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〚不幸の中の贈り物は〛

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 本当に…、不幸だなぁ…。

 私は今、迷宮区の崖下へと落ちて、川を漂っていた。父親は殺され、ゴブリンに犯され…母親に捨てられる。

 本当…笑えるよ。

 村を襲ってきたゴブリン達に父親は殺され、女は攫われた。母親はこの時大きな街へ買い物に行っていた。

 それまでは…父親には優しくしてもらっていた。母親はそこまで優しくなかった。でも…今までで、本当に…幸せだった。

 ゴブリンの洞窟では地獄の様な日々だった。休む暇もなくひたすらにやられ、よくわからない草や木の実を食べさせられ。

 その洞窟から抜け出したのだ、物理耐性を盾にして。あの地獄から…皆を連れて…あの村へ。

 私は囮。ひたすら逃げた、捕まってはいけない恐怖から、皆を守る正義感から。

 そして、ゴブリン達を撒いて村へ着いた……のだ。

 なんで…どうして…皆をそんな目で見るの……?そんな考えが頭に浮かんだ。

 そうしたら、「ゴブリンの子を孕んだ女共など要らん!」なんて……。しかも母親まで一緒になって……。

 その後の皆の行方は分からない…知りたくない。私も…そうだから。

 自殺をしに高難易度迷宮区へ入っていった。でも、物理耐性のせいで死ねない。そんな時、この崖を見つけた。底の見えない奈落。

 そして…飛び込んでみたらこうだ。水のおかげで殆どダメージなんてない。這い上がれるだろうか…そもそも繋がって居るだろうか。

 ……………戻って、何になるんだろうか。

 そんな考えをしていると、流れが終わり、広い場所に流れ着いていた。

 下には紫光鉱石が輝いていて、その周りを、ミスリルが埋め尽くし、紫色の光を反射させており………綺麗だった。

 そんな光景に見惚れていると、いつの間にか涙が溢れてきた。別に死ぬわけでもないのに、走馬灯が流れていた。

 父親と遊んだ日々、母親に父親と共に怒られたこと。

 楽しかった……愛おしい思い出。

 思い出は…思い出のまま…記憶に…。

 私はゆっくりと肺の空気を吐き、沈んで行った。

 走馬灯……本当になっちゃったな……。

 ごめんね…お父さん、思ったよりも、早くそっちに行くかも……。






 ””





 「ごめんね……本当に…ごめんね」

 君はお父さんの所に行かせてあげられない…、僕では…無理なんだ…。

 せめて……観音達を遣わそう、不運で始まり…不幸で終わる、悲しき少女に。

 ごめんね…僕の贈り物…無意味だったね…。

 幸運…これがあればきっと…そう思ったんだけどな…。

 次の世界…地球か。

 次の世界では……幸せな日常が…あらん事を。
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