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マルフィに起きた大異変
56話 ヤギの仮面を被ったミイラと遭遇
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ナメクジの群れを呆然と眺めていると.....
げげっ!!
天井一面のナメクジがこっちに大移動を始めた。
背中の虹色の線を光らせながら、のそのそとこちらに近づいてくる。
先頭にいる数匹のナメクジが怖いドロドロを投下し、私の数メートル先に落ちてきた。
水しぶきが飛ぶのを戦慄しつつ見つめる私。
え、え?.......あ...............
いやだぁあああああーーーーーー!!
あまりの恐怖のあまり背を向けて逃げる。
あのナメクジは獲物が来るのを待つだけじゃなくて、追ったりもするの??
ど..どうしよう。
幸いだけど、足は遅いみたいだから逃げようと思えば逃げられる。
ただ、どうやって先に進めばいいんだろう?
私は恐怖を落ち着けつつ、岩から岩へ飛び移りながら考える。
どうするか考えろ、考えろ、かんが..つるっ!!!
大岩の上で足を滑らせた。
あー!!!!
ごろんごろん、ドカ!!バキィ!!ズドドドド!バキ!ボグゥ!!
うう.........大岩から足を滑らせて落ちただけなのに、何でこんなに痛そうな音が続いたんだろう。上を見上げると、自分が落ちてきたと見られる穴があり、周囲を見渡すと暗闇だった。
キャー!!!何も見えない!
と、慌てた瞬間、周囲が明るくなった。
どうやらここは、さきほどの大きな空洞とは違い、人一人通るのがやっとな細長い空洞らしい。
周さんが明かりをつけてくれたみたい。
ん....そういえば、あんな所から落ちてきたのに、何で私痛くないんだろう。
天井の穴を見つつ考える。
あ、背中にはムスカリ君がいたんだった!!
「ムスカリ君、大丈夫!?」
「う....うん。だいじょうぶだよ」
ムスカリ君も驚いて周囲を見回しているけど、痛くはなさそうだ。
そういえば洞窟に入った後に”こけた時のために魔法障壁も二人にかけておこう”って心の内側から声がしたけど、周さんのお陰なのかも。
手を眺めると、わずかに透明な膜のようなものが見える。
痛くなかった理由はそれで間違いないらしい。
それにしても......
ここから先はどうしようか。
あ、でも、考えようによっては、これでナメクジの群れをかわして先へ進む事ができるかもしれない。
方向からすると、多分、私達が進むはずだった方向に目の前の空洞が伸びている。
地下を進んでいけば元居た大空洞に出ることもできるんじゃない?
普通だったらそんな博打はしない所だけど、目の前の空洞に意識が吸い寄せられる感じがするのだ。経験則からすると、こういう感覚のある時は瞑想しようが何しようが、考えは変わらない。
やってみるしかないのだ。
再度、ムスカリ君を背負い、私は目の前に伸びていく狭い空洞に足を踏み出した。
・・・・・・・・
ザッザッザッザ。
私の歩く音が空洞内に響き渡る。
空洞内の壁や地面の色はこの辺り薄茶色の明るい岩肌である。
歩いていくと少しずつ天井の高さが上がってきた。
空洞が少しずつ広くなっていく。
え......なにあれ??
先の方に、洞窟の中にあるとは思えないようなものが見えたような。
私はその”もの”を確認すべく駆け足で前進していく。
タタタタタタ!
駆け足の音が空洞内に響き渡る。
ま、間違いないわ。
あれは、ピラミッド!!
私は大空洞の中に存在するピラミッドに目を奪われた。
狭い空洞が終わり大空洞に出たのだが、こんなものがあるとは......
そのピラミッドはアースに存在するものとは違い、白く輝いている。
アースにあるのと同様に、頂上までの高さは150メートル近いのではないか。
この空洞自体がピラミッドのために存在しているように感じられるほど、丁度良くおさまっている。
確か....ピラミッドは約4500年前の建設当時、化粧版や化粧石によって白く美しく輝いていたという話である。
その事と関係しているのだろうか。
ここがアースの住民の意識が作り上げた世界なのであれば、これはその時代の誰かの意識が作り上げた実体ということなのだろうか?
私が美しいピラミッドを眺めていると、視界の隅に何か動くものが見えた。
人型の何か茶色く汚れた物がくねくね歩いて.......こちらに近づいてくる。
私の背筋は凍り付いた。
汚い布が全身に巻かれた禍々しい姿。
ミイラである。
しかも、よく見渡すと、あちらこちらからミイラがくねくね不自然な歩きで近づいてくる......
