不幸な少女の”日常”探し

〚第四章〛〜絶望の底編〜

〚102話〛「助けを待つ日々5」

　奴隷の時の夢を見た。
　ただ、記憶の通りに事は進むのだが、苦痛や恐怖は異様に変わり、苦しむ僕をお構い無しに淡々と記憶の通りに進んでいく。
　
　そして、目を覚ますと、視界がぐちゃぐちゃに揺れていた。
　
　ヴェレナはその日から何も考えなくなった。
　目を虚ろにしながら虚無を見つめて。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　それから一週間後、夢を見た。
　
　幸せだった日常の。
　
　今となっては非日常、妹を起こし家族皆でご飯を食べる。
　そんな他愛も無い普通の光景。だけど僕に取ってはかけがえのないもの。
　
　そして奪われた。
　
　僕が魔物に喰われると思ってた。でも僕は変わらず椅子に座っている。
　
　ただ”その”景色を見ていた。黒い靄がリーネやお父さんにかかり苦しそうに藻掻き、その横でお母さんが頭を下げて座らせられている。
　
　お母さんは泣きながらもお父さんやリーネを心配させまい
と、笑いかけていた。
　お父さんとリーネは抵抗しながらも、お母さんに向かって…お母さんを押さえつけている靄に向かって必死に何かを叫んでいた。
　
　そしてお母さんの首の上に鋭い刃物が現れる。あれが何だかわから
　
　…………ぁ。
　本で…見たことがある…。あれは…………ギロチンだ。
　
　それを理解した瞬間僕はお母さんに向かって駆け出していた。
　だが…。
　
　僕の身体は思う様に動かず、まるでスローモーションの様になる。
　
　何で…動かないんだ…、何でこんなにも遅いんだ。
　動いてよ…もっと速く動いてよっ……！
　
　そして僕の…リーネの…お父さんの目の前で
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　お母さんの首が斬り落とされた。
　
　
　
　
　
　
　
　
　そして景色は反転し、目が覚めた。未だに心臓がバクバク言って、涙が溢れ出る。
　
　そして頭が冴える頃にはいつもの飢餓感が襲ってくる。
　
　
　そして……2週間後。
　
　
　余りの飢餓感、生きる事も死ぬ事も出来ない、助けは来ない、そんな閉ざされた日々。
　
　そんな日々に、精神的に限界を超え、嘔吐し、気が狂い、発狂する。それに呼応するかのように肌に触れている元足だった水溜りが根を張るように広がっていった。