5 / 5
6 マリア様との迷宮探索1
しおりを挟む
俺はマリアを連れて、久しぶりにハンター協会に来ていた。理由は、マリアの命令だ。
マリアの宝箱が置いてあった場所に、もう一度連れて行けというのだ。片腕が無いので無理だと抗議したが、マリアの魔法があれば怪我一つ負わず、時間もかけずに到達可能だという。場所は迷宮の最奥だが、マリアの力があれば簡単らしい。
「マリア様。これからギルドの建物に入るから、静かにしてくれよ」
「む。ギルドとやらについたのか」
「あぁついた。今から建物に入る。だからこれ以上喋らないでくれ」
俺は肩に下げたバッグに向かって、こそこそ話す。マリアは、俺の肩にかけているバッグの中に潜んでいる。
「分かった。貴様とはまだ念話回線が開いておらんから、脳内での会話が出来ん。仕方ないか」
なに? 念話? そんな古代の魔法が使えるのか? まじかよ。
俺は念話と言う魔法に半信半疑だったが、それ以上喋ると周りに怪しまれるので、ギルドに入る。扉は常に開け放たれているので、誰でも出入り可能だ。俺は揺れ無いようにバッグを抱えてギルド内に静かに入る。
入ってみると、相変わらず活気がある。いろんな種族の奴らが、仕事をもとめてここに来ているからだ。大体が迷宮で一山当てるためにいる命知らずだが、堅実に護衛依頼をこなす騎士志望のハンターもいる。
俺に知り合いは多くないが、一応ベテランのハンターだ。いろんな奴らに顔は割れている。今は話しかけられたくないので、フードを深くかぶってさっさと受付に向かう。
受け付けは鉄格子が敷かれていて、職員がハンターに襲われないようになっている。俺はその鉄格子越しに、受付の女に声をかけた。
「キャス。久しぶりだな。迷宮に入る通行証をくれ」
「あっ。レオンじゃないの! 久しぶり! 元気そうでよかったわ」
「まぁ、なんとかな」
「でも、どうしたの? 急にギルドに来なくなったし、ハンター引退したって噂になってるわよ」
キャスは俺の知り合いだ。顔見知り程度の間柄だが、ギルドに来なくなった俺を心配してくれていたようだ。
「いや、大丈夫じゃないな。ギルドの奴らには言ってなかったが、ほら。右腕がないんだ」
俺はひらひらした袖を見せる。服の中にあるべき右腕が無い。
「えっ。嘘でしょ。何かの魔術? あたしを騙してんの?」
「いや、本当にないんだ。迷宮で失った」
俺が真顔で言うと、目の前に居たキャスは声を失う。キャスは俺より年上のお姉さんだが、相当驚いているようだ。
「このギルドで腕利きのあんたが、右腕を失った? 嘘でしょ……」
「キャス。世間話は後にしよう。後ろに他のハンターもつかえてるし、はやく迷宮の通行証をくれ」
「そんな、冗談でしょ? 右腕が無いのに迷宮に入るって、あんた死にたいの? 護衛も雇ってないみたいだし、せめて義手くらいつけなさいよ」
キャスは当然のことを言うが、俺がここに来たのはマリアの命令だ。一人で迷宮探索をしなければならない。
「いいから、通行証を出してくれ」
「あんたって本当に命知らずね。とりあえず通行証は出すけど、死んだら許さないわよ」
「死なないよ」
俺はそう言って、金を払って通行証をもらう。俺の後ろでいかついハンターが待っていたので、面倒が起る前にさっさと受付から離れる。キャスは美人で器量もいいから、ハンターたちには人気があるのだ。
「さて。面倒が起きる前にさっさと迷宮に入るか」
俺は迷宮の通行証を職員に見せ、昇降機に乗る。この昇降機は迷宮に入る直行便で、地下3000メートル以上まで伸びている。俺は昇降機で行ける限界まで降りて、そこから迷宮探索を始める。
マリアの宝箱が安置されていたのは、さらにそこから1000メートル以上、下だからだ。
「なにもなけりゃいいけどな」
俺はそう思って、マリアの入ったバッグを抱えた。
