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7 武尊との買い物(デート) 後編
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荒高というのは、荒北高校という程度の低い高校のことだ。荒高の楠木という男はとてもトップを張る人間とは思えないが、武尊には因縁があったのだろう。もしかしたら、玲も知らないうちに喧嘩で殴り倒していたかもしれない。
とにかく、玲と武尊は楠木率いる不良グループに囲まれ、喧嘩を吹っかけられた。そして武尊が強行突破する為、目の前にいた楠木を殴りにかかった。
楠木も大男の武尊が殴り掛かってくるのは恐怖だったのか、後ろに飛んでパンチを避ける。いつでも戦える体制を整えていたのか、奇襲攻撃は読まれていた。取り囲んでいた不良の三人も、喧嘩が始まったと思い、武尊と玲に殴り掛かってくる。
一斉に、蹴りやパンチが飛んでくる。
武尊は不意打ちの一発が避けられてしまい、玲を逃がすタイミングを失った。今は一発でも玲に攻撃を与えるわけにはいかない。なにせ体の中で子宮が作られている大事な時期だ。絶対に喧嘩をさせるわけにはいかない。
武尊は飛んでくる蹴りやパンチを玲を押し倒してすべてその身に受ける。
「ぐあぁ!!」
「武尊! なにやってんだ! どけろ!」
玲は武尊がのしかかってきたので、何とか押しのけようとするが、びくともしない。すでに武尊と玲では、体重差がすごいことになっていた。
「あぁ? なんだこいつは。斉藤玲を守ろうとしてる?」
楠木が玲に覆いかぶさった武尊を見て、怪訝な顔をする。
「てめぇ。何考えてやがる。気でも狂ったか?」
いつもは好戦的な武尊が、完全に守りに入っている。しかも玲を守ろうとしている。これは何かあると、楠木は思考を巡らせる。
「玲。俺がなんとか道を開く。お前はその間に逃げろ。家は近いんだ。走れば逃げ切れる」
武尊は攻撃が止む一瞬の隙を狙っていた。不良たちは絶えず武尊に蹴りを入れ続けるが、きっとどこかで手が緩まるはずだ。その時を武尊は狙っていた。誰かの足を掴んで、ジャイアントスイングでもして全員なぎ倒す。そんなことを考えていた。
「楠木さん。こいつ倒れねぇ。ものすげぇタフな野郎だ」
不良の一人が楠木に言うが、楠木は別の考え事をしている。なぜ、武尊が玲を庇うのか。何か怪我でもしているのか、それとも病気でもしているのか。とにかく、武尊が玲を庇うことなどありえないはずだ。斉藤玲は、他校でも負けなしの、恐怖の男なのだ。
「なんだかよく分からねぇが、動かなくなったら、手を貸せ。こいつらの頭、丸坊主にするぞ」
楠木はポケットからバリカンを取り出した。武尊と玲の髪の毛を刈るつもりだ。
玲はそのバリカンを見てゾッとする。今の姿で丸坊主にされたら、自分よりも親が傷つく。丸坊主だけは避けたい。
「玲、俺が絶対に守るから心配するな」
武尊は今にも気絶しそうになりながら、玲に四つん這いで覆いかぶさる。
「ちっ。面倒だな。一斉に頭を蹴り上げろ。さすがの武尊でもくたばるだろ」
楠木はとんでもないことを言い放つ。そんなことをすれば死ぬこともあり得る。武尊でなければ一発であの世へ行くかもしれない。
武尊が覚悟を決めたその時、一人の少女が現れた。
「何やってんのあんたたち。寄って集って弱い者いじめ?」
少女はとても小柄で、右手にはスーパーの買い物袋を握っていた。袋からはネギが飛び出ている。買い物帰りのようだ。
「なんだてめぇは。どっかに行け。俺はこいつらに恨みがあるんだよ」
楠木は現れた少女を恫喝するが、少女は怯えもしない。逆に少女はこう言った。
「へぇ。なら、あたしが相手になってあげるわ」
少女は言うや否や、楠木の懐に入り込み、足を払って一本背負い。楠木はなすすべ無く、コンクリートに背中を打ち付け気絶する。背中を打ち付けた時、変な声を出して白目を剥いた。
「ぺぎょ」
楠木は一撃で沈黙した。
「く、楠木さん! て、てめぇ!」
不良の一人が殴り掛かるが、少女は合気道の達人なのか、相手の勢いをエネルギーに変え、そのまま楠木のように投げ捨てる。
「ぐえ!」
不良の一人もその場で気絶して動かなくなる。
「他の二人もやる?」
少女は片手を前に突出し、半身になって合気道基本の構えに移る。少女の鋭い眼光と、隙のない雰囲気を見て取ったのか、残った二人は気絶した楠木と残りの一人を担ぎ上げ、「覚えていろ」と漫画のようなセリフを吐いて逃げて行った。
少女は手をパンパンと払い、武尊と玲に目を向けた。
玲は少女を見て、驚愕していた。