ひ....ひぃいいいいいいい!!!
身の毛のよだつ光景。
ホラー映画が現実のものになってしまった。
私はホラー映画を観れば、その晩には十中八九、映画で見たようなモンスターに夢の中で襲われていた。だからホラー映画は受け付けなくなっていた。
そんな自分が、まさか現実にこんな状況に置かれるなんて......
私は元来た入り口へと戻ろうと全力で走る!!
ミイラ達からはまだ離れている。
入り口まで.....あともう少し........
全てがスローモーションに見える中、私は無意識に目の前の入り口に手を伸ばした。
その瞬間である。
背後で何か重く暗い何かが炸裂したのが分かる。
周さんの力で大空洞全体が明るいのだが、目の前の壁に黒い飛沫のようなものが飛び散ったように感じた。
それと同時に、目の前の入り口に赤黒い膜のようなものが出現した。
え!!?なにこれ!?
私は止まる事ができず、入り口に飛び込もうとした勢いのまま赤黒い膜に触れる。
右腕を横にしてガードするようにこの赤黒い膜に触れたのだが、何か弾力のある物に触れる感触と共に、おぞましい熱さと痛みが右腕に押し寄せた。
「痛あっ!!!!」
うわあぁああああ!!熱い熱い熱い!
私は赤黒い膜から飛び退いた。
その膜の表面は、赤黒い絵の具を水面に落としたように流動していて、まるで阿鼻叫喚している亡霊達を映しているような恐ろしさがある。
咄嗟に出た言葉は控えめだったけど、信じがたいほどに痛い。
高い所から落下しても魔法障壁により痛く無かったのがウソのようである。
通過するなんて絶対無理だ。
私は後ろを振り向いた。
すると、ピラミッドの下段に強い存在感を放つミイラが立っていた。
このミイラは他のミイラのように布が汚れておらず白く見える。
立ち姿も背筋が伸びていて他のミイラと違い、何らかの意思を感じる。
右手に黒曜石のようなものが先端に付いた杖を持ち.....頭部をヤギの頭蓋骨のような仮面が覆っている。悪魔崇拝の儀式にでも使われそうなやつ。
あのミイラが入り口に赤黒い膜を張って、私達を閉じ込めたんだ。
なぜか知らないが、私はそう確信した。
うぅうぅぅ......怖い...怖いよぉ.....
すでに私の心は恐怖に押しつぶされている。
足がガクガク震え、目からは涙が滲んでいた。
もはや思考停止のまま、微動だにしないヤギミイラを震えながら見つめるしかない私。
恐怖のあまり、もはや生存を諦めかけたその時である。
声が聴こえた。
心の内側からではない。
背中からである。
ムスカリ君だ。
「お姉ちゃん、だ、大丈夫だよ。あいつら、怖いのは見た目だけだから....」
と、呟く声が聴こえた。
ただ、私のお腹に回した手がわずかに震えている。
ムスカリ君の言葉と手の震えで我に返った。
恐怖のあまりムスカリ君を背負っていた事を忘れていたし、ムスカリ君もいるのに生存を諦めるなど自分勝手も甚だしい。
ムスカリ君を守らなくちゃ!!
という想いが湧いてきた瞬間、急激に心に静寂が訪れた。
それと同時に、心の内側から....
この状況を脱するにはヤギミイラを倒すしかない。
そのための方法として、私の攻撃手段としては強化した拳や足による物理攻撃。
または、適性のある時空魔法が存在する。
時空魔法とは文字通り、時間や空間をコントロールする魔法である。
環境を超越した精神を持つ人間であるほどその適正は高くなり、私は長年の瞑想の経験によりその条件をある程度満たしている....
という周さんからの声が聴こえた。
ええー.........時空魔法の使い方なんて分からないし。
どうしたらいいの?
と、考えがよぎった瞬間、脳裏に、アザラシが撃ち出した水球を操作し、檻に閉じ込めた時の映像が浮かんだ。
あっ、そうか。
あれは水球をコントロールしたというよりは、空間を操作したことによりそこに含まれた水球の動きや性質を変化させていたってことなんだわ。
じゃあ、時空魔法を使う場合はイメージする事で発動することができるのかもしれない。
時間についてはまだよく分からないけど、考えてる余裕は無いわ。
「やれる。やれる....やれる!!」
と言い、頬っぺたを両手でパンパンする。
私は正面にいるヤギミイラを見据え、睨みつけた。
うわ、なにあの仮面。やっぱり怖い。やだぁ。
げげっ!!
