゃならんのだ」

 玲は肩を落とし、武尊と一緒に歩く。当然、玲の買った服は武尊が両手に持っている。

「気にするな。いずれ慣れるだろ」

 武尊は他人事のように言うが、玲はそうではない。がっかりして、とぼとぼと歩く。

 フードコートに差し掛かり、昼食を食べていない二人は、ラーメンを食べて行く事にした。

「武尊。ラーメン食おうぜ」

「あぁ良いぜ」

 二人は空いている席に着席し、フードコートでラーメンを買う。二人とも醤油ラーメンの大盛りを頼んだのだが、玲は食べきれずに残してしまう。半分以上残っている。

「うえっぷ。もう食えん」

「マジかよ! 大盛りくらい、楽勝で食ってただろう! そんなに食えなくなったのかよ!」

 武尊は玲の小食にも驚いた。

「すまん。俺の分も食ってくれ」

 ずいっと、ラーメンどんぶりを武尊の前に押し出す。

「はぁ。まぁいいけどよ。俺はおかわりしなくて済むからよ」

 ぶつくさといいつつも、玲の残したラーメンを完食する武尊。その姿は、彼女の残したラーメンを食べる、彼氏のような姿だ。

 食器を所定の位置に返し、二人はショッピングモールを出て帰ることにした。今までの姿に、誰もが恐怖する番長と副番長の姿はどこにもない。仲の良いカップルにしか見えない。誰にも迷惑をかけるでもなく、ゴミを投げ捨てたり、たばこを吸うでもなく、二人は笑顔でショッピングモールを後にする。

 電車に乗って、地元の駅で降りて、武尊は玲の家まで送り届けることにした。

 玲は誰かに見られたら嫌だから一人で帰るとごねたが、武尊は絶対に家まで送り届けると言って離れない。

「うげぇ。まったく、とんでもねぇ騎士様を雇っちまったぜ」

 玲は口ではひどいことを言っているが、まんざらでもない表情をしていた。それは、親友に甘やかされてうれしい時の表情だった。

 駅からしばらく歩き、玲の自宅近くの公園を過ぎようとしたあたりで、事件は起きてしまう。

 玲と武尊が、不良に絡まれてしまったのだ。

「おい。てめぇ、三校の武尊と玲だな? 俺は荒高の楠木だ」

 丸坊主で、唇にピアスをした、いかにも悪そうな不良だ。ガムをクチャクチャ噛んでいるのも、定番だ。

 不良は楠木以外に三人いる。玲は知らないが、武尊は知っている顔だった。どうやら、喧嘩のお礼参りに来たらしい。

「ここらへんにてめぇらの家があるって言うからよ。網を張ってたんだよ」

 楠木は目で合図すると、他の不良たちが武尊と玲を取り囲む。殴り倒して金を奪うのが目的らしい。下手をしたら服を取られて全裸にされた挙句、放置されるかもしれない。

「玲、下がってろ」

「下がるったって、囲まれてるんだぞ」

「いいから、俺から離れるな!」

 武尊はそういって、目の前にいた楠木に殴り掛かった。





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