輪廻を終える方法~無限進化と創造神の法則~

たぶり

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妖精界の騒乱

31話 アガパンサが豹変した理由

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「しかし、この半年間ほど妖精達を酷い目に合わせてしまいました。こんな私が許されていいはずがありません。何か私に対する罰をお願いしたく存じます」
 アガパンサ様はエルトワール様に頭を下げている。 

「あなたが豹変してしまったのは様々な事情が重なった結果です。ですので、あなたの責任外の部分の罰は割り引かれるでしょう。ただ、あなたの責任である部分に関しては、私が何か罰を用意せずとも私達の父の創った法則があなたの罪を解消するための道のりを用意してくれます。
 アースへの転生もその一つじゃないかしら?」
 エルトワール様はアガパンサ様の手を取り、私に頭を下げる必要など無いと体で伝えつつ言った。

「私が豹変してしまった他の事情について、私には見当もつかないのですが、教えて頂く事は可能でしょうか?」
 アガパンサ様が子供のようにおずおずと聴く。

 その理由、私も聴きたかった!!

「1つ目が、野田周がイドと調和できる強さを得るためのカルマの流れに、豹変したあなたによる事件に関わる過程が含まれていたことです。《争いを仲裁することで、環境を思い通りに変化させていく力を身に着ける必要のある野田周》・《人間を見守りつつも潜在的には人間を懲らしめたい気持ちを抱えていたあなた》で、カルマ上の一致がありました。
 また、過去、あなたがエルトロンと関係していたこともあり、今回の縁が産まれたのでしょう。」

 続けて、エルトワール様が話した。

「さらに言えば、お互いが出会う事で、お互いに欠けている部分を知る必要があるから二人の縁が組まれたのだと思います。野田周は目的のためであっても誰も犠牲にすることができない性質の持ち主です。その一方、あなたはやろうと思えばいつでもそうしてしまう危険性がありました。
 あなたは、野田周を見習う必要があり、野田周はあなたを見習う必要もあったということです。
 おそらく、今回のような縁が組まれたということは、野田周は、未来にはあなたのように人間を見守る立場になるのでしょう。

 この辺りの法則はアースでも働いているから、長年、アースの人間達を見守り続けたあなたなら良く分かるのではないかしら?」

「はい.......アースにおいても、消極的な人間は積極的な人間と縁が組まれることが多く、おおざっぱな人間には几帳面な人間など、お互い見習うべき性質を持つ相手と縁が組まれることが多いのはよく観てきました。あと、試練においては、同様の欠点を持つ人間同士でお互いの行動が反面教師になるように人間関係が配置されているのを認識しています」

 え?そんな法則があるの!?私がアテナと仲がいいのはアテナがしっかり者で私が抜けているからかしら.........

 エルトワール様は続ける。

「よく理解できていますね。父の意志は詳しくは分かりませんが、この一件に関わった全ての存在のためにも今回の出来事が必要だった事は間違いないでしょう。
 一人の行動は他の多くの知的生物が持つカルマ上の理由によっても決定されています。
 今回の出来事は、妖精達においても、疑う事を知らず純粋に上層の存在に付き従うだけではダメである事を示唆する意味もあったのでしょう。
 このような理由があるので、今回の一件はあなた一人の責任ではありません」

「愛のあるお言葉、誠に痛み入ります。しかし、元はと言えば私が人間への共感が足りない事から発生している問題なのだと思います」
 エルトワール様の寛容さを受けても、アガパンサ様は謙虚な姿勢を崩さない。

「その事にも関係するのですが、あなたが豹変した2つ目の理由は、あなたの実体である神々の世界における問題があります。あなたもご存じの心格という概念、これは神々の世界においても賛否両論があります。

 《心格など自分と他の知的生物との間で格付けを行うなど、能力や財の大きさで価値を計る未熟な存在と変わらない》という認識を持つ神々。

 《精神の成長度合いによって認知力等に大きな差があるのは事実なのだから心格という概念で分けてもいいのでは?》という認識を持つ神々。

 大きくはこの2つで分かれています。神々ですので容易に争うわけではないのですが、神々の関係性の少しのズレでも下層の真相界・仮相界にも大きな影響が及んでいきます。
 あなたの実体である神は心格推進派です。その影響が、あなたに及んで今回の出来事を引き起こした.........ということです」

「私自身は心格という概念には否定的だったのですが、半年前ぐらいから、突然人間の精神の未熟さが目につきだして心格という概念に囚われ始めました。そうすると、妖精に比べ人間は明らかに心格において劣っている....と、その事ばかりに意識が囚われていました。そのような理由があったのですね」

「それで、私の個人的な意見として捉えてほしいのですが、心格という概念そのものに良し悪しは無いということです。ですので、どちらの考えにも優劣をつけない方がいいかもしれないわね。今回の件に関しても、あなたのやった事が良いのか悪いのか、正直私にも分かりません。ただ、父の法則に反していたがゆえに視野の狭い行動をしてしまったかもしれないけど、父は私達に逆らう自由を与えています。それは答えというのが一つだけではない事も意味するのではないかしら?

 あまり自分を責めないようにね.......」

 エルトワール様はアガパンサ様の肩に手を置き、慈愛の目を向けて言う。

 本当に愛のある神様なんだわ。私自身は目の前におわす女神様の事を知らなかったけれど、こんな暖かい愛情を持つ存在が私達を見守ってくれていることを嬉しく思った。

「それで、私がルーティアとしてここに来たのは、あなたにお願いがあるから....という理由もあるの」

「はい。なんなりと仰ってください」

「野田周君に人間の見守り役としての知識や仕事を教えてあげてくれないかしら?もちろん、あなたがアースで転生するまでの短い期間で構わない。」

「えっ!!?は、はい。そう仰るのであれば是非、そうさせてください」
 アガパンサ様が一瞬戸惑ったのもよく分かる。
 本来、人間の見守り役はアースでの生活を終えたばかりの人間では務まらない。人間という感覚に縛られた一方向の物の見方では中々難しいためである。
 そのため、アースから離れて長い期間が経つ存在、アースで転生した事の無い存在が担当するのが常である。



「あなたとしても、エルトロンの傍にいられる時間が持てていいんじゃないかしら.....ふふ」
 唇の下に手をあてて、いたずらっぽく笑う。

「うっ!.....それは....あの.........」
 アガパンサ様が俯いて頬を紅潮させている。

 こんなアガパンサ様見たこと無い.............

「あと、気絶しているその子ムスカリ君の事、周君とあなたに任せます。その子は今、世界が見舞われている異変の犠牲者だから。まだ詳しくは話せないけど、周君やあなた、その子の成長にとっても大切なことよ」

「承知しました。この子に関しては私も詳しくは分からず、今後、周さんと共に解決していきたいと思います」
 アガパンサ様は嬉しそうに伝えた。



 その時....

「う.....うぅ....ん??」

 周さんが目を覚ました!!本当に良かった......!

 あれ??
 メグルさん、なんか前と違う?
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