世話焼きオーク、森で発情エルフを拾う。

雉村由壱

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第2話

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(そんなに、匂うか?)

 ライモは自身の腕に鼻を寄せクンクンと嗅ぐが、自分自身の匂いはあまり分からない。
 正直、傷ついた。
 ユリの家臣はいつも『醜い』とか『イノシシ野郎』だとか容姿に関しての侮蔑の言葉を吐くが、これまでユリがそれらを言った事はない。そのユリに面と向かって「クサイ」と言われた。しかも苦しそうな表情で、本心だとわかるから余計に傷ついた。侮辱する為にわざと言う暴言の方がまだ優しい。

 ライモは仲間たちから離れて泉にやってきた。水浴びをしようと思ったからだ。
 森の奥にある小さな泉は、底が深く、清らかな水がこんこんと湧き出ている。周りは鬱蒼とした木々に囲まれ静かだ。

 泉に近づくと、ライモは何かの気配に気づいた。それは泉の水面からから小さく顔を覗かせていたが、ライモに気付くとスッと水に潜り込んだ。

 一瞬見えた金の髪。

 まさかと思いつつ、ライモは泉に近づき、水面を覗き込んだ。泉の奥に誰か潜んでいる。ライモはその影を上から覗き込み見続けた。

 しばしの静寂。
 森の風が木の葉を揺する音と、鳥の囀りだけが聴こえる。
 しばらくすると、水面が波立ち、ザバッとそれは顔を出した。

「ぷはっ!」

 はぁはぁと空気を貪るユリをライモは覗き込みニヤニヤしながらきいた。

「よお。服着たまま水浴びか?」

 ユリは何も答えず泉の縁にもたれかかり荒い息をし続けている。どうやら泉に隠れていたようだが、息が続かず諦めて出てきたようだ。

「お前、いつも一緒の奴はどうしたんだよ」

 ユリが一人でいることに違和感を感じて聞く。わざわざ水中に隠れていた理由も気になる。

「……うるさい。ほっといてくれ」

 ユリはライモの目を見ずに言葉を放つ。
 ユリは濡れた髪を鬱陶しげにかき上げた。水滴が滑らかな頬を伝い流れていく。ライモはユリの色気にゾクリとした。
 ユリの呼吸は依然として荒く、頬や長い耳が赤く上気している。水中で息を止めていたから苦しそうなのだと思ったが、それだけでは無い様子だ。

「お前……どっか悪いのか?」

 少し心配になり、そう聞いてユリに近付いた瞬間。風向きが変わり、突如、物凄く甘い香りがライモの鼻を突いた。
 つい先程ユリから微かに感じたあの匂いと同じだと分かったが、先程とは香りの量が桁違いだった。そのことでライモはあることに気付いた。

「お前っ! Ωオメガか⁉」

 ライモは驚いて後ずさり、鼻を腕で塞いだ。

「なっ! なんで……!」 

 ユリが驚きの表情を見せる。

「なんでわかったのかって? 俺がαアルファだからだ!」

「まさか! オークにαなんて……」

 オークなんて下等な種族にαなど居ないと思っていたのだろう。
 暴言を吐かないユリでも結局はオークを下に見ているのだと感じライモは苛立った。

「俺たちの種族でも一割はαだ!」


 この世界にはオーク、エルフ、ヒト、ドワーフ、トロールなど様々な種族がいる。
 大抵は雌雄どちらかの性別だが、エルフやヒト等一部の種族には雌雄に加え、αアルファβベータΩオメガから成る別の性別が存在する。

 αは約一割の割合で生まれ、身体的にも頭脳的にも優秀な者が多い。

 βはその種族の大半を占め、ごく普通の雌雄と変わらない。

 Ωはαよりさらに個体数が少ない。
 そして雄でも妊娠することが可能で、発情期にはフェロモンを発し、Ω本人の意思とは関係なくαを性交に誘う。


 ライモは後退あとずさった。
 ユリは今明らかに発情し、強いフェロモンを放っている。すぐにユリから離れるべきだと思った。でないとαであるライモは、Ωのユリに酷いことをしてしまう。
 普段のライモなら他者をそれ程気遣う事は無かった。だが、何故かユリだけは傷付けてはいけないと思った。
 その時、遠くで仲間たちがライモを呼んでいる声が聞こえた。
 
(マズい! あいつらに今のこいつが見つかったら……)

 ライモは急いでユリに近づくと、泉に浸かっているユリの服を背中から掴み、泉からザバッ! と持ち上げた。

「なっ、何をする⁉ 離せ!」

「一緒に来い!」

 仔猫の首根っこを掴むようにユリを軽々持ち上げ、肩に担ぎライモは森の奥へと走った。ユリの服はぐっしょりと濡れているので、発情の香りはかなり抑えられている。他のオーク達には気付かれないだろう。しかしユリを担いでいるライモは至近距離でその香りを受ける羽目になった。
 その甘い香りはたまらなく魅力的で今すぐこの場でユリを裸に剥いてその身体を蹂躙したいと言う思いが、ライモの中でグツグツと煮えたぎっていた。

「おろせっ、どこに、連れて行くつもりだっ」

 ユリがライモに担がれたまま弱々しく抵抗する。

「俺の仲間達がすぐ近くにいるんだっ。俺以外にもαが二人いる。今見つかったらαだけじゃなく全員に輪姦まわされるぞ!」

 ライモのその言葉にユリがビクッと震え、硬直した。

「こんな小っせぇ尻、直ぐに壊されちまう!」

 ライモはそう言ってユリの尻をパンッと叩いた。

「ひゃあぁっ!」

 するとユリがライモの背中にしがみつき悲鳴をあげた。途端にブワッと強烈に甘い香りが爆発した。

「なっ! お前……っ」

「んっ……!」

 担がれたままユリがピクピクと震える。ライモの肩に触れているユリの股間から生温かく湿った感触が伝わってきた。ユリが尻を叩かれた刺激で精を漏らしてしまったらしい。

「うっ……」

 ユリはその屈辱に呻き、そしてグスグスとすすり泣き出した。

「……す、すぐ着くからっ。かんばれ」

 ライモが走りながらユリを励まし慰める。しかしそれは自身への励ましでもあった。ユリの強い香りに正気を保つのに必死だった。

(クッソっ! チンコ痛てぇ……)
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