輪廻を終える方法~無限進化と創造神の法則~

たぶり

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人類の見守り役

39話 アースの賢者が暴きだした創造主の秘密

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 私やマルシャの不安をよそにストラウスは続ける。

 「不信の芽生えは、35年前、私が天使として人類の成長管理の任務についていた時の事です。その中身は、ご存じの通り、進歩の速い人間を堕落から守るというものです。

 そこで、進歩の速い優れた20代の若者をアースで担当しました。
 この若者は創造主の創った重要な法則を若くして悟り、その法則を他の人間にも伝えていました。

 それは《 人に与えた分だけ、それ以上に価値のある物が得られる 》といったものです。

 若者は法則を見事に体現していました。

 アースで価値が置かれているお金を例にすると、お金を人に与えれば、元であるお金を稼ぐ力が得られ、さらにお金を人に与えれば、お金すらも必要としない能力・精神が得られ........と、法則を通じ高い境地に到達し、一見、普通の若者なのに何百万年も生きてきたかのような巨大な精神を築いていました。

 知恵に関しても、知恵を人に与えれば大きな知恵が得られ、その大きな知恵を人に与えれば、自身の知能を超えた潜在意識からの知恵が得られ........と、その見識は上位神の領域にまで足を踏み込んでいました。

 私は天使でありながらも、アースの人間である彼に尊敬の念すらも覚えました。
 彼のような人間は死後に私よりも遥かに大きな力を得るであろうと。

 彼はその後も、創造主の法則を通じ、精神の進歩を続けます。

 が..........ある時、彼が、彼を信奉する周囲の人間に対し伝えました。天使の私ですらも見出した事の無い知識です。

 《法則に沿ってこの世を生きてみて分かったが、創造主は唯一の絶対の存在ではない。
 今現在知る所では創造主は2人いる。
 1人は神としてこの地球でも崇められている存在。
 もう1人は地球では悪魔とされている存在。しかし、その実体は悪魔ではない。
 この世では神とされている創造主と対となり、お互いが補完しあっている。たが、世界は全体的に神的存在に偏りすぎている》

 というものです。

 はじめ私は彼の発言を聴いて、彼は堕落してしまったと思いました。
 珍しい事を語ることで自己顕示欲を満たしたいのだろうと。

 そんな知識はウラノスでも聴いた事が無かったからです。人間の進歩の法則を作った創造主が唯一の絶対神として信じられていましたから」

 「そうね........実際私も、私を創造したのは父一人だと信じているわ」
 私は自身の髪を触り、気持ちを落ち着けながら言う。

 「たぶん、天使ならみんなそう思ってるよね」
 マルシャも同調する。
 

 「その時、私自身もそう思い、彼の事をより観察するようにしてみました。他の天使と同様に、悪魔を私が毛嫌いしていた事もあり、邪神や悪魔と聞かされていた存在の筆頭が私達の創造主でもあるなんて.......

 彼の説を否定する材料が欲しかったのです。
 
 実際、彼の行動を観察していくと、まさに堕落したかのような生活態度でした。

 彼は世界で困っている人のために使っていたお金を自身の旅行資金に使い始めました。
 彼は小食を貫いていましたが食道楽を地で行くような食事をし始めました。
 彼は他者を幸せにする事以外に関心を持たない人間でしたが、自分を満足させるためのあらゆる遊びに手を付け始めました。

 しかし、彼の成長は留まるどころか加速していき、アースの人間でありながらオーラは前人未踏の無色透明に到達し、汚れや強欲の色など一つもありません。

 私は創造主が二人いるなど信じたくないと、彼の説を否定する材料が欲しいので彼の生活の観察を続けましたが、堕落したと思われる生活を続けていても彼の力は強まるばかりでした。

