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〚第四章〛〜絶望の底編〜
〚96話〛「ミスリルの脚」
しおりを挟む魔導ミスリル、これを使えば脚が創れるかも知れない。そんな考えで始めた脚創りは、困難極まっていた。
脚の形を、構造を一から創り出すのだ。まずは大まかな形を創り、立ってみる。
構造も形も成っていない脚では簡単に転んでしまう。それを少しずつ調整し何度も転び、何度も直していく。
さらに、曖昧な記憶からヒントを得て少しずつ形作っていく。そして何十時間にも及ぶ作業で、なんとか立てるようになった。
そうして出来た脚で歩いてみる。動かし方を考えて意識を伝えないければ、ただの脚の形をしたミスリルの塊だ。
脚にくっついているだけで、神経や骨、筋肉などは無い。地面を踏み締める感覚も無ければ膝を曲げる事も出来ない。
当然進みづらいし簡単に転ぶ。これでは使い物にならない。そこでまずは簡単に、膝を曲げる動きを意識し、動かして見る。
タイミングを合わせて意識しないと余計に歩きづらくなり、転んでしまう。
そして、転んだタイミングで魔導ミスリルの池に落ちてしまった。
が、脚に意識を向けていたおかげか、魔導ミスリルはまるでただの濡れない水で、脚が池に溶けることも無く立ち上がることが出来た。
脚がうまく動かせないので軽く泳いで行こうと思ったが、全身に魔導ミスリルが入っているせいか、一切浮かず、転ぶ形で倒れ込んだ。
そこから両手で這う形で、近かったお陰で階段まで戻ることができた。
もし、池の魔導ミスリル全てがまた襲い掛かってきていたらと思うとゾッとする。
取り敢えず後は動きを意識して歩けるようになる事で、それが出来るようになったらほぼ無意識に動かせる様に、そしてそれが出来るようになったら走れるように、動きの意識の仕方を考えて、それが出来たら次は回避の動きに脚の動きを合わせていって、それが出来たら無意識で、それが終わったらジャンプやバック、しゃがみこむ動きや攻撃の足捌きを意識出来るように調整していく。
そして無意識に出来るようにする。
これが出来なければ異形達とは”戦えない”だろう。未だに異形達とは戦ったことが無い、殺したことがあっても、敵として、戦いあったことが無い。
今までは餌として狙われていたから殺せたのだ。何で判断しているか分からないが、脚があり、戦う力もある僕を、もう餌とは判断しないだろう。
どれぐらい時間が掛かってでもこの脚で、動けるようにならなくては。そう思うと、僕は脚の調整に集中する。
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