不幸な少女の”日常”探し

〚第五章〛〜不幸な少女の”日常”編〜

〚151話〛「幼馴染と一緒に」

　いろんな事を話した。紅葉の今までの事を、僕の今までの事を。
　
　紅葉はあの祈り村での事があったあと、そしてこの世界で産まれてからの記憶しか無いらしい、そして本当は今さっき紅葉だったときの記憶を思い出したばかりで少し混乱しているらしい。
　
　僕は話が終わった今も紅葉を抱きしめ続けていた。離してしまえばそのまま消えてしまいそうだったから。
　
　紅葉はそんな僕に気づいたようで、身体を預けるように体重を少し掛けると。
　
　「大丈夫だよ…私は居なくならないから」
　
　と、言ってくれた。
　
　それでも……今までの事で僕はもう信じることができないのか、それでも少し信じれたのか紅葉から少しだけ、離れる事が出来た。
　
　紅葉に事情は話した、これから妹を探しに行く事を。
　
　「妹を探すの……あまり力になれそうも無いけど私も手伝うよ」
　
　「ありがとう」
　
　僕達は一緒に歩いていった。奴隷商へ。
　リーネは奴隷商に売られ別の国に行ったと最初に聞いた。もしかしたらこの国かもと言う希望があったが。
　
　その希望は奴隷商を捜し回ってみても見つからない事への焦りとなっていった。
　
　「シアル……次の街に行こう…そこになら居るかもしれないよ」
　
　「……うん、………そう…だよな」
　
　僕は少し深呼吸をすると次の街へと足を進めた。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　「はぁ………はぁ………はぁ………」
　
　「……大丈夫？」
　
　「…大丈夫だよ」
　
　紅葉は両腕の無いことに慣れているのか、普通のように歩けてはいた、しかしバランスが普通とは違う。僕だって一時期両脚が無かったから少しだけ分かる。
　
　「………はぁ………はぁ………っ！……へ？」
　
　僕は紅葉を抱っこした。
　
　「辛いなら言ってくれ……紅葉一人ぐらい余裕で持てる」
　
　「あ……ありがとう」
　
　紅葉は少しだけ頬を赤く染めると、目を逸らす。
　
　そうこうしている内に空は暗くなり、月が顔を出していた。