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マルフィに起きた大異変
58話 カウンター型の時間魔法
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あの黒球に触れたら私は一瞬で消えちゃうの?
マルフィで肉体を無くしたら、私はどうなるのだろう?
様々な考えが脳裏をよぎるが、その全てが私にとって足枷になるのは間違いない。
真相界においては恐怖に突き動かされた行動は最悪の結果を産む。
だが、やはり死への恐怖は大きい。
特に得体のしれない攻撃によるものなら尚更である。
怖いよぅ........
ああ!!
足がすくんでいる間に、ヤギミイラが二つ目の黒球を飛ばしてきた!!
足をもつれさせながら、横に一回転しつつ回避した。
回避中に、私達の元居た場所を黒球が跡形も無く消失させたのが見えた。
背中のムスカリ君は大丈夫だろうか?でも、周さんの魔法障壁のお陰なのか、いくら地面に体を打ち付けても痛く無い。おそらく、ムスカリ君も同様だろう。
その事実に周さんの存在を感じて、少しだけ冷静さを取り戻してきた。
ヤギミイラの動きをしっかり見れば対処できるはず!!
と、アイツが三つ目の黒球を飛ばす瞬間を見定めようと目を向ける。
ヤギミイラは視線の先にいて、ただ立っているだけだ。
まだ次の攻撃はしないのかしら?
が.......何か違和感を感じた。
アイツの傍に黒球が残り2つ浮かんでいるはずなのだけど、1つしか浮かんでいない。
え.........ウソ......
その事実に私の背筋は凍り付く。
周囲を見渡そうと左を見ると、すでに50センチほどの距離まで黒球が迫ってる!?
直線に飛ぶ黒球に私の注意を引きつけ、別の黒球を操作し私の視界の外から飛ばしていたらしい。
もはや回避など出来るはずもない。
思わず両手で全面を庇い、顔を背け目を瞑った。
ごめん、ムスカリ君....周さん.........
そして、私の脳裏には走馬灯が灰色の映像で一気に流れる。
アースに居た時にいつまでも母親の帰りを待っていたこと。
アナント君のこと。私に声をかけたおじさんのこと。
写真家を目指していた時のこと。
ヨガ教室をしていた時のこと。
ヒマラヤでの最後のこと。
グランディで友達が沢山出来たこと。
看護師の仕事が楽しかったこと。
周さんに会った事......
ん??..........走馬灯長すぎない??
私は黒球の方に顔を向ける。
黒球はダンゴムシが歩くほどの速さで接近してきている。
なぜだか、世界がスローモーションになっていた。
視界の片隅で地面が光っていたので目を向けると、足元の魔法陣だった。
私が目を向けた瞬間、魔法陣は消えた。
ふらつきつつ、急いで黒球の直撃ルートから回避した。
ミイラも黒球もいない場所へと10mほど離れた場所へ移動する。
私が回避した後も、まだ黒球はノロノロと進んでいっている。
これは周さんが私を通じて発動してくれたのかしら。
魔法陣が出たという事は、私が時間魔法を習得できたってこと?
すると、心の内側から
”時間をスローにする方法は、世界の速度が落ちたようイメージするのみ。ただ、この魔法に関しては分からない事が多いから過信しない方がいい”
という思いが湧いてきた。
おそらく、周さんからの助言だろう。
はぁはぁ........今になって緊張が解け、息切れがした。
どうやらムスカリ君はスローモーションの状態でも普通に動けるみたい。
今も、この状況に戸惑ってキョロキョロしつつ私にしがみついてる。
普通に動けるのは、発動者である私の身体と接触していたからなのかな?
分からない事が多い。
一番気になるのは、このスローモーションはいつまで続くのかなってこと。
それもまだ分からないから、今できることをしておこう。
今の内にムスカリ君を物陰に連れていって隠れていてもらう事にした。
強化された足で大岩の陰にムスカリ君を隠す。
心細そうな顔をしていたが、おそらく、私といるよりも遥かに安全だろう。
今だって二人まとめて死にそうになってたんだから。
万が一.....私がやられても、もしかしたら周さんが助ける事もできるかもしれないし。
私はムスカリ君を隠した後に、ムスカリ君を隠した場所から離れる。
スローモーションが続く内にヤギミイラを攻撃する事を考えた。
が...........その瞬間、スローモーションが解けた!!?