「あ、亜里沙……」
「武尊も玲も、しばらく見ないうちにずいぶん弱くなったのね。びっくりしたわ」
亜里沙と呼ばれた小さな少女は、買い物袋を拾い上げると、傷ついた武尊を介抱するのだった。
とにかく、玲と武尊は楠木率いる不良グループに囲まれ、喧嘩を吹っかけられた。そして武尊が強行突破する為、目の前にいた楠木を殴りにかかった。
楠木も大男の武尊が殴り掛かってくるのは恐怖だったのか、後ろに飛んでパンチを避ける。いつでも戦える体制を整えていたのか、奇襲攻撃は読まれていた。取り囲んでいた不良の三人も、喧嘩が始まったと思い、武尊と玲に殴り掛かってくる。
一斉に、蹴りやパンチが飛んでくる。
武尊は不意打ちの一発が避けられてしまい、玲を逃がすタイミングを失った。今は一発でも玲に攻撃を与えるわけにはいかない。なにせ体の中で子宮が作られている大事な時期だ。絶対に喧嘩をさせるわけにはいかない。
武尊は飛んでくる蹴りやパンチを玲を押し倒してすべてその身に受ける。
「ぐあぁ!!」
「武尊! なにやってんだ! どけろ!」
玲は武尊がのしかかってきたので、何とか押しのけようとするが、びくともしない。すでに武尊と玲では、体重差がすごいことになっていた。
「あぁ? なんだこいつは。斉藤玲を守ろうとしてる?」
楠木が玲に覆いかぶさった武尊を見て、怪訝な顔をする。
「てめぇ。何考えてやがる。気でも狂ったか?」
いつもは好戦的な武尊が、完全に守りに入っている。しかも玲を守ろうとしている。これは何かあると、楠木は思考を巡らせる。
「玲。俺がなんとか道を開く。お前はその間に逃げろ。家は近いんだ。走れば逃げ切れる」
武尊は攻撃が止む一瞬の隙を狙っていた。不良たちは絶えず武尊に蹴りを入れ続けるが、きっとどこかで手が緩まるはずだ。その時を武尊は狙っていた。誰かの足を掴んで、ジャイアントスイングでもして全員なぎ倒す。そんなことを考えていた。
「楠木さん。こいつ倒れねぇ。ものすげぇタフな野郎だ」
不良の一人が楠木に言うが、楠木は別の考え事をしている。なぜ、武尊が玲を庇うのか。何か怪我でもしているのか、それとも病気でもしているのか。とにかく、武尊が玲を庇うことなどありえないはずだ。斉藤玲は、他校でも負けなしの、恐怖の男なのだ。
「なんだかよく分からねぇが、動かなくなったら、手を貸せ。こいつらの頭、丸坊主にするぞ」
楠木はポケットからバリカンを取り出した。武尊と玲の髪の毛を刈るつもりだ。
玲はそのバリカンを見てゾッとする。今の姿で丸坊主にされたら、自分よりも親が傷つく。丸坊主だけは避けたい。
「玲、俺が絶対に守るから心配するな」
武尊は今にも気絶しそうになりながら、玲に四つん這いで覆いかぶさる。
「ちっ。面倒だな。一斉に頭を蹴り上げろ。さすがの武尊でもくたばるだろ」
楠木はとんでもないことを言い放つ。そんなことをすれば死ぬこともあり得る。武尊でなければ一発であの世へ行くかもしれない。
武尊が覚悟を決めたその時、一人の少女が現れた。
「何やってんのあんたたち。寄って集って弱い者いじめ?」
少女はとても小柄で、右手にはスーパーの買い物袋を握っていた。袋からはネギが飛び出ている。買い物帰りのようだ。
「なんだてめぇは。どっかに行け。俺はこいつらに恨みがあるんだよ」
楠木は現れた少女を恫喝するが、少女は怯えもしない。逆に少女はこう言った。
「へぇ。なら、あたしが相手になってあげるわ」
少女は言うや否や、楠木の懐に入り込み、足を払って一本背負い。楠木はなすすべ無く、コンクリートに背中を打ち付け気絶する。背中を打ち付けた時、変な声を出して白目を剥いた。
「ぺぎょ」
楠木は一撃で沈黙した。
「く、楠木さん! て、てめぇ!」
不良の一人が殴り掛かるが、少女は合気道の達人なのか、相手の勢いをエネルギーに変え、そのまま楠木のように投げ捨てる。
「ぐえ!」
不良の一人もその場で気絶して動かなくなる。
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少女は片手を前に突出し、半身になって合気道基本の構えに移る。少女の鋭い眼光と、隙のない雰囲気を見て取ったのか、残った二人は気絶した楠木と残りの一人を担ぎ上げ、「覚えていろ」と漫画のようなセリフを吐いて逃げて行った。
少女は手をパンパンと払い、武尊と玲に目を向けた。
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「あ、亜里沙……」
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