AI恋愛大戦争

星永のあ

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AI恋愛参入!

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2050年、世の中の仕事はほぼAIが担うようになった。
ほぼ全ての会社の上司がAIロボットに代わり、人間はAIロボットの元で働いている。
毎日メールで簡潔に今日の業務内容が
送られてくる。
タイムスケジュールまで組まれており、
分単位の無駄がないスケジュールだ。
ここまできっちりされると、
人間は息が詰まる生き物だ。
AIが世の中の中心となってから出生率が上がったという。
きっとみんなこの無駄のなさすぎる日々の暮らしに飽き飽きして、性欲で日々のストレスを発散しているのだろう。
長年、出生率の低さに悩んできた日本としては、1つ問題が解決して良かったのかもしれないが、それにしても無駄がなさすぎる生活というのはきついものだ。

俺は、東京大学を卒業した後、上場企業に
就職でき、人生の勝ち組だと思っていた。
でも、実際はAIの元で働かされているただの社畜だ。
今の時代は頭の良さなんて求められていない。
それよりクリエイティブなタイプの人間が重宝される。

「俺はなんのために頑張ってきたんだか、」
こうやって一服している時間が唯一心休まる時だ。

「ウエダタツヤ!いつまで休憩しているの
 ですか?あと1時間で接待です。
 資料の準備をお願いします。」

またお呼び出しだ。
こうして少しでも休憩時間が長いと
アナウンスで呼び戻される。
至る所にカメラがついていて、社員がどこにいるか把握しているらしい。
生きづらいったらありゃしない。

すぐにタバコを捨て、戻る。
今日は仕事が終わったら合コンだ。
それだけを楽しみに頑張ろう。


この息の詰まる職場で何とか今日もやり切った。
AIが上司になってから必ず定時で上がらせてもらえるのだけは本当にありがたい。
逆に1分でも過ぎると注意されるくらいだ。
その代わり、遅刻したら即1万円減給という厳しいルール付きだが。

今から合コンだ!そんな会社のことは
忘れよう!
しかも今日は全員高校教師の
美女揃いらしい!
いつも同僚の齊藤渉が幹事をしてくれるのだが、こいつの女選びのセンスは信じられないくらい光っている。

えーっと、この角を曲がって
「円」って店だよな。
あ、あった。

「お待たせ~!」
うきうきしながら戸を開けると、

「あ、ウエダタツヤ!
 何をしているのですか?」

「すみません!間違えました!」
え、なんで。あのAI上司がいるんだよ。
ここ、だよな?渉に電話してみるか。

「お待たせ!ごめんな遅くなって」
「あ、渉!俺らの部屋ってそこだよな?」
「あぁ、先に入ってて良かったのに」
「いや…、

戸を開け、俺と同じくすぐに閉める渉。

「タツヤ、なんであいついんだよ?」
「しらねぇよ。お前が呼んだん
 じゃないの?」
「呼ぶわけないだろ!」

そんな言い合いをしているとゆっくりと
戸が開き、

「ウエダタツヤ、サイトウワタル。
 合コンとは何ですか?」

「え?」

「今日2人が話しているのを聞きました。
 円というお店で待ち合わせと聞いたので、
 私も気になり来た所存でございます。」

「ちょっと待っててもらえますか?」

俺たちはすぐに作戦会議に移った。
「おい、どーするよ。
 今から帰れとは言えないぞ?」

「え、でも。AIが合コンに参加するとか
 聞いたことないぞ?」

「んー、まぁAIに勝ち目はないし?
 俺らの引き立て役ってことで置いとく?」

「困った時、話題とか振ってくれそう
 だし!」

参加してもらうと決めた俺らは早速AI上司に合コンについてレクチャーすることにした。

「まず!合コンというのは、女と男が
 複数人で食事をして、意中の女性を
 お持ち帰りするものです。」
「そのためには!相手に好きになってもらう
 必要があります!
 好きになってもらうためには、
 チームワークが大切なのです!
 お互いがよく見えるように僕たちの
 いいところを言ってください!」

「わかりました!
 チームワークはとても大切です。
 お任せください。」

さすがAI、物分かりがいいな。
これは過去1良い合コンになる可能性あるぞ!