マリアの宝箱が置いてあった場所に、もう一度連れて行けというのだ。片腕が無いので無理だと抗議したが、マリアの魔法があれば怪我一つ負わず、時間もかけずに到達可能だという。場所は迷宮の最奥だが、マリアの力があれば簡単らしい。
「マリア様。これからギルドの建物に入るから、静かにしてくれよ」
「む。ギルドとやらについたのか」
「あぁついた。今から建物に入る。だからこれ以上喋らないでくれ」
俺は肩に下げたバッグに向かって、こそこそ話す。マリアは、俺の肩にかけているバッグの中に潜んでいる。
「分かった。貴様とはまだ念話回線が開いておらんから、脳内での会話が出来ん。仕方ないか」
なに? 念話? そんな古代の魔法が使えるのか? まじかよ。
俺は念話と言う魔法に半信半疑だったが、それ以上喋ると周りに怪しまれるので、ギルドに入る。扉は常に開け放たれているので、誰でも出入り可能だ。俺は揺れ無いようにバッグを抱えてギルド内に静かに入る。
入ってみると、相変わらず活気がある。いろんな種族の奴らが、仕事をもとめてここに来ているからだ。大体が迷宮で一山当てるためにいる命知らずだが、堅実に護衛依頼をこなす騎士志望のハンターもいる。
俺に知り合いは多くないが、一応ベテランのハンターだ。いろんな奴らに顔は割れている。今は話しかけられたくないので、フードを深くかぶってさっさと受付に向かう。
受け付けは鉄格子が敷かれていて、職員がハンターに襲われないようになっている。俺はその鉄格子越しに、受付の女に声をかけた。
「キャス。久しぶりだな。迷宮に入る通行証をくれ」
「あっ。レオンじゃないの! 久しぶり! 元気そうでよかったわ」
「まぁ、なんとかな」
「でも、どうしたの? 急にギルドに来なくなったし、ハンター引退したって噂になってるわよ」
キャスは俺の知り合いだ。顔見知り程度の間柄だが、ギルドに来なくなった俺を心配してくれていたようだ。
「いや、大丈夫じゃないな。ギルドの奴らには言ってなかったが、ほら。右腕がないんだ」
俺はひらひらした袖を見せる。服の中にあるべき右腕が無い。
「えっ。嘘でしょ。何かの魔術? あたしを騙してんの?」
「いや、本当にないんだ。迷宮で失った」
俺が真顔で言うと、目の前に居たキャスは声を失う。キャスは俺より年上のお姉さんだが、相当驚いているようだ。
「このギルドで腕利きのあんたが、右腕を失った? 嘘でしょ……」
「キャス。世間話は後にしよう。後ろに他のハンターもつかえてるし、はやく迷宮の通行証をくれ」
「そんな、冗談でしょ? 右腕が無いのに迷宮に入るって、あんた死にたいの? 護衛も雇ってないみたいだし、せめて義手くらいつけなさいよ」
キャスは当然のことを言うが、俺がここに来たのはマリアの命令だ。一人で迷宮探索をしなければならない。
「いいから、通行証を出してくれ」
「あんたって本当に命知らずね。とりあえず通行証は出すけど、死んだら許さないわよ」
「死なないよ」
俺はそう言って、金を払って通行証をもらう。俺の後ろでいかついハンターが待っていたので、面倒が起る前にさっさと受付から離れる。キャスは美人で器量もいいから、ハンターたちには人気があるのだ。
「さて。面倒が起きる前にさっさと迷宮に入るか」
俺は迷宮の通行証を職員に見せ、昇降機に乗る。この昇降機は迷宮に入る直行便で、地下3000メートル以上まで伸びている。俺は昇降機で行ける限界まで降りて、そこから迷宮探索を始める。
マリアの宝箱が安置されていたのは、さらにそこから1000メートル以上、下だからだ。
「なにもなけりゃいいけどな」
俺はそう思って、マリアの入ったバッグを抱えた。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる