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12 グレン、暁に消える
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ロバと大根を連れて、グレンというオークの戦士についていく。ララと仲が良さそうに話しているので、知り合いで間違いない。これから行く魔族の集落の知り合いのようだ。
母とグレンの会話を少し聞いて思ったが、どうやら魔族というのは知性ある魔物のことを指すようだ。一応純血の悪魔(魔族)はいるようだが、それらをひっくるめて魔族というみたいだった。
オークは魔族というより亜人という部類に入るそうだが、魔族扱いでも問題ないとのことだ。
私は母に抱かれているのだが、その母をオークのグレンが抱っこしている。お姫様抱っこだ。これから抱く大切な女だからか、母は宝物のように扱われている。
「グレン。あんまり激しくするなよ。彼女は畜舎から逃げきたばかりだそうだ。体力が普通よりもない」
「そうか。ならば俺がうまいものをたくさん食わせてやろう。こう見えても料理は得意だ」
ぶひん。
ドヤ顔で鼻を鳴らす。フゴフゴといつも鼻を引くつかせており、私の匂いもしきりに嗅いで来る。赤ん坊の匂いを嗅いでもいい匂いなどしないのだが、彼はニコニコしている。
「子供は可愛いなぁ。俺も子供が欲しいなぁ」
「あら? グレンさんは子供がいないの?」
「いないな。知っているか分からないが、ここら辺のエルフは全部人間の奴隷だ。どこかにエルフだけの国があるようなのだが、未だに見つけられん」
「エルフの国なんてまだあるの?」
「あぁ。あるらしい。オークにとって、エルフは最高の伴侶になるから、美人なエルフは宝物だ」
「え? どういうこと?」
私も、グレンの言っていることがよくわからない。
「知らんのか? オークは男しか生まれない上に、人間との間には子供ができづらいのだ。一番生まれやすいのはゴブリンのメスとだが、奴らは女と思えん。見た目は、化け物だ。オークはな、エルフと番になるのが一番良いのだ。強い子供が生まれやすい」
「へぇ。そうだったの。だから昔のご主人様は私を大切にしてくれたのね」
母の昔の主人はオークだった。その時代は母も裕福な暮らしをしていたのだろう。
「この地方ではぐれエルフは貴重だ。俺はララに子供を産んでくれといつも頼んでいるのだが、断られていてな」
「当たり前だ! オークは嫌いではないが、性の対象にはならん!」
ララは同族が良いらしい。正常な判断だ。
「そうなのね。なら、一杯ご奉仕しなきゃね!」
母は片目を閉じてウインクをする。子供の前でそれはやめてほしい。
「ふははは! 頼むぞエレノア!」
◆◆◆
無事に魔族の集落に到着し、グレンが手配してくれた通行証で、村に入ることができた。
ロバとエレファントタートルの乾燥肉も、きっちりと売ることに成功した。数か月は食うに困らない金ができた。ララにも二割ほど手間賃を与え、お互いWIN-WINの関係だ。
「これで借金を返せる。残りはグレンの借金だけだな」
「ララは何人に借金していたの?」
「最高六人だ。畜舎から逃げてきた時は金もなくて、魔族の集落で何も買えなかったんだ。だから金を借りて生計を立てていたんだ」
「そうだったの。苦労していたのね」
「残りはグレンだが、奴には相当借金しているからな。どうやって返そうか」
「ララも体を売れば? 一緒にエッチなことすればグレンも喜ぶんじゃない?」
「無理だ! エレノアには悪いが、私は遠慮する」
「そう。残念ね」
エレノアはぺろりと舌なめずり。何かエレノアから強力な魔力が立ち上っている。
その後、集落内にあるグレンの掘っ立て小屋に赴き、一夜を過ごすことになった。私とララはその日に限り、宿をとって過ごすことになった。大根たちには念のため、母の見張りに着けた。何かあったら知らせるようにだ。大根たちはビシッと敬礼をして、グレンの後をついていった。
「それじゃぁ、明日会いましょう」
母はニコニコして私とララを宿に送り出す。
「グハハハ。ついに俺もエルフとやる時が来たか。姫騎士ではないのが残念だが、まぁいい。くっ殺せというセリフを聞きながらセックスするのが夢だったのだが、贅沢は言っていられんな! はははは!」
そうして母はグレンのもとで一夜を明かし、夜が明けた。
◆◆◆
朝。
グレンはベッドの上で白目をむいて倒れていた。
まるでミイラのようにげっそりとやせ細り、雄々しくそそり立っていた息子は見る影もない。しょんぼりとお辞儀をして、勃起する気配もない。彼は、エレノアの性欲を甘く見ていた。
エレノアは性欲の権化だった。
「こ、この女の権能は、精力吸引と、自己回復じゃないか……。なぜこんなエルフがここにいるんだ。誰だ逃がした奴は。このエルフは、サキュバスと同じ、いやそれ以上……? や、やられた……」
生まれてからずっと奴隷で、病気や怪我もしたことのないエレノア。彼女が奴隷で100年も生きられて、常に健康だったのは、彼女の「権能」にあった。美人なエレノアは、毎日のように夜伽をさせられことがあるが、病気にならなかった。なぜなら彼女の魔法は、ライフドレイン(生命力吸収)だったのだから。
「ふはー。いい運動だったわ。ありがとうグレンさん。私、元気いっぱいよ」
「…………」
グレンはもはや言葉も出なかった。真っ白に燃え尽きていた。
◆◆◆
