The Brain City

宗次郎

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殺人に1票

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「お久しぶりです。。」
「いらっしゃい、こんばんは。」

久しぶりに隣町の轟さんが。。しかし、そのただ事ではなそうな表情にはっとした私が
(どうかされたんですか?)と口を開こうとした時、

「兄が死にました。。」
「えっ?」
「えっ??どうされたんですか?」

あまり動揺しない私もさすがに驚いて話を聞くと、
「仕事中の事故で亡くなりました。でもこれは殺人です。。」という。

轟さんのお兄さんは衛生社で働いていた。いわゆる「うんちとりぽっぽ」のドライバーで、その日も同僚と二人で住宅街からの依頼を受けて回収に向かったそうで、収集が終わり現場を離れる際、同僚の運転する回収車にひかれて亡くなったとのことでした。
この事故は夕方のTVニュースにもなり、町の話題にもなった。しかしそのニュースを観た現場系の人のあいだでも「そんなことある?この状況でどうなったらそんな事故が起こるのか?」と疑問の多い事故だった。ちなみに現場に防犯カメラはなかった。


轟さんが殺人だというのにはわけがあった。
実は以前からその同僚とは不仲で、二人一組の回収の現場にわざと置き去りにされたこともあり、会社としてもその二人をペアにして現場に行かすことがないように調整していたというのだ。普段からお兄さんからそういう話を聞いていた轟さんは、これは殺人事件だ。と訴えた。本人からの謝罪もない。

たまたま人員が足りなくて、仕方なくこの二人をペアにしたその日の事故だった。

相手の同僚は心のケアという理由で1週間休職したそうだが、ショップでDVDをレンタルするなどいつもと変わらない感じだったと周りも不思議がっていた。
DVDレンタルをしていたからといって心に傷がない、反省していないとは正直分からないが、遺族や周りから不信がられても仕方ないとは思った。

轟さんのお兄さんとはじめて会ったのは病院のベットの上だった。
車の単独事故で骨折して2週間入院していた時、同じ病室の隣のベットで入院していたのが彼だった。
病院とはいえ同じ部屋で朝から晩まで一緒、しかも食べるものも同じ。まあ、病院食なので同じなのは当たり前なのだが、同志のような妙な親近感を覚えたものだ。
入院している私の代わりにBarを開けてくれていた友人に、電話でワインの場所を説明している声が聞こえた轟さんのお兄さんが、見舞いに来た轟さんに
「隣のベットの人、英語も話せるしすごい人なんじゃないか?」と話していたと後に知って笑ってしまったことを今でも思い出す。

「カベルネソーヴィニヨンの…」とか「シャルドネが…」とか何とか電話で話しているのを聞いて英語で話していると勘違いたのだ。先に退院した私は、轟さんが退院したら一緒に飲みましょうね。と約束して、その後轟さんの家に遊びに行ったりしたこともあった。

事故現場に献花に行ってそんなことを想い出しながら何かしっくりこない気持ちになった。


「明日警察に行くから送っていってほしい。」
と轟さんに言われ、私は
「もちろんです。」と答えた。

線香をあげに家の方に伺った時、「あの子は本当に優しい子だったの。」と泣いて悲しむお母さんと抱き合って慰めあった。

それから何年経つだろう。

結局、防犯カメラも無く、証拠不十分で何ともならないということで終わった。


昨日北九州で、採石場の大型ダンプで同僚をひき殺したとして同僚の男が現行犯逮捕されたというニュースがあった。「うっぷんがたまっていた」と話しているという。



言うまでもないが、轟さんのお兄さんの同僚は今も衛生社で働いている。

本当のところはわからないが、人の命は簡単に奪われるのだ。

最近、体調のことを考えてお酒を控えたりもするが、今晩は臭えスコッチでも飲みたい気分だ。


・・・・・・・・The Brain City


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