黒球の速度が戻り、私が元居た場所へと着弾した。
黒球は直径3メートル付近まで膨れ上がり、無音のまま地面をえぐり取った。
音を伝える空気まで飲み込んでいるのかもしれない。
ヤギミイラを遠目から観ると動揺の色が初めて伺えた。
一瞬、私を見失い周囲を見渡していたが、私を見つけたようだ。
私の背にムスカリ君がいない事に関してどう考えているのかは分からない。
うーん.....こんなことなら私も別の場所に隠れておくべきだった。
まあ、スローモーションが解ける条件なんて知らないから、仕方がない。
それにしても.......
私がヤギミイラへの攻撃方法を考えた瞬間、スローモーションが解けた。
攻撃しようという意図とスローモーションは共存できないということ?
となると、攻撃手段は通常時に考える必要がある。
実質、戦闘においてスローモーション自体は回避にしか使えないということだ。
しかし、逆を言えば、通常時にスローモーションが解けた後の攻撃手段を考えておけば、姿を隠した場所から奇襲をかけられるということなのだろうか?
私の貧弱な攻撃でもダメージを与えられるかも!
私は側にあるボーリングの球ほどの岩石を片手で持った。
強化された力によってグッと指を岩にめり込ませ、しっかり掴む。
試しにそのままの状態で時間がスローになったイメージをする。
が.........何も起こらない。やはり攻撃の意図があるからだろう。
私を発見し観察していた様子のヤギミイラだったが、残りの1つの黒球をこちらに発射してきた。
私は急いで世界がスローになるイメージをする。
この場合、ミイラや黒球がゆっくり動くのを脳裏に思い浮かべる。
黒球がピタリと動きを止めた。
そしてダンゴ虫が歩くような速度へと変わった。
ヤギミイラはいつも動きが少ないから分かりづらいが、他のミイラが変な姿勢のまま、すごくゆっくりと動いている。
やったぁ!!!スローモーションになった!!
現状では、これは、回避・カウンター型の能力といっても良いかもしれない。
相手からの攻撃に対してじゃないと発動できないのかも。
まだ全然よく分からないけど。
私は大きい岩を片手に持ち、ヤギミイラの15メートルほど後方へと走って移動した。
そして、この岩が砲弾のように飛び、ヤギミイラの仮面の後頭部に直撃するイメージを浮かべた。
瞬間、スローモーションが解ける。
同時に、私の手のひらに魔法陣が描かれ、岩石はヤギミイラの後頭部へと一直線に飛び......
ボグゥッ!という鈍い音と共に直撃した!!!
ヤギミイラの仮面は砕け散り、前に両手両膝をつき倒れる。
黒球も私が元居た場所へと着弾し、地面を抉り消失したのが見えた。
うふふふ......やっと一矢報いてやったわぁ!!!
ん.....?ヤギミイラの仮面が粉々になった後、黄土色の何かが出てきた。
え、あれって、金髪?
後頭部が少し陥没して、血を流しているが、あれは紛れもなく金髪である。
え、え、なんで??
ヤギミイラはゆっくり立ち上がり.......こちらへと向き直った。
少し長めでウェーブがかったボサボサの金髪、無精ひげの生えた顎、ニヤリと笑うその表情。
その顔は紛れもなく人間だった。欧米の顔つきだわ。
ただ..........眼だけは人間とは違い、白目に当たる部分が赤かった。
結膜炎とかそういうレベルじゃなく、完全に真っ赤である。
「ハハッ......こんな場所で人間に会うと思わなかったよ。お前も俺を拷問しに来たのか?」
目の前の”人間”が言葉を発した。
マルフィで肉体を無くしたら、私はどうなるのだろう?
