不幸な少女の”日常”探し

〚第一章〛〜祈り村編〜

〚1話〛「違う世界へ」

　「奥様…！無事に産まれましたよ…！」
　「そう…！良かったわ…！」
　
　その声とともに僕は目を覚ます。
　病室まで届いているのか母親らしき人の喜ぶ声が聞こえてくる。
　でも赤ちゃんを産むところって病院だったっけ…？それに病室から聞こえるほど近くでお産なんかするのかな。そこら辺は僕はよく知らないので意識をそらした。
　何となく僕は生き残ってしまったのかという不安が込み上げてくる。そしてこれからのことが頭に自然に浮かんでくる。
　
　治療代･入院代、それに父親に知られたらどんなことをされるか…。
　色々頭に浮かんでくる。
　轢いた相手に慰謝料を請求すれば少しは…、請求何て出来るのかな、それに相手が逃げちゃったりしてたら…弁護士なんかが出てきちゃったら…こっちには父親と僕しかいない…。もちろん父親が協力してくれる訳がないし。僕がしっかり勉強すれば…時間がかかりすぎるかな。…借金かな、かりれるかなぁ…。
　
　諦めの境地に入りかけていた時、不意に体を浮遊感が包んだ。思わず目を開けるが瞼が重くてほんの少ししか開かなかったがなんとか見ることができたが、視界がボヤけて色しか見えなかった。
　白と視界の端、下の方に赤。肌色に多分黒い髪。多分二人いて僕を抱き抱えてると思う。色々疑問が浮かんでくる中、少し心配そうな声が聞こえた。
　
　「この子…泣かないわね…、だ、大丈夫かしら…！」
　「お、奥様、息もしてますし大丈夫ですよ…！すこし落ち着きましょ…！それにほら、目を開けてますよ。きっと奥様を見てるんですよ」
　
　
　
　「そ、そうね…私が落ち着かないとね、……ふふっ、本当に私を見ているわね、産まれてきてくれてありがとう、私があなたのお母さんよ」
　
　その言葉に思わず泣き出してしまった。

　きっと僕は…生まれ変わったんだと理解した。




　
　僕は…まだ頑張れる。
　
　
　
　「あら…この子ったら、やっと泣いたわね…！、まったく心配させて」
　「良かったですね…！奥様…！」
　
　
　こうして僕は異世界に転生した。