7ガツ5カのアナタ

海棠エマ(水無月出版)

文字の大きさ
8 / 9

2024年8月

しおりを挟む
2024年8月
「なるほどね。来年の7月に起こるかもしれない話ね」
 蓮はハンバーグを口に運びながらいう。
「茗はその話聞いてどう思ったの?恐怖を感じたの?それとも、そんなこと予言しているだなんてすごい!とか思ったの?」
「そんなこと初めて聞かれた。誰かが情報を提供した以上、備えるべきとしか考えてなかった」
「なんで備えるべきって思ったの?」
 誰かが言ったなら、その情報がやってきたということは、今自身に必要なことなのだ。だから備えようと思った。しかし、その話を知った時、私はどう思った?
近藤からあの画面を見せられた時、ユヅと駅中で調べたとき、近藤と再会して話したとき、一体私はどう思っていた?
 「…信じていなかったと思う。そんなのデマだって。だって災害が予言されいていつ来るのか分かっていたら、犠牲者は出ないはずでしょ。それに予言なんかこの世に満ち溢れていて、出鱈目に言ってればどれか一つは当たる気がする。それを狙っているのかもしれない。でも…」
 それから茗は言葉に詰まってしまった。
 「でも…?」
 「わからない、考えは頭の中にあるのに、言葉として出てこない。
逆に、蓮は今この話聞いてどう思った?」
 間をあけて茗が蓮に聞くと、蓮は下唇を噛んでしばらく考えた後こう言った。
 「神様が一度に何人もの人に試練を与えようとしたのかなって。個別にやるのが面倒くさくて一気にしようとしたのかな?って」
 「神様適当すぎない?」
 「だから予言で伝えようとしたのかな?」
 蓮の頭の上には?が沢山あるようだったが、それはある意味納得できる答えだった。

***

 私は見えない未来が怖い。一寸先は闇、とはよく言ったものだと思う。もし明日交通事故に遭って植物状態になったら?
地震が来て、実家が見るも無惨な姿になったら、私は一体どこに帰れば良いのだろう。しかし、そんな見えないものに対して、不安の根拠もなく恐怖していたらキリが無いだろう。人間はいつも死と隣り合わせなのだ。それなら、もう来るものは仕方ないと割り切って、7月5日を迎えれば良いのだろうか?しかし、それも違う気がするのだ。
 去年の私は今年のことなんて何にも想像しなかった。一体誰が想像できただろう。一生と思っていたユヅとの友情にヒビが入った気がしたこと、あんなに楽しく話していた近藤が突然都市伝説を信じなくなったこと、そして、蓮とこんな話をしていること。
去年は大学に合格して無事に大学生をしていることに一種達成感を感じていた。だって志望の大学に受かったのだから。だがしかし、そこで終わりではなかったのだ。『これから先、受験みたいな試練と言えるものが訪れるの?』と茗が口をついてめぐに聞いた時、めぐは『受験なんて序ノ口』と言い切った。
 『私が何よりも怖いのは、何もしないまま終わること…?』最後、不意に口をついて出てきた言葉に、蓮は目尻を下げて茗を見つめた。
 「何かやりたいことがあるんだね。でもそれがまだ具体化出来ていない。そこにもどかしさを感じている。アタシにはそう見えるよ」
 蓮の言葉にハッとさせられる。
 「何がやりたいんだろう、私」
 「それは、茗次第だよ」
 
 来年の自分は何をしているのだろう。今年と同じくバイトをして、時間が空いたら蓮に会って、大学の友達とワイワイしながらディズニーリゾートに行くのだろうか。それを二、三年続けて大学を卒業して、就職するのだろうか。

 2年前、『まだ3年あるから』と母が言ったとき、『やりたいことやっときな』とも言っていた。もうすでにリミットと言える7月5日は一年以内に迫っていて、なのに人生の目標と言えるものなんて未だ見つかっていないのだ。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

処理中です...