不幸な少女の”日常”探し

〚第一章〛〜祈り村編〜

〚9話〛「霊さんⅠ」

　最初は笑わない赤子じゃなぁ…程度に思っていた。
　
　わけも分からず幽霊で転生してから1年が過ぎていた、男達が狩に出掛けたときや鹿や猪を狩ってきたときは凄い世界に転生したなぁ…と思っていたが今はもう慣れた光景だ。
　みんな表情豊かで、日本にいた時よりも温かい気持ちになった。
　だからなのかもしれない、産まれて来た赤子は成長していっても一回も笑ったことが無かった。それがとても目立っていた。
　
　ある夜、トイレに起きたのか起きると歩き出したが急に止まり、こちらを見ていたのだ。この一年、村人は疎か動物すら気付いてくれない寂しさが溜まっていたのか、調子に乗って人魂に化けてしまった。
　すぐ、しまった、と思ってどうやって弁解しようか考えていたら、少女はトイレに行ってしまった。
　
　それからもついつい化けてしまったが（ぜ、全然楽しくなってしまったとかではなく）ちょっと反応が薄いので、トイレから這いでる貞○に化けてみたが、これは驚いていた。
　
　そして少女が寝付けず、外に出た日、調子に乗りすぎて、動けないレベルまで分裂してしまい、最後の一本が地面に落ちる。
　
　そこを助けてもらい話すと少女も転生者と言う事が分かった。とっても嬉しかった、異世界で独りは寂しいものである。
　
　
　
　
　いつものように少女にストーキ‥憑いていると、またいつものように、紅葉に捕まっていく。
　
　儂も思うが紅葉は朝起きるのが早過ぎるぞ…。
　
　今日はかくれんぼをするそうで、詩亜瑠が鬼になった。
　数えるのが妙に長いなぁと思っていたら数え間違えが多いだけだった、本当に多い。
　
　紅葉の合図で結局始まったが、思ったよりも見つからず、少し儂も焦っていく。
　
　
　そして井戸で紅葉を見つけた時、自分は何も出来ない事を呪いながらも詩亜瑠をしっかりと見守っていた。
　紅葉の親に説明する詩亜瑠、全然理解してくれない母親を見て、儂は苛立っていた。
　
　親に頼ることを諦めた詩亜瑠は全速力で井戸に走っていた。そして井戸に入っていった詩亜瑠を見て、儂はどうする事もできない事に胸が締め付けられた。
　見守ることしかできなかった自分が悔しかったのだ。
　
　詩亜瑠は文字どうり死力を尽して紅葉を引き上げた。
　
　荒い岩を紅葉と自分の体重で這い上がってきたのだ、ゆっくりと、バランスの悪い体勢で気絶している紅葉にとても注意を払いながら、普通に考えて気絶している5歳児を6歳時の女の子が井戸の中から這い出てこようなんて無理に近い、更には荒い岩に二人分の体重が掛かって体中血まみれになりながら傷に岩が抉られようとも、少ない力で気絶で体重が不安定な為、ゆっくりとしか上がれない中、詩亜瑠は上がってきた。
　儂は思わずうるっと来たが紅葉を井戸の外に出すと、限界を越え悲鳴を上げていた腕に足が痙攣していた、詩亜瑠は出ようとしたが、痙攣した足が岩から離れ、井戸の中に落ちていった。
　一瞬頭が真っ白になり何が起こっているのか理解できなかったが。直ぐに井戸を覗き込むと。
　
　詩亜瑠は事切れたように動かなく、腕や足、いつの間に出来ていたのか背中や頭から井戸水を真っ赤に染め上げていく。
　大人達は05:00と、早い為起きては来ず、詩亜瑠は目を覚ます気配はない。
　絶望的な状況の中、紅葉の僅かな声が聞こえてきた。
　
　「…ぅ、んっ………ぁれ？………し…ある…？」