天井一面のナメクジがこっちに大移動を始めた。
背中の虹色の線を光らせながら、のそのそとこちらに近づいてくる。
先頭にいる数匹のナメクジが怖いドロドロを投下し、私の数メートル先に落ちてきた。
水しぶきが飛ぶのを戦慄しつつ見つめる私。
え、え?.......あ...............
いやだぁあああああーーーーーー!!
あまりの恐怖のあまり背を向けて逃げる。
あのナメクジは獲物が来るのを待つだけじゃなくて、追ったりもするの??
ど..どうしよう。
幸いだけど、足は遅いみたいだから逃げようと思えば逃げられる。
ただ、どうやって先に進めばいいんだろう?
私は恐怖を落ち着けつつ、岩から岩へ飛び移りながら考える。
どうするか考えろ、考えろ、かんが..つるっ!!!
大岩の上で足を滑らせた。
あー!!!!
ごろんごろん、ドカ!!バキィ!!ズドドドド!バキ!ボグゥ!!
うう.........大岩から足を滑らせて落ちただけなのに、何でこんなに痛そうな音が続いたんだろう。上を見上げると、自分が落ちてきたと見られる穴があり、周囲を見渡すと暗闇だった。
キャー!!!何も見えない!
と、慌てた瞬間、周囲が明るくなった。
どうやらここは、さきほどの大きな空洞とは違い、人一人通るのがやっとな細長い空洞らしい。
周さんが明かりをつけてくれたみたい。
ん....そういえば、あんな所から落ちてきたのに、何で私痛くないんだろう。
天井の穴を見つつ考える。
あ、背中にはムスカリ君がいたんだった!!
「ムスカリ君、大丈夫!?」
「う....うん。だいじょうぶだよ」
ムスカリ君も驚いて周囲を見回しているけど、痛くはなさそうだ。
そういえば洞窟に入った後に”こけた時のために魔法障壁も二人にかけておこう”って心の内側から声がしたけど、周さんのお陰なのかも。
手を眺めると、わずかに透明な膜のようなものが見える。
痛くなかった理由はそれで間違いないらしい。
それにしても......
ここから先はどうしようか。
あ、でも、考えようによっては、これでナメクジの群れをかわして先へ進む事ができるかもしれない。
方向からすると、多分、私達が進むはずだった方向に目の前の空洞が伸びている。
地下を進んでいけば元居た大空洞に出ることもできるんじゃない?
普通だったらそんな博打はしない所だけど、目の前の空洞に意識が吸い寄せられる感じがするのだ。経験則からすると、こういう感覚のある時は瞑想しようが何しようが、考えは変わらない。
やってみるしかないのだ。
再度、ムスカリ君を背負い、私は目の前に伸びていく狭い空洞に足を踏み出した。
・・・・・・・・
ザッザッザッザ。
私の歩く音が空洞内に響き渡る。
空洞内の壁や地面の色はこの辺り薄茶色の明るい岩肌である。
歩いていくと少しずつ天井の高さが上がってきた。
空洞が少しずつ広くなっていく。
え......なにあれ??
先の方に、洞窟の中にあるとは思えないようなものが見えたような。
私はその”もの”を確認すべく駆け足で前進していく。
タタタタタタ!
駆け足の音が空洞内に響き渡る。
ま、間違いないわ。
あれは、ピラミッド!!
私は大空洞の中に存在するピラミッドに目を奪われた。
狭い空洞が終わり大空洞に出たのだが、こんなものがあるとは......
そのピラミッドはアースに存在するものとは違い、白く輝いている。
アースにあるのと同様に、頂上までの高さは150メートル近いのではないか。
この空洞自体がピラミッドのために存在しているように感じられるほど、丁度良くおさまっている。
確か....ピラミッドは約4500年前の建設当時、化粧版や化粧石によって白く美しく輝いていたという話である。
その事と関係しているのだろうか。
ここがアースの住民の意識が作り上げた世界なのであれば、これはその時代の誰かの意識が作り上げた実体ということなのだろうか?
私が美しいピラミッドを眺めていると、視界の隅に何か動くものが見えた。
人型の何か茶色く汚れた物がくねくね歩いて.......こちらに近づいてくる。
私の背筋は凍り付いた。
汚い布が全身に巻かれた禍々しい姿。
ミイラである。
しかも、よく見渡すと、あちらこちらからミイラがくねくね不自然な歩きで近づいてくる......
