15 / 25
15 御堂流合気道
しおりを挟む
玲は学校の帰りに、亜里沙の家に寄って合気道を習うことになった。
完全な基礎からやり直すということで、今は受け身の練習から入っていた。激しい動きを出来るだけ避けて、ゆっくりとした動作で、確実に受け身の型を覚える。
玲は基本的なことはすでにマスターしているが、長年のブランクもあるので最初からやり直すことにした。
御堂巌が直接指導してくれることになり、体を激しく打ち付けないように、ゆっくりと受け身の練習をしていた。
「ふむ。玲ちゃんはやはり筋がいいな!」
「先生。玲ちゃんっていうのやめてくれ。昔は普通に呼び捨てだったろう」
「かわいい女の子にはちゃん付けで呼ぶのが礼儀だ」
「なんだその礼儀は……。あんた、そんなキャラだったか? 俺が子供の頃は鬼のように厳しかったのに」
御堂巌は、フェミニストだ。かわいい子にはとことん甘い。玲の顔つきもだいぶ丸くなり、かなり可愛く変化しているので、巌が気に入ったのだ。
玲は子供の頃、巌にこっぴどく扱かれていて、いつも床にぶん投げられていた記憶がある。玲はその時から、御堂巌を"オーガ“と呼んでいた。
それが今は、玲に対してすごく優しい。ものすごい掌返しで、逆に怖くなる。
「お父さん! 玲を甘やかさないでよ? みんなと同じようにちゃんと教えて!」
巌の娘、亜里沙が近づいてきた。他の門下生に投げの練習などを教えていたが、巌と玲のやり取りを見て黙っていられなくった。
「技を教えるのは上手いんだから、あとは言葉遣いを直して! 他の生徒が気味悪がるでしょ!?」
「いや、うちには女の子の門下生が少なくてな。俺も少しは女の子と絡みたくて」
巌はとんでもない言葉を口にする。とんだ変態道場主だ。まだTS病にかかって間もない玲も、巌のターゲットにされていた。
「はぁ!? そんなこと言ってるから、女の子が来ないのよ! 通報されるわよ!」
娘が父親を道場で叱る。門下生がみんな見ているのに、師範の巌は、威厳が無かった。
「亜里沙。先生って、こんなだったか? 昔はもっと、誰にでも厳しかった気がするが」
「あんたは知らないでしょうけど、うちのお母さんが亡くなってから、おかしくなったのよ。よっぽどお母さんを愛してたみたいで、それまでには他の女の子に目もくれなかったんだけど」
「そ、そうだったのか。悪いことを聞いたな」
娘に叱られて、しゅんとなっている巌。鬼のような男も、愛した人がいなくなると寂しくなるようだ。
玲はうなだれている巌に近づくと、手を差し伸べた。
「先生。俺に小手返しの技を教えてくれよ。昔みたいにさ」
気を落としている巌に優しく笑いかける玲。すると、巌は玲の手をギュッと握る。「よし、手取り足取り教えよう!」と、玲に体を密着させてきた。
「まずは入り身の動作からだ!」
巌は玲の手を取り関節を決め、流れる動作で玲を投げた。投げる時も優しくゆっくりとした動作だったので、玲は床にたたきつけられることはなかった。とても上手く、優しい教え方だったが、顔が鬼のように怖いので、玲は泣きそうだ。
「うぅ。昔のトラウマがよみがえる。やっぱり怖ぇよ~」
玲は涙目になって巌の指導を受け続けた。
亜里沙は巌と玲の不思議な合気道を見て、「はぁ」とため息をつくのだった。
完全な基礎からやり直すということで、今は受け身の練習から入っていた。激しい動きを出来るだけ避けて、ゆっくりとした動作で、確実に受け身の型を覚える。
玲は基本的なことはすでにマスターしているが、長年のブランクもあるので最初からやり直すことにした。
御堂巌が直接指導してくれることになり、体を激しく打ち付けないように、ゆっくりと受け身の練習をしていた。
「ふむ。玲ちゃんはやはり筋がいいな!」
「先生。玲ちゃんっていうのやめてくれ。昔は普通に呼び捨てだったろう」
「かわいい女の子にはちゃん付けで呼ぶのが礼儀だ」
「なんだその礼儀は……。あんた、そんなキャラだったか? 俺が子供の頃は鬼のように厳しかったのに」
御堂巌は、フェミニストだ。かわいい子にはとことん甘い。玲の顔つきもだいぶ丸くなり、かなり可愛く変化しているので、巌が気に入ったのだ。
玲は子供の頃、巌にこっぴどく扱かれていて、いつも床にぶん投げられていた記憶がある。玲はその時から、御堂巌を"オーガ“と呼んでいた。
それが今は、玲に対してすごく優しい。ものすごい掌返しで、逆に怖くなる。
「お父さん! 玲を甘やかさないでよ? みんなと同じようにちゃんと教えて!」
巌の娘、亜里沙が近づいてきた。他の門下生に投げの練習などを教えていたが、巌と玲のやり取りを見て黙っていられなくった。
「技を教えるのは上手いんだから、あとは言葉遣いを直して! 他の生徒が気味悪がるでしょ!?」
「いや、うちには女の子の門下生が少なくてな。俺も少しは女の子と絡みたくて」
巌はとんでもない言葉を口にする。とんだ変態道場主だ。まだTS病にかかって間もない玲も、巌のターゲットにされていた。
「はぁ!? そんなこと言ってるから、女の子が来ないのよ! 通報されるわよ!」
娘が父親を道場で叱る。門下生がみんな見ているのに、師範の巌は、威厳が無かった。
「亜里沙。先生って、こんなだったか? 昔はもっと、誰にでも厳しかった気がするが」
「あんたは知らないでしょうけど、うちのお母さんが亡くなってから、おかしくなったのよ。よっぽどお母さんを愛してたみたいで、それまでには他の女の子に目もくれなかったんだけど」
「そ、そうだったのか。悪いことを聞いたな」
娘に叱られて、しゅんとなっている巌。鬼のような男も、愛した人がいなくなると寂しくなるようだ。
玲はうなだれている巌に近づくと、手を差し伸べた。
「先生。俺に小手返しの技を教えてくれよ。昔みたいにさ」
気を落としている巌に優しく笑いかける玲。すると、巌は玲の手をギュッと握る。「よし、手取り足取り教えよう!」と、玲に体を密着させてきた。
「まずは入り身の動作からだ!」
巌は玲の手を取り関節を決め、流れる動作で玲を投げた。投げる時も優しくゆっくりとした動作だったので、玲は床にたたきつけられることはなかった。とても上手く、優しい教え方だったが、顔が鬼のように怖いので、玲は泣きそうだ。
「うぅ。昔のトラウマがよみがえる。やっぱり怖ぇよ~」
玲は涙目になって巌の指導を受け続けた。
亜里沙は巌と玲の不思議な合気道を見て、「はぁ」とため息をつくのだった。
13
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる