不幸な少女の”日常”探し

〚第四章〛〜絶望の底編〜

〚106話〛「会いに行きたい日々3」

　■の話。
　
　まるで現実と同じで、夢なのか現実なのか分からなかった。いつもと同じように魔導ミスリルの池を眺めながら死を願っていた。
　
　すると後から足音がして来た。最初はなんだと思った、黒い靄か、兵士か、魔物か、異形か。どれにしてももう動くなんて無かった。もう疲れたのだ、死ぬことも…生きようと足掻くことも。
　なのに…
　
　「………ナナ…なの……？」
　
　そんな言葉が聞こえたのだ。こんな崖底で人なんかに会える筈も無い、それにこの声は何処かで聞いたことがあるような…
　
　そして振り返る。
　
　「…ぉ‥かぁ…さん……？」
　
　なん…で？ここに居るの？
　
　顔もしっかりと見える…。もう思い出せなかった筈なのに。夢…じゃない…の。
　
　「お…かぁ…さ‥ん……なの……？」
　
　もう…このまま忘れちゃうかと……思ったのに……。
　
　「うぅっ…ごめんなさいっ！…ナナ……会いたかった…っ！」
　
　その懐かしい声とともに、僕は二度と会えないと思っていたお母さんに抱きしめられた。
　
　
　
　
　
　
　
　””
　
　
　
　
　
　
　
　
　抱きしめた娘は、まるであの時の様に泣いていた。私も酷く泣き続けた、この17年間全てを埋めるように。
　
　泣きやんで、落ち着いてから気付いた、娘の両足が無い事に。私が娘の足を見ていた事に気付いたのか、話をしてくれた、脚が失われた原因を。
　
　脚を切られたという3人女冒険者にはどこか心当たりがあったが、それよりもその場に居たのなら叩きのめしてやりたいという怒りが多かった。
　
　そしてこっちの状況を聞かれた。…本当の事を話せなかった、こんなにも苦しそうな状況なのに嬉しそうに昔の話やあえて良かったなど言われては、言えるはずがなかった。
　崩壊状態…などとは。
　
　そして、これまで……ナナが亡くなってから何があったのか、聞いてしまった。
　
　それを聞いて、ナナは一気に暗くなり俯いてしまった。そして、暗い声で話しだした。
　
　どうしても生きたかったと、もっと私達と暮らしていたかったと。そうして死んでいって、最初に聞いたのが「早く大きくなって身体売ってお金を稼いでくるのよ？」そして毎日のように男を連れてくる母親だった。まだ私達と暮らしていたかったという後悔を、生きるだけの金はあるのに遊んで暮らしているこの母親に奪われて馬鹿にされたような日々に、母親を遂に殺してしまった。
　
　そうしてただの八つ当たりのようなもので母親を殺してしまった後悔と、ナナだった頃の暮らしを守れるようにと強くなる事を決意し、冒険者になったらしい。
　
　こうして何年も冒険者を続けていたが、望んでいた強さに全然届く気配がなく、攻略者がいないと噂が広がっていた高難易度のダンジョンに潜る事にした、そしてダンジョン入り口で出会った女3人冒険者達と組む事になり、裏切られ、崖底に落とされた。
　
　そこからの話は異様で絶望的なものだった。