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8 合気道娘、御堂亜里沙
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「あんたら、ずいぶんと弱くなったわね」
亜里沙は道場で横たわる武尊に塗り薬を塗っていた。武尊は打ち身が多く、ところどころないっ出血している個所がある。何回も蹴られたからだ。
「本当は病院に行った方がいいんだけど、武尊が行きたくないってんならいいわ」
亜里沙は武尊の背中に湿布を貼り付ける。バシンッと、乱暴な手つきで貼りつける。
「だけど、玲。事情は説明してもらえるんでしょうね? あんたのその状態」
「分かるのか?」
「見たらわかるでしょ。そのナヨナヨした体に、女みたいな顔。化粧すれば完全に女じゃないの。あたしより美人ってのも許せないけど、それは置いとくわ。ただ、喧嘩最強のあんたが、あたしより弱そうに見えるってことの方が問題よ」
「ははは。そうだよな。弱く見えるよな。武尊もすまねぇ。こんな俺の為に」
「気にするな。守ると言ったんだから、守る」
武尊は玲を見てほほ笑む。玲も、申し訳なかったと、苦笑いだ。傷ついた武尊に、玲は心底申し訳なそうにしている。二人の間には、バラの花が垣間見えるくらい、仲の良さそうな雰囲気を出している。
「なに? あんたたち遂にそういう関係になったの? 玲が受けで、武尊が攻め? うわぁ。いるんだ本当に。そういう奴ら」
亜里沙は「うげぇっ」と、吐く仕草をする。
「違うわ! 俺は病気になったんだよ! TS病っていう、性転換する病気だ!」
「TS病?」
「そうだ! 傍から見たら、武尊とそういう関係になってるように見えるかもしれんが、断じて違う! 俺は病気が安定するまで、武尊に守ってもらってただけだ!」
玲は鼻息を荒くして、亜里沙に食って掛かる。玲はまだ心は男で、ゲイでもなんでもない。性欲は減退し、女を好きになることが出来なくなっているが、まだ心は男のつもりだ。
「今流行ってる、性転換の病気か。まさかあんたがねぇ」
亜里沙は道場の中心で、腕を組んで考えている。今この道場には亜里沙と武尊、玲の三人しかいない。今日は道場が休みで、門下生や師範はいない。ピカピカに磨かれた床に武尊は寝かされ、傷を癒していた。
「しかし助かったよ亜里沙ちゃん。亜里沙ちゃんのおかげで、俺たち坊主にならずに済んだ」
武尊はむくりと起き上がると、亜里沙に頭を下げる。
「別に。ちょうど商店街からの買い物帰りだったし、知り合いがやられるのは嫌だったからね」
「でも、亜里沙ちゃんは玲のことが嫌いなんだろ? どうして俺たちを助けたの?」
「もう気にしてないわ。女をとっかえひっかえしていたのなんて、これっぽっちも気にしてないわ。ええ本当よ。これーーっぽっちも気にしてないわ」
亜里沙は言いながらも、すごく気にしているように振る舞っている。亜里沙は少し前、玲のことが好きで告白するかどうか迷っていた時期があった。玲はその時期、ちょうど女遊びに覚えて、女たちを道具のように扱っていた。亜里沙はその玲の態度が気に食わず、女を性欲のはけ口にしか見ていないのが嫌で、結局告白しなかった。
亜里沙は、その時期から玲と疎遠になって行った。
「まぁ、いいわ。あんたがその病気になったのは、神様が罰を与えたのよ。そうとしか思えないわ」
玲は亜里沙にそういわれると、心当たりがあるのか、黙り込む。女遊びばかりしていたから、神が罰を与えたのだ。
「なぁ亜里沙ちゃん。玲のこと、助けてやってくれねぇか? 俺一人じゃやっぱり守れねぇ。二人くらいなら殴り倒せるが、四人も集まって囲まれると、玲を守り切れねぇ」
武尊は誠心誠意頭を下げるが、亜里沙はそのセリフを切って捨てた。
