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俺は団長が来るまで待つことになり、久しぶりのシャワーと暖かい飯、清潔な服を手に入れた。今まで使ってきた服はボロボロだったので、必要なものだけ残して破棄した。
アガサから話を聞くと、団長が来るのは三日後になると報告を受けた。仕方ないので、アーティファクトをソサエティーの買取所で買い取ってもらうことになった。この階層にたどりつくまで、大小さまざまなアーティファクトを手に入れた。それなりの額になるだろう。
「おいあんた。このモバイルバッテリー、どこで手に入れた? 容量が発電機並みだぞ! それにこの腕時計、永久魔石で動いてるのか? すごいお宝ばかりだぞ!」
買取所のおっさんは俺の持ちこんだアーティファクトに鼻息を荒くしている。俺からすれば、生産性のないアーティファクトはごみと一緒だ。嗜好品などダンジョンで何の役にも立たない。街で高く売れるから持ってくるだけだ。
「すごいな。ここでは手に入らない物ばかりだ。どうだ? 全部で3億リドルで買い取るが?」
リドルという通貨が分からないので詳しく聞いたら、3億リドルという額は、一生遊んで暮らせる額らしい。もう、ここに骨をうずめていいと思えるくらいの額が手に入るとのことだ。もちろん俺は二つ返事で了承する。金は口座を開設し、ソサエティで預かってくれることになった。
この世界にいる限り、金などもっていても意味がない。ダンジョンマスターにこの階層が危険だと判断されれば、魔物の大群を差し向けられて滅ぼされる。だから俺は“空”を目指した。故郷の仲間がみんなそうしたように。
俺は手に入った金を元に、必要な物資を揃えることにした。一番は食料だが、人ひとりが持てる量は限られている。空間を拡張させたバッグは特級のアーティファクトなので、この階層でもっている人間は団長しかいないそうだ。
仕方ないので、今まで手に入らなかったガスマスクのカートリッジや、圧力バールのガスボンベを必要な分買うことにした。ソサエティにあるシーカー専門のショップに行くと、すぐに買うことが出来た。
「この階層はすげぇな。今まで手に入らなかったものがすべて手に入る。あんまり文明レベルを進めるとダンジョンマスターに目を付けられるが、大丈夫なのか?」
今来ているショップは武器から食料、なんでも売っている場所だ。シーカー以外の一般客も普通に歩いている。棚にはジャンク品もごちゃごちゃと置いてあるし、ディスカウントショップみたいだな。
俺は店の中を物色して歩いていると、突然、数体のホムンクルスを見つけた。ガラスケースに入って置かれている。
見ると、通常のホムンクルスではなく、キメラタイプの合成ホムンクルスだ。オークのような顔をしたホムンクルスや、上半身が女で、下半身が蜘蛛というタイプが数体置かれている。
今はガラスケースで眠っていて、起きない。主人の魔力と血液で契約するようだ。
「お客さん目が高いね。そいつは上層で発見されたアーティファクトだよ。合成ホムンクルスの技師はこの階層にはいなくてね。うちではそいつらを運よく仕入れられたんだ」
アーティファクトか。昔に作られた戦闘用のホムンクルスだろうな。
「いくらだ?」
「一体三千万リドルから売れるよ。今年中に売れなかったらオークションに出すつもりなんだが、買ってくれるのかい?」
ふーむ。昔アンドロイドタイプを連れて歩いたことがあるが、欠陥品ですぐに壊れたんだよな。迷宮探索に荷物持ちは重要なんだが、けがをしたり壊れたら面倒だしな。
俺はよくよくホムンクルスを見てみる。さきほど述べた種類のホムンクルス以外にも、アリのような形をした魔物型ホムンクルスや、人馬型のホムンクルスも置いてある。戦闘に適しているのはアラクネタイプのホムンクルスだが、俺が欲しいのは頑丈で地形に適応できる奴だ。
「子供型のホムンクルスは置いていないのか?」
「子供型はシーカーに人気でしてねぇ。今は在庫切れですよ」
考えることはみんな同じか。大人よりも力があり、狭い所にも入れる小さな体。やはり子供タイプのホムンクルスは品切れか。
「ただ、人間年齢が14歳程度のホムンクルスなら一体ありますよ。倉庫に置いてあります」
「14歳? そんな中途半端な体のホムンクルスが作られていたのか? 性別は?」
「性別はありません。成長とともに変化する人型のホムンクルスです」
なんだそれは。欠陥品じゃねぇか。ようするに、製造過程で失敗した、不良品じゃねぇか。なんでそんなのが売ってんだ。
「かなり特殊なホムンクルスでしてね。子宮と精巣があるのです」
「子宮?」
「人間の子供を産めるタイプのホムンクルスです」
なんだと?