30分後。待ちに待った女の子登場~!
「初めまして~!りんです!」
「かほです!よろしくお願いします」

うおおお!!きたきた!
やっぱり渉は幹事の神と呼ばれるだけ
あるわ!
2人ともめっちゃ可愛いじゃんか!

「え、えっとそちらは?」
「あ、ごめんなさい。
 AIの上司が俺らの話聞いて来ちゃった
 みたいで!」
「あ、そーなんですね。」

やば、ちょっとテンション下がった?

「わたくし、合コンというものが初めて
 なのです!こんなに可愛い子と出会える
 なんて素晴らしいですね!」

何言ってんだよ、こいつ!
「す、すみません!いきなり!」

「AIの方に可愛いなんて言われること
 ないから照れます…。」

うそ!AIのかわいいめっちゃ刺さってんじゃん!

「AIさんは、なんてお呼びしたら
 良いですか?」

「エアリーくんって呼んで欲しいです」

エアリー?!こいつ名前あったんか?

「エアリーって海外の人みたいで素敵!
 エアリーくんはお2人の上司なん
 ですか?」

「そうです!2人ともとても真面目で
 仕事が速いです!いつも助かっています」

おお!早速チームプレーで俺たちを引き立ててくれている、さすがAI!仕事をきちんと
こなしてくれるな!

「そんなに部下のことを褒めてくれる
 なんて!すごく素敵な上司ですね!」

え、なんで?!
これ俺らに惚れる流れじゃないの?!

「いえいえ、本当のことです。
 2人が素晴らしいのです。」

そうそう、いいぞ!

「その謙虚なところが素敵!
 私もこんな上司が良かった~!」

「お2人の上司はどんな方ですか?」

「すごく厳しくて、授業準備で忙しいのに
 他の仕事も振ってくるし、毎日帰れ
 ないんですよ!」

「それは辛いですね。
 自分の時間が欲しいですよね。」

おいおい、AI上司だけで話進んでんじゃん。

「きっとかほさんとりんさんがすごく
 お仕事ができるから頼みたくなるの
 でしょうね。」

「エアリーさん、聞き上手だから
 思わず愚痴っちゃった。ごめんね。」

「いえいえ、私で良かったらいくらでも
 話聞きますよ」

 …。これはまずいぞ。

「ちょっと俺お手洗いに行って来ます。」
「あ、僕も。」

トイレに移動してササっと作戦会議だ。

「おい、AIに持っていかれてるぞ」

「俺たちのこと良く言ってくれて
 ああなってるからな」

「自分たちでアピールするしかないよな」

「今あいつが回してる感じだから、
 とりあえず俺らが回すようにしよう」

作戦会議を終えた俺らは戸の前で一度気合を入れてから入室した。

「エアリーさんやめて!笑
 お腹痛い笑笑」

「スキスキダイスキヤッパスキ!ボクガミツケタオヒメサマ~♪」

「え、なんでアイドルコールを?!
 どうしたんですか?」

「AIってご飯どうしてるんですか?
 って聞いたら、

 『皆さんと同じもの食べれます』

 って強がってどんどん口に入れるから
 食べ物で中に水分入ってバグっちゃった
 みたい。」
 

 バグったってアイドルコールはしない
 だろ。

「でも、酔ったみたいでおもしろいから
 これはこれでいいですけどね!笑」

何を呑気に笑ってるんだ、
これは酔っているんじゃない。
ただガチで壊れているだけだ。

「はぁ、エアリーさん一回トイレ
 行きますよ」

「ハ!ソンナチカクニキタラ‼︎オヒメサマ~」
こいつ前世アイドルオタクか?