ひ....ひぃいいいいいいい!!!
身の毛のよだつ光景。
ホラー映画が現実のものになってしまった。
私はホラー映画を観れば、その晩には十中八九、映画で見たようなモンスターに夢の中で襲われていた。だからホラー映画は受け付けなくなっていた。
そんな自分が、まさか現実にこんな状況に置かれるなんて......
私は元来た入り口へと戻ろうと全力で走る!!
ミイラ達からはまだ離れている。
入り口まで.....あともう少し........
全てがスローモーションに見える中、私は無意識に目の前の入り口に手を伸ばした。
その瞬間である。
背後で何か重く暗い何かが炸裂したのが分かる。
周さんの力で大空洞全体が明るいのだが、目の前の壁に黒い飛沫のようなものが飛び散ったように感じた。
それと同時に、目の前の入り口に赤黒い膜のようなものが出現した。
え!!?なにこれ!?
私は止まる事ができず、入り口に飛び込もうとした勢いのまま赤黒い膜に触れる。
右腕を横にしてガードするようにこの赤黒い膜に触れたのだが、何か弾力のある物に触れる感触と共に、おぞましい熱さと痛みが右腕に押し寄せた。
「痛あっ!!!!」
うわあぁああああ!!熱い熱い熱い!
私は赤黒い膜から飛び退いた。
その膜の表面は、赤黒い絵の具を水面に落としたように流動していて、まるで阿鼻叫喚している亡霊達を映しているような恐ろしさがある。
咄嗟に出た言葉は控えめだったけど、信じがたいほどに痛い。
高い所から落下しても魔法障壁により痛く無かったのがウソのようである。
通過するなんて絶対無理だ。
私は後ろを振り向いた。
すると、ピラミッドの下段に強い存在感を放つミイラが立っていた。
このミイラは他のミイラのように布が汚れておらず白く見える。
立ち姿も背筋が伸びていて他のミイラと違い、何らかの意思を感じる。
右手に黒曜石のようなものが先端に付いた杖を持ち.....頭部をヤギの頭蓋骨のような仮面が覆っている。悪魔崇拝の儀式にでも使われそうなやつ。
あのミイラが入り口に赤黒い膜を張って、私達を閉じ込めたんだ。
なぜか知らないが、私はそう確信した。
うぅうぅぅ......怖い...怖いよぉ.....
すでに私の心は恐怖に押しつぶされている。
足がガクガク震え、目からは涙が滲んでいた。
もはや思考停止のまま、微動だにしないヤギミイラを震えながら見つめるしかない私。
恐怖のあまり、もはや生存を諦めかけたその時である。
声が聴こえた。
心の内側からではない。
背中からである。
ムスカリ君だ。
「お姉ちゃん、だ、大丈夫だよ。あいつら、怖いのは見た目だけだから....」
と、呟く声が聴こえた。
ただ、私のお腹に回した手がわずかに震えている。
ムスカリ君の言葉と手の震えで我に返った。
恐怖のあまりムスカリ君を背負っていた事を忘れていたし、ムスカリ君もいるのに生存を諦めるなど自分勝手も甚だしい。
ムスカリ君を守らなくちゃ!!
という想いが湧いてきた瞬間、急激に心に静寂が訪れた。
それと同時に、心の内側から....
この状況を脱するにはヤギミイラを倒すしかない。
そのための方法として、私の攻撃手段としては強化した拳や足による物理攻撃。
または、適性のある時空魔法が存在する。
時空魔法とは文字通り、時間や空間をコントロールする魔法である。
環境を超越した精神を持つ人間であるほどその適正は高くなり、私は長年の瞑想の経験によりその条件をある程度満たしている....
という周さんからの声が聴こえた。
ええー.........時空魔法の使い方なんて分からないし。
どうしたらいいの?
と、考えがよぎった瞬間、脳裏に、アザラシが撃ち出した水球を操作し、檻に閉じ込めた時の映像が浮かんだ。
あっ、そうか。
あれは水球をコントロールしたというよりは、空間を操作したことによりそこに含まれた水球の動きや性質を変化させていたってことなんだわ。
じゃあ、時空魔法を使う場合はイメージする事で発動することができるのかもしれない。
時間についてはまだよく分からないけど、考えてる余裕は無いわ。
「やれる。やれる....やれる!!」
と言い、頬っぺたを両手でパンパンする。
私は正面にいるヤギミイラを見据え、睨みつけた。
うわ、なにあの仮面。やっぱり怖い。やだぁ。
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