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第二章
60 マンドラゴラ
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燃え盛る村を目の前にして、俺はおとなしくお留守番。
きっと誰かが助けを求めているだろうけど、俺はお留守番。
過保護にされるのはうれしいが、なんだかハブられている気もする。
村が燃えて泣き叫ぶ人々を助けるのは、勇者って決まってる。
こういう重要な場面では、歌舞伎役者のごとく敵の目の前に現れて、
「知らざあ、言って聞かせやしょう。神に転生させられし日本人、水瀬蒼。国を追われて流れに流れ、英雄の真似事して世界を回る。名もゆかりもねぇが、究極の水魔法使いたぁ、俺のことだぁ!」
などと威勢よく言って、バッタバッタと悪者を倒すのが決まりである。
歌舞伎だったら、かっこよく悪の親玉を倒すだろう。
なのに、俺は子供だからお留守番。
とてもヒーローって感じじゃない。やっぱり、俺は女に守られてハーレムやってた方がいいらしい。
仕方ないので、牛車から離れないようにして、近くの雑草を引っこ抜き始めた。なかなかに日差しがきつい。
「ア、アオさ……。えっと、アオ君? 何をしているんですか?」
プルウィアがアオ様ではなく、アオ君と言って、恥ずかしそうに声をかけてきた。
「プルウィアか。少しでもオルフェたちの餌にしようと思って、引っこ抜いてる」
「それはマンドラゴラの子供ですから、引っこ抜くのは辞めた方がいいですよ?」
え? これってマンドラゴラなの?
「地上に生えている草を食べるのは大丈夫ですけど、ひっこぬくと叫び声を上げますよ」
「さっきから引っこ抜いてるけど、別に何もないよ」
ちょっと大根みたいな根が付いてるけど、別に魔物って感じじゃない。ただの雑草だ。
「水が無いから仮死状態なんでしょう。生きてたら、叫び声を上げる奴もいます」
「そ、そうなのか。プルウィアは賢いな」
「えへへ。これは教会の司祭様に教わったんです」
やるなプルウィア。家庭的で、可愛いだけじゃないんだな。
などといいつつ、俺はマンドラゴラを引っこ抜く。仮死状態なら別に大丈夫だろう。小さな大根みたいな感じなので、食べたらうまいかもしれん。
「プルウィア。マンドラゴラって食べられるのか?」
「食べられます。教会では普通に食べてました。草は苦いですが、食べられます。調理次第ではおいしくできますが、灰汁抜きなどが大変です。根を食べる場合は下処理をきちんとしないと、死にます」
死、死ぬのか。毒抜きとかあるのかな?
「じゃ、じゃぁ育ててみるよ。もしかしたら簡単に増えるかもしれないし」
俺は土ごと持ち帰り、育ててみることにした。繁殖したらどうなるか楽しみだ。
「本気でマンドラゴラを育てるんですか?」
「今のところ無害そうだし、大丈夫だろ?」
「大きいマンドラゴラは、人を殺すほどの叫び声を上げるらしいですよ。やめた方がいいです」
「え? そうなの?」
俺はプルウィアに注意されるが、言うことを聞かない。話を聞かないダメな子だが、俺はやると言ったらやる。
「リザさんに怒られてもしりませんよ?」
「大丈夫だろ」
サラサラの土を木箱に入れて、生きてそうなマンドラゴラを集め、水を上げた。
「大きくなるんだぞ~」
見張りをしていたクーは、俺の行動を不思議そうに見ていたが、特に何も言わなかった。
燃える村を前にして、俺たちは平和だった。とてつもない格差社会だが、これが今の俺たちだ。
★★★
そうこうしていると、リザ達が帰って来た。
なにやら、大怪我をした子供を抱きかかえてる。
これは、忙しくなりそうだな。
俺は回復効果のある水魔法を発動させ、怪我をした子供に水を与えることにした。
きっと誰かが助けを求めているだろうけど、俺はお留守番。
過保護にされるのはうれしいが、なんだかハブられている気もする。
村が燃えて泣き叫ぶ人々を助けるのは、勇者って決まってる。
こういう重要な場面では、歌舞伎役者のごとく敵の目の前に現れて、
「知らざあ、言って聞かせやしょう。神に転生させられし日本人、水瀬蒼。国を追われて流れに流れ、英雄の真似事して世界を回る。名もゆかりもねぇが、究極の水魔法使いたぁ、俺のことだぁ!」
などと威勢よく言って、バッタバッタと悪者を倒すのが決まりである。
歌舞伎だったら、かっこよく悪の親玉を倒すだろう。
なのに、俺は子供だからお留守番。
とてもヒーローって感じじゃない。やっぱり、俺は女に守られてハーレムやってた方がいいらしい。
仕方ないので、牛車から離れないようにして、近くの雑草を引っこ抜き始めた。なかなかに日差しがきつい。
「ア、アオさ……。えっと、アオ君? 何をしているんですか?」
プルウィアがアオ様ではなく、アオ君と言って、恥ずかしそうに声をかけてきた。
「プルウィアか。少しでもオルフェたちの餌にしようと思って、引っこ抜いてる」
「それはマンドラゴラの子供ですから、引っこ抜くのは辞めた方がいいですよ?」
え? これってマンドラゴラなの?
「地上に生えている草を食べるのは大丈夫ですけど、ひっこぬくと叫び声を上げますよ」
「さっきから引っこ抜いてるけど、別に何もないよ」
ちょっと大根みたいな根が付いてるけど、別に魔物って感じじゃない。ただの雑草だ。
「水が無いから仮死状態なんでしょう。生きてたら、叫び声を上げる奴もいます」
「そ、そうなのか。プルウィアは賢いな」
「えへへ。これは教会の司祭様に教わったんです」
やるなプルウィア。家庭的で、可愛いだけじゃないんだな。
などといいつつ、俺はマンドラゴラを引っこ抜く。仮死状態なら別に大丈夫だろう。小さな大根みたいな感じなので、食べたらうまいかもしれん。
「プルウィア。マンドラゴラって食べられるのか?」
「食べられます。教会では普通に食べてました。草は苦いですが、食べられます。調理次第ではおいしくできますが、灰汁抜きなどが大変です。根を食べる場合は下処理をきちんとしないと、死にます」
死、死ぬのか。毒抜きとかあるのかな?
「じゃ、じゃぁ育ててみるよ。もしかしたら簡単に増えるかもしれないし」
俺は土ごと持ち帰り、育ててみることにした。繁殖したらどうなるか楽しみだ。
「本気でマンドラゴラを育てるんですか?」
「今のところ無害そうだし、大丈夫だろ?」
「大きいマンドラゴラは、人を殺すほどの叫び声を上げるらしいですよ。やめた方がいいです」
「え? そうなの?」
俺はプルウィアに注意されるが、言うことを聞かない。話を聞かないダメな子だが、俺はやると言ったらやる。
「リザさんに怒られてもしりませんよ?」
「大丈夫だろ」
サラサラの土を木箱に入れて、生きてそうなマンドラゴラを集め、水を上げた。
「大きくなるんだぞ~」
見張りをしていたクーは、俺の行動を不思議そうに見ていたが、特に何も言わなかった。
燃える村を前にして、俺たちは平和だった。とてつもない格差社会だが、これが今の俺たちだ。
★★★
そうこうしていると、リザ達が帰って来た。
なにやら、大怪我をした子供を抱きかかえてる。
これは、忙しくなりそうだな。
俺は回復効果のある水魔法を発動させ、怪我をした子供に水を与えることにした。
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