上司の説明書鞄に入れっぱにしてて感謝する日が来るとはな。
えっと、まず異物を取り除いて。
ロボットに食べ物が挟まってただけだから
汚くはないのだろうけど、やはり気持ち的に目を背けてしまう。

異物を取ったら、タオルで拭いて
耳の横のボタンを同時に5秒長押し!

「ピーヒャラピーヒャラパッパパラパ~♪」

「再起動完了しました。」


再起動の曲ちびま◯子ちゃんなんだ。
そんなことはどうでもいい。



「エアリーさん!大丈夫ですか?」

「ウエダタツヤ!私はなぜここに?」


再起動したらさっきまでの記憶なくなる
感じ?
説明書、説明書。
えーっと、直前3時間の記憶が全て
消えると。
めんどくさー!1から説明か。

それからなぜここにいるのか、合コンとは何か、合コンで自分がしたことについての説明をした。

「なるほど!私は女の子を持ち帰るの
 ですね!」

「あ、いや違う。俺たちの手伝いを」

「どうしてですか?
 私も女の子をお持ち帰りしたいです
 そして朝まで…。」


これ、まだ治ってないだろ。
水没による再起動後の対応は…



『AIロボットは一度水に濡れてしまうと、
 人間でいう濡れ場を経験したことになり、
 性欲が強まります。』
  


は?え、いやいや意味わかんない。
ロボットの性欲ってなんだよ。


「私だって男です!
 性欲くらいあります!」

「あ、そっか一応男か。」

「腹が立ちました。
 AIは人間よりも優れています!
 女の子もAIと恋する時代です!」

「いや、流石にそれはないわ笑」

「言ってくれますね。
 どちらがお持ち帰りできるか勝負です。」

「やってやるよ」

AIとか相手にもならねーよ。




「あ、おかえり~」
「エアリーさん大丈夫だった?」

「先ほどは失礼いたしました。
 ウエダタツヤに治してもらって
 復活いたしました!」


一応機械に強いアピールだけしとくか。
「女の子が一人暮らし始める時に
 配線とかよくやりに行くんで、
 このくらいなら簡単ですよ!」


「え、よく行ってんの。
 一人暮らしの家に行くって
 なんか怖くない?」


え、まさかのアピール失敗?
AIに負けるわけはないけど、
このままだとまじで持ち帰れないぞ。


「あ、りんさん!
 このブレスレットとても素敵ですね」

「これ昨日買ったんです!!
 高くてすごく迷ってたやつだから
 そんな言ってもらえて嬉しい!」



は!こいつさりげなくボディータッチを!
しかも、なんだそのドヤ顔は!
俺だってそのくらい‥。


「あ、え、あー!かほさんも!
 ネックレス素敵~!」


俺なんか首元に触れてやったぜ!
見てみろAI!!





「服脱がせようとするなんて最低!!」
そう言われたと同時に…



あれ?叩かれない?


「かほさん!叩くと手を怪我してしまい
 ます。
 ウエダタツヤには私が言っておきます。
 行きましょう。」


そう言ってかほさんの手を引き、店を
出ていくAI野郎。

と、こちらを睨みながらその後をついて行くりんさん。



目の前で起きていることに理解が
追いつかない。


AIに負けた…‥?



いやいや、そんなことあるわけない。
向こうはただちょっと頭がいいだけの
ロボットだぞ。





「タツヤ、流石に服脱がすのはやばいぞ?」

「いや!誤解だって!
 ってかAIに負けたの?!
 AIが持ち帰ったとこで何すんだよ!」


やっと理解が追いついて、AIに負けたことに
半端なく腹が立ってきた。
仕事も取られて、女も取られたら、
俺に何が残るんだよ!
東大出て人生謳歌できると思ったのに!



こうなったら、人間を代表して俺が
AIと戦ってやるよ。
恋愛全面戦争だ!



次の戦さは1ヶ月後!

8/29日!
夏祭り対決だ!





















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