アガサから話を聞くと、団長が来るのは三日後になると報告を受けた。仕方ないので、アーティファクトをソサエティーの買取所で買い取ってもらうことになった。この階層にたどりつくまで、大小さまざまなアーティファクトを手に入れた。それなりの額になるだろう。
「おいあんた。このモバイルバッテリー、どこで手に入れた? 容量が発電機並みだぞ! それにこの腕時計、永久魔石で動いてるのか? すごいお宝ばかりだぞ!」
買取所のおっさんは俺の持ちこんだアーティファクトに鼻息を荒くしている。俺からすれば、生産性のないアーティファクトはごみと一緒だ。嗜好品などダンジョンで何の役にも立たない。街で高く売れるから持ってくるだけだ。
「すごいな。ここでは手に入らない物ばかりだ。どうだ? 全部で3億リドルで買い取るが?」
リドルという通貨が分からないので詳しく聞いたら、3億リドルという額は、一生遊んで暮らせる額らしい。もう、ここに骨をうずめていいと思えるくらいの額が手に入るとのことだ。もちろん俺は二つ返事で了承する。金は口座を開設し、ソサエティで預かってくれることになった。
この世界にいる限り、金などもっていても意味がない。ダンジョンマスターにこの階層が危険だと判断されれば、魔物の大群を差し向けられて滅ぼされる。だから俺は“空”を目指した。故郷の仲間がみんなそうしたように。
俺は手に入った金を元に、必要な物資を揃えることにした。一番は食料だが、人ひとりが持てる量は限られている。空間を拡張させたバッグは特級のアーティファクトなので、この階層でもっている人間は団長しかいないそうだ。
仕方ないので、今まで手に入らなかったガスマスクのカートリッジや、圧力バールのガスボンベを必要な分買うことにした。ソサエティにあるシーカー専門のショップに行くと、すぐに買うことが出来た。
「この階層はすげぇな。今まで手に入らなかったものがすべて手に入る。あんまり文明レベルを進めるとダンジョンマスターに目を付けられるが、大丈夫なのか?」
今来ているショップは武器から食料、なんでも売っている場所だ。シーカー以外の一般客も普通に歩いている。棚にはジャンク品もごちゃごちゃと置いてあるし、ディスカウントショップみたいだな。
俺は店の中を物色して歩いていると、突然、数体のホムンクルスを見つけた。ガラスケースに入って置かれている。
見ると、通常のホムンクルスではなく、キメラタイプの合成ホムンクルスだ。オークのような顔をしたホムンクルスや、上半身が女で、下半身が蜘蛛というタイプが数体置かれている。
今はガラスケースで眠っていて、起きない。主人の魔力と血液で契約するようだ。
「お客さん目が高いね。そいつは上層で発見されたアーティファクトだよ。合成ホムンクルスの技師はこの階層にはいなくてね。うちではそいつらを運よく仕入れられたんだ」
アーティファクトか。昔に作られた戦闘用のホムンクルスだろうな。
「いくらだ?」
「一体三千万リドルから売れるよ。今年中に売れなかったらオークションに出すつもりなんだが、買ってくれるのかい?」
ふーむ。昔アンドロイドタイプを連れて歩いたことがあるが、欠陥品ですぐに壊れたんだよな。迷宮探索に荷物持ちは重要なんだが、けがをしたり壊れたら面倒だしな。
俺はよくよくホムンクルスを見てみる。さきほど述べた種類のホムンクルス以外にも、アリのような形をした魔物型ホムンクルスや、人馬型のホムンクルスも置いてある。戦闘に適しているのはアラクネタイプのホムンクルスだが、俺が欲しいのは頑丈で地形に適応できる奴だ。
「子供型のホムンクルスは置いていないのか?」
「子供型はシーカーに人気でしてねぇ。今は在庫切れですよ」
考えることはみんな同じか。大人よりも力があり、狭い所にも入れる小さな体。やはり子供タイプのホムンクルスは品切れか。
「ただ、人間年齢が14歳程度のホムンクルスなら一体ありますよ。倉庫に置いてあります」
「14歳? そんな中途半端な体のホムンクルスが作られていたのか? 性別は?」
「性別はありません。成長とともに変化する人型のホムンクルスです」
なんだそれは。欠陥品じゃねぇか。ようするに、製造過程で失敗した、不良品じゃねぇか。なんでそんなのが売ってんだ。
「かなり特殊なホムンクルスでしてね。子宮と精巣があるのです」
「子宮?」
「人間の子供を産めるタイプのホムンクルスです」
なんだと?
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