「じゃぁ、うちの道場に通いなさいよ。あんたたちが強くなればいいでしょ」
「はぁ!?」
「いや、亜里沙ちゃん。武尊は体が作り替わっている時期で、激しい運動は出来ないんだ。多分」
「何も激しい運動をしなくても大丈夫よ。合気道は相手の力を倍にして返す技。昔の感覚を取り戻すくらいの練習で、十分武尊と玲は強くなれるわ」
「ちょっとまてよ。なんで俺たちが道場に通うんだよ! 話の流れがおかしいだろ!」
「おかしくないわ。強くなればどんな敵が来ても叩きのめせるでしょ。特に玲、あんたは途中でうちの道場を辞めたわよね? もう一回基礎からやり直して、最後までうちのカリキュラムを受けてもらうわ。もちろん、月謝も払いなさい」
「はぁ!? 結局は金かよ!」
玲は騒ぐが、亜里沙は一蹴。
「うるさいわね! 最近は門下生が集まらないのよ! うちの家計のことも考えて、道場に通いなさい! どうせあんたもそのつもりだったんでしょ!?」
玲は「ぐぅ」と、言って、黙り込む。女になって弱くなっているのだから、鍛えるために道場に行くことは考えていた。内臓や体がどうのと、言っていられないのだ。結局、亜里沙の言うとおりだった。
少し考え、玲は「わかったよ」と言って、今までのことも含めて謝ろうとした。その時。
道場の引き戸を開いて、入ってくる大男がいた。その男は、武尊よりも大きな体をしている。筋肉もモリモリで、まさに肉ダルマだ。
「話は聞かせてもらった。玲、武尊。御堂流合気道、俺がきっちりと伝授してやる」
ぬぅっと、岩のような体を持つ亜里沙の父、御堂巌#__いわお__#が現れた。
とてつもない迫力で、ドシンドシンと歩いてくる。
玲は「あわわわわわ」と慌てている。「鬼がきたぁぁぁ」とガタガタと震えていると、師範の巌は玲のそばにしゃがみ込んだ。
「安心しろ。今度からは玲ちゃんと呼んであげよう」
巌は「デュフフフフ」と笑って、玲に対してイヤラシイ笑みを浮かべていた。
武尊は、巌が真の変態だと言うことを忘れており、「しまった」と思った。
亜里沙は道場で横たわる武尊に塗り薬を塗っていた。武尊は打ち身が多く、ところどころないっ出血している個所がある。何回も蹴られたからだ。
「本当は病院に行った方がいいんだけど、武尊が行きたくないってんならいいわ」
亜里沙は武尊の背中に湿布を貼り付ける。バシンッと、乱暴な手つきで貼りつける。
「だけど、玲。事情は説明してもらえるんでしょうね? あんたのその状態」
「分かるのか?」
「見たらわかるでしょ。そのナヨナヨした体に、女みたいな顔。化粧すれば完全に女じゃないの。あたしより美人ってのも許せないけど、それは置いとくわ。ただ、喧嘩最強のあんたが、あたしより弱そうに見えるってことの方が問題よ」
「ははは。そうだよな。弱く見えるよな。武尊もすまねぇ。こんな俺の為に」
「気にするな。守ると言ったんだから、守る」
武尊は玲を見てほほ笑む。玲も、申し訳なかったと、苦笑いだ。傷ついた武尊に、玲は心底申し訳なそうにしている。二人の間には、バラの花が垣間見えるくらい、仲の良さそうな雰囲気を出している。
「なに? あんたたち遂にそういう関係になったの? 玲が受けで、武尊が攻め? うわぁ。いるんだ本当に。そういう奴ら」
亜里沙は「うげぇっ」と、吐く仕草をする。
「違うわ! 俺は病気になったんだよ! TS病っていう、性転換する病気だ!」
「TS病?」
「そうだ! 傍から見たら、武尊とそういう関係になってるように見えるかもしれんが、断じて違う! 俺は病気が安定するまで、武尊に守ってもらってただけだ!」
玲は鼻息を荒くして、亜里沙に食って掛かる。玲はまだ心は男で、ゲイでもなんでもない。性欲は減退し、女を好きになることが出来なくなっているが、まだ心は男のつもりだ。