大根たちは、燃え尽きたグレンを見てバンザイをしていた。グレンの家にあった食料は、大根たちにすべて食いつくされ、グレンの食料は何もなくなった。
『ウマ! ウマ!』
母とグレンの会話を少し聞いて思ったが、どうやら魔族というのは知性ある魔物のことを指すようだ。一応純血の悪魔(魔族)はいるようだが、それらをひっくるめて魔族というみたいだった。
オークは魔族というより亜人という部類に入るそうだが、魔族扱いでも問題ないとのことだ。
私は母に抱かれているのだが、その母をオークのグレンが抱っこしている。お姫様抱っこだ。これから抱く大切な女だからか、母は宝物のように扱われている。
「グレン。あんまり激しくするなよ。彼女は畜舎から逃げきたばかりだそうだ。体力が普通よりもない」
「そうか。ならば俺がうまいものをたくさん食わせてやろう。こう見えても料理は得意だ」
ぶひん。
ドヤ顔で鼻を鳴らす。フゴフゴといつも鼻を引くつかせており、私の匂いもしきりに嗅いで来る。赤ん坊の匂いを嗅いでもいい匂いなどしないのだが、彼はニコニコしている。
「子供は可愛いなぁ。俺も子供が欲しいなぁ」
「あら? グレンさんは子供がいないの?」
「いないな。知っているか分からないが、ここら辺のエルフは全部人間の奴隷だ。どこかにエルフだけの国があるようなのだが、未だに見つけられん」
「エルフの国なんてまだあるの?」
「あぁ。あるらしい。オークにとって、エルフは最高の伴侶になるから、美人なエルフは宝物だ」
「え? どういうこと?」
私も、グレンの言っていることがよくわからない。
「知らんのか? オークは男しか生まれない上に、人間との間には子供ができづらいのだ。一番生まれやすいのはゴブリンのメスとだが、奴らは女と思えん。見た目は、化け物だ。オークはな、エルフと番になるのが一番良いのだ。強い子供が生まれやすい」
「へぇ。そうだったの。だから昔のご主人様は私を大切にしてくれたのね」
母の昔の主人はオークだった。その時代は母も裕福な暮らしをしていたのだろう。
「この地方ではぐれエルフは貴重だ。俺はララに子供を産んでくれといつも頼んでいるのだが、断られていてな」
「当たり前だ! オークは嫌いではないが、性の対象にはならん!」
ララは同族が良いらしい。正常な判断だ。
「そうなのね。なら、一杯ご奉仕しなきゃね!」
母は片目を閉じてウインクをする。子供の前でそれはやめてほしい。
「ふははは! 頼むぞエレノア!」
◆◆◆
無事に魔族の集落に到着し、グレンが手配してくれた通行証で、村に入ることができた。
ロバとエレファントタートルの乾燥肉も、きっちりと売ることに成功した。数か月は食うに困らない金ができた。ララにも二割ほど手間賃を与え、お互いWIN-WINの関係だ。
「これで借金を返せる。残りはグレンの借金だけだな」
「ララは何人に借金していたの?」
「最高六人だ。畜舎から逃げてきた時は金もなくて、魔族の集落で何も買えなかったんだ。だから金を借りて生計を立てていたんだ」
「そうだったの。苦労していたのね」
「残りはグレンだが、奴には相当借金しているからな。どうやって返そうか」
「ララも体を売れば? 一緒にエッチなことすればグレンも喜ぶんじゃない?」
「無理だ! エレノアには悪いが、私は遠慮する」
「そう。残念ね」
エレノアはぺろりと舌なめずり。何かエレノアから強力な魔力が立ち上っている。
その後、集落内にあるグレンの掘っ立て小屋に赴き、一夜を過ごすことになった。私とララはその日に限り、宿をとって過ごすことになった。大根たちには念のため、母の見張りに着けた。何かあったら知らせるようにだ。大根たちはビシッと敬礼をして、グレンの後をついていった。
「それじゃぁ、明日会いましょう」
母はニコニコして私とララを宿に送り出す。
「グハハハ。ついに俺もエルフとやる時が来たか。姫騎士ではないのが残念だが、まぁいい。くっ殺せというセリフを聞きながらセックスするのが夢だったのだが、贅沢は言っていられんな! はははは!」
そうして母はグレンのもとで一夜を明かし、夜が明けた。
◆◆◆
朝。
グレンはベッドの上で白目をむいて倒れていた。
まるでミイラのようにげっそりとやせ細り、雄々しくそそり立っていた息子は見る影もない。しょんぼりとお辞儀をして、勃起する気配もない。彼は、エレノアの性欲を甘く見ていた。
エレノアは性欲の権化だった。
「こ、この女の権能は、精力吸引と、自己回復じゃないか……。なぜこんなエルフがここにいるんだ。誰だ逃がした奴は。このエルフは、サキュバスと同じ、いやそれ以上……? や、やられた……」
生まれてからずっと奴隷で、病気や怪我もしたことのないエレノア。彼女が奴隷で100年も生きられて、常に健康だったのは、彼女の「権能」にあった。美人なエレノアは、毎日のように夜伽をさせられことがあるが、病気にならなかった。なぜなら彼女の魔法は、ライフドレイン(生命力吸収)だったのだから。
「ふはー。いい運動だったわ。ありがとうグレンさん。私、元気いっぱいよ」
「…………」
グレンはもはや言葉も出なかった。真っ白に燃え尽きていた。
◆◆◆
大根たちは、燃え尽きたグレンを見てバンザイをしていた。グレンの家にあった食料は、大根たちにすべて食いつくされ、グレンの食料は何もなくなった。
『ウマ! ウマ!』
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