 そんな時、あの出来事が起こりました。



 ..........彼は突然、謎の病に倒れました。

 そして、みるみる衰弱していき最終的には心臓麻痺にて亡くなってしまいました。

 本来、彼の寿命はまだ多く残されていたはずなのですが。


 私はアースを離れた彼の消息を知りたいと思いましたが、どういうわけか彼の痕跡だけが見当たらないのです。
 
 本来、人間がアースから離れる時、精神が紐づけされている世界があり、そこへ向かうはずです。そのことに例外はありませんでした。


 私は他の天使達や神々に彼のことを聴きました。

 が..........あれほど有名であった、アースの賢者である彼の事を誰もが知らないと答えました。

 この時点で創造主への疑念が私の精神にこびりつきました。

 実際に彼はいたにも関わらず、天使や神々の記憶を”彼をいないもの”として塗り替えられるのは創造主しかいないであろうと考えたからです。

 おそらく、彼の至った境地は、絶対神とされている創造主にとって何らかの不都合があったのでしょう。

 創造主がもう一人いると悟られたくない事情は分かりませんが、それを悟った彼だから存在を抹消されたのだと私は思いました。

 彼の生活を観察することで彼の説を否定する材料を探していたのに、彼が居なくなることで彼の説の正しさが証明されるなんて皮肉なことです」

 「でも、なぜ、その彼の事をストラウスだけが覚えていたのかしら?」
 私は腕を組み、側にあるレンガ塀に背を持たれながら聴いた。

 
 「なぜ、私だけが彼の事を覚えているのか分かりません。
 ただ、重要なのは、彼が解き明かしてくれた秘密をきっかけに、世界の真相を知り、創造主の企みを打破する事です」

 「逆らう人間を父が滅ぼそうとしてるって言っていたけど、父がそんな事をしようとする理由って何かあるの?」
 マルシャが不安げに聴く。

 「詳しくは分かりません。ただ、私の考える所では、神が崇拝されるほどに、その神の力が増すという原理と関係があると思います。
 何らかの理由で創造主は、あらゆる知的生物から崇拝される事で、力が欲しいのではないでしょうか?」

 「え?神は崇拝されるほど力が増すって話、あれって本当だったの!?」
 私はそう言い、私は黒歴史である太陽教の普及に奔走した自分を思い起こした。

 「ええ、本当だと思います。現に、エルソレイユ、バルストロン、ヘリオバラムはグラブダル地域で崇拝されて以降、飛躍的に進歩し、上層の世界を管理する権限を手にしていました。
 これは人間という小さな範囲でも頻繁に観られる法則でしょう。多くの人間に信じられている人間は、信じられるに足る力を備えていきます。
 それが創造主に対しても適応されるのではないでしょうか?」

 「創造主が人類に信奉されることで自身の力を高めていく...........父の存在が遥か彼方すぎてどのような事情があるか想像もできないね。
 ただ、ストラウスの言う事が真実かどうかは分からない」
 マルシャは腕を組み、苦悩をにじませた顔をしながら言う。
 
 「はい、その通りです。私しかアースにいた賢者の存在を知るものがいない以上、この話が真実かどうかをユリアナやマルシャが判断できる材料は少ないですね。
 しかし、もし、ユリアナやマルシャが真実を知る必要があるなら、こちら側の創造主が導いてくれるでしょう。

 実は、私はすでに、ユリアナ、マルシャがそちら側の創造主の洗脳を脱し、世界の真相に近づくのを確信しています」

 「え..........なんで??」
 私は怪訝そうに聴く。

 「そもそも、こんな話をまじめに取り合う天使はいませんよ。それはユリアナ、マルシャがそちら側の創造主の洗脳を脱し始めていることを意味します。

 それに、ユリアナ、マルシャがアースに転生するきっかけになった《エルトロン主導によるパーゲトル襲撃事件》あれは、こちら側の創造主の導きがあったのは間違いないでしょう。

 その事件に関与した天使は全てアースに転生させられましたが、天使や神々達はその事を、”彼らは罪滅ぼしのため父に転生させられた”と信じています。
 しかし、実際は、そちら側の創造主の洗脳から脱却させるため、こちら側の創造主が仕掛けたものである可能性が高いです」

 「ええぇえええええ!!??」
 私もマルシャも驚きの声をあげる。
 今までの話も十分、驚きだったけど、これが一番である。



 私は何を信じたらいいの?

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