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序章

第2話 享年30歳独身

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 あの日から、20年後。今年で俺は30歳になった。それなりの大学を卒業し、それなりの企業に勤め、気ままな独身ライフを謳歌している。謳歌しているのだが……。
 最近、早くいい女性見つけて結婚しろと、両親からの圧がすごい。
 親父やお袋には悪いが、俺、結婚しないよ?
 これまでに、女性とお付き合いしたことは何回かある。あるにはあるのだ。しかし、どれもいい感じになったところで、
「ごめんなさい。私、他に好きな人ができたから、別れて欲しいの。貴方にはもっといい人が見つかると思うわ」 
と言われて、毎回フラレるのだ。それが彼女の幸せになるならと、自分を抑えて別れるのだが……。


「独り身の方が気楽でいいよ」
 いかん、いかん。つい感傷に浸って独り言が。まあ、自分の部屋での独り言だから、別にいいんだけどさ。
 ぼんやりしていた頭を軽く振って、読んでいた新聞に目を落とす。
『真夏なのに豪雪! 地球温暖化が原因か』
 一面の見出し記事に載る、20年前の自分なら信じないニュース。夏に雪が、それもものすごい雪が降るなんて、狂ってるだろ。
 だが、記事のニュースは真実で、例年雪が降らない温暖な県でも、積雪が観測されている。
 おかしな世の中になったものだな。いや、昔からおかしいか。
 パラパラと紙片をめくる。と、三面記事に
『あの懐かしのゲームの続編が20年越しに発売』
「あのゲーム、続編出るのか!? マジかよ!」
 脳裏にあの日の感動が蘇る。あのニコラウスにようやく勝てた、あの喜び。目頭が熱いのは気のせいだ。うん、気のせい。これは、男として買うしかない!! ……あ、けど、続編はニコラウス要素がなくなっていると思いたい。思いたいが、スマホで要チェック案件だな。
 その後も紙片をめくるが、他にめぼしいニュースはない。読み終わった新聞をテーブルの上に置く。ふと、窓の外に目をやれば、しんしんと雪が降っている。夏なのに相変わらず、今日もおかしな天気だ。だけど、全く気にならない。
「今日はお祝いするか」


 というわけで、俺のお気に入りの喫茶店にやって来た。ここは、ホットケーキがとても美味く、いつも大勢のお客さんで賑わっている。
 予約してこなかったので、待つかと思ったが、運良く空いていて、すぐに窓際のテーブル席に案内してもらえた。
 いやあ、今日は人生で一番ラッキーな日かもしれないな。お! メニュー表が新しくなってる。
「新作のチーズケーキか」
 ううーん、チーズケーキも好きだから、いつものホットケーキとどちらにしようか迷うな。でも、ここは!
ガッシャーン!!
「へ!?」
 窓の方からした音に驚いて振り向く。と、眼の前には、大量の飛び散る細かいガラス片と吹き込んでくる白い雪。そして、勢いよく突っ込んでくくる大型トラック。
ーーあ、死んだ
 視界がブラックアウトし、プツリと俺の意識はそこで途絶えた。
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