「今流行ってる、性転換の病気か。まさかあんたがねぇ」
亜里沙は道場の中心で、腕を組んで考えている。今この道場には亜里沙と武尊、玲の三人しかいない。今日は道場が休みで、門下生や師範はいない。ピカピカに磨かれた床に武尊は寝かされ、傷を癒していた。
「しかし助かったよ亜里沙ちゃん。亜里沙ちゃんのおかげで、俺たち坊主にならずに済んだ」
武尊はむくりと起き上がると、亜里沙に頭を下げる。
「別に。ちょうど商店街からの買い物帰りだったし、知り合いがやられるのは嫌だったからね」
「でも、亜里沙ちゃんは玲のことが嫌いなんだろ? どうして俺たちを助けたの?」
「もう気にしてないわ。女をとっかえひっかえしていたのなんて、これっぽっちも気にしてないわ。ええ本当よ。これーーっぽっちも気にしてないわ」
亜里沙は言いながらも、すごく気にしているように振る舞っている。亜里沙は少し前、玲のことが好きで告白するかどうか迷っていた時期があった。玲はその時期、ちょうど女遊びに覚えて、女たちを道具のように扱っていた。亜里沙はその玲の態度が気に食わず、女を性欲のはけ口にしか見ていないのが嫌で、結局告白しなかった。
亜里沙は、その時期から玲と疎遠になって行った。
「まぁ、いいわ。あんたがその病気になったのは、神様が罰を与えたのよ。そうとしか思えないわ」
玲は亜里沙にそういわれると、心当たりがあるのか、黙り込む。女遊びばかりしていたから、神が罰を与えたのだ。
「なぁ亜里沙ちゃん。玲のこと、助けてやってくれねぇか? 俺一人じゃやっぱり守れねぇ。二人くらいなら殴り倒せるが、四人も集まって囲まれると、玲を守り切れねぇ」
武尊は誠心誠意頭を下げるが、亜里沙はそのセリフを切って捨てた。
「じゃぁ、うちの道場に通いなさいよ。あんたたちが強くなればいいでしょ」
「はぁ!?」
「いや、亜里沙ちゃん。武尊は体が作り替わっている時期で、激しい運動は出来ないんだ。多分」
「何も激しい運動をしなくても大丈夫よ。合気道は相手の力を倍にして返す技。昔の感覚を取り戻すくらいの練習で、十分武尊と玲は強くなれるわ」
「ちょっとまてよ。なんで俺たちが道場に通うんだよ! 話の流れがおかしいだろ!」
「おかしくないわ。強くなればどんな敵が来ても叩きのめせるでしょ。特に玲、あんたは途中でうちの道場を辞めたわよね? もう一回基礎からやり直して、最後までうちのカリキュラムを受けてもらうわ。もちろん、月謝も払いなさい」
「はぁ!? 結局は金かよ!」
玲は騒ぐが、亜里沙は一蹴。
「うるさいわね! 最近は門下生が集まらないのよ! うちの家計のことも考えて、道場に通いなさい! どうせあんたもそのつもりだったんでしょ!?」
玲は「ぐぅ」と、言って、黙り込む。女になって弱くなっているのだから、鍛えるために道場に行くことは考えていた。内臓や体がどうのと、言っていられないのだ。結局、亜里沙の言うとおりだった。
少し考え、玲は「わかったよ」と言って、今までのことも含めて謝ろうとした。その時。
道場の引き戸を開いて、入ってくる大男がいた。その男は、武尊よりも大きな体をしている。筋肉もモリモリで、まさに肉ダルマだ。
「話は聞かせてもらった。玲、武尊。御堂流合気道、俺がきっちりと伝授してやる」
ぬぅっと、岩のような体を持つ亜里沙の父、御堂巌#__いわお__#が現れた。
とてつもない迫力で、ドシンドシンと歩いてくる。
玲は「あわわわわわ」と慌てている。「鬼がきたぁぁぁ」とガタガタと震えていると、師範の巌は玲のそばにしゃがみ込んだ。
「安心しろ。今度からは玲ちゃんと呼んであげよう」
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