不幸な少女の”日常”探し

榊原

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〚第五章〛〜不幸な少女の”日常”編〜

〚147話〛「ギルド長の決断」

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 ――ある噂が国に広がった。
 
 まるで狂人のように嗤いながら人々を、何の躊躇いも無く殺してゆく……いや、狂人が居ると。
 
 その狂人は貴族…平民…王族…女子供関係無く皆殺し。そうしてまるで何かを探すかのように奴隷達を拷問して居る…と。
 
 「さて…、どうするか」
 
 ある冒険者ギルドの一室で書類に目を通した男が思わず呟いた。場所はあの事件のあった…フォレストウルフの一件のあった街が最初…の可能性があるとの事だが。
 
 確か、全滅した街を調査するとある一軒の家の地下室にまるで”異形”とも呼べる姿にされた人々が見つかったらしい。
 
 それはある男が実験をしていたようで、失敗しては高難易度ダンジョンの崖から廃棄していたらしく、そういった内容が伺える資料がその地下室に残っていた。
 
 流石に廃棄されたと書いてあった高難易度ダンジョンに行って崖を降りられるわけも無く、調べはここまでだった。
 
 話を戻すと、その狂人、と呼ばれる者は”貴族…平民…王族…女子供関係無く皆殺し”と言う事はその街にいた冒険者達全員を倒してしまった事になる。そして実際街に死体は確認された。
 
 それともう一つ、奴隷達を拷問して何か探していたようにしていたと言う情報。これは奴隷達を拷問して居るうちに簡単に逃げれたという奴隷商人の話だ。それが本当ならその狂人は冒険者…あの街に何ランクまでの冒険者が居たか把握しきれていないが少なくとも全員殺せてしまう程の力があり、かつ奴隷に関係するような何かを探しているという人物は正直心当たりが無い。
 
 この冒険者ギルドのギルド長である私が知らないのだ。それにそこまでの人材、居たとするなら目立たない筈が無い。
 
 ……歳を取るとは嫌だな、つい深く関係ない所まで考えてしまう。
 
 「ギルド長、コーヒー飲みます?」
 
 ヒューリンが声を掛けてくれる。きっと夜遅くまでこの書類を見ていたから気遣ってくれたのだろう。
 
 「ああ、すまない、頂こう」
 
 「了解です」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 さて、冒険者をどう動かすか、こちらに近付いて来ている狂人をどうするか、私次第なのだ、最善の対策を考えよう。この街の王はこの事態をあまり危険視していない…もしかしたら戯言だと思っているかも知れん。
 
 唯一街を守る事ができるかも知れぬ戦力がこの街の冒険者…か。
 
 昔は国と協力してよく戦ったというのに…、時が経つとは嫌な事だな…本当に。
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