様々な考えが脳裏をよぎるが、その全てが私にとって足枷になるのは間違いない。
真相界においては恐怖に突き動かされた行動は最悪の結果を産む。
だが、やはり死への恐怖は大きい。
特に得体のしれない攻撃によるものなら尚更である。
怖いよぅ........
ああ!!
足がすくんでいる間に、ヤギミイラが二つ目の黒球を飛ばしてきた!!
足をもつれさせながら、横に一回転しつつ回避した。
回避中に、私達の元居た場所を黒球が跡形も無く消失させたのが見えた。
背中のムスカリ君は大丈夫だろうか?でも、周さんの魔法障壁のお陰なのか、いくら地面に体を打ち付けても痛く無い。おそらく、ムスカリ君も同様だろう。
その事実に周さんの存在を感じて、少しだけ冷静さを取り戻してきた。
ヤギミイラの動きをしっかり見れば対処できるはず!!
と、アイツが三つ目の黒球を飛ばす瞬間を見定めようと目を向ける。
ヤギミイラは視線の先にいて、ただ立っているだけだ。
まだ次の攻撃はしないのかしら?
が.......何か違和感を感じた。
アイツの傍に黒球が残り2つ浮かんでいるはずなのだけど、1つしか浮かんでいない。
え.........ウソ......
その事実に私の背筋は凍り付く。
周囲を見渡そうと左を見ると、すでに50センチほどの距離まで黒球が迫ってる!?
直線に飛ぶ黒球に私の注意を引きつけ、別の黒球を操作し私の視界の外から飛ばしていたらしい。
もはや回避など出来るはずもない。
思わず両手で全面を庇い、顔を背け目を瞑った。
ごめん、ムスカリ君....周さん.........
そして、私の脳裏には走馬灯が灰色の映像で一気に流れる。
アースに居た時にいつまでも母親の帰りを待っていたこと。
アナント君のこと。私に声をかけたおじさんのこと。
写真家を目指していた時のこと。
ヨガ教室をしていた時のこと。
ヒマラヤでの最後のこと。
グランディで友達が沢山出来たこと。
看護師の仕事が楽しかったこと。
周さんに会った事......
ん??..........走馬灯長すぎない??
私は黒球の方に顔を向ける。
黒球はダンゴムシが歩くほどの速さで接近してきている。
なぜだか、世界がスローモーションになっていた。
視界の片隅で地面が光っていたので目を向けると、足元の魔法陣だった。
私が目を向けた瞬間、魔法陣は消えた。
ふらつきつつ、急いで黒球の直撃ルートから回避した。
ミイラも黒球もいない場所へと10mほど離れた場所へ移動する。
私が回避した後も、まだ黒球はノロノロと進んでいっている。
これは周さんが私を通じて発動してくれたのかしら。
魔法陣が出たという事は、私が時間魔法を習得できたってこと?
すると、心の内側から
”時間をスローにする方法は、世界の速度が落ちたようイメージするのみ。ただ、この魔法に関しては分からない事が多いから過信しない方がいい”
という思いが湧いてきた。
おそらく、周さんからの助言だろう。
はぁはぁ........今になって緊張が解け、息切れがした。
どうやらムスカリ君はスローモーションの状態でも普通に動けるみたい。
今も、この状況に戸惑ってキョロキョロしつつ私にしがみついてる。
普通に動けるのは、発動者である私の身体と接触していたからなのかな?
分からない事が多い。
一番気になるのは、このスローモーションはいつまで続くのかなってこと。
それもまだ分からないから、今できることをしておこう。
今の内にムスカリ君を物陰に連れていって隠れていてもらう事にした。
強化された足で大岩の陰にムスカリ君を隠す。
心細そうな顔をしていたが、おそらく、私といるよりも遥かに安全だろう。
今だって二人まとめて死にそうになってたんだから。
万が一.....私がやられても、もしかしたら周さんが助ける事もできるかもしれないし。
私はムスカリ君を隠した後に、ムスカリ君を隠した場所から離れる。
スローモーションが続く内にヤギミイラを攻撃する事を考えた。
が...........その瞬間、スローモーションが解けた!!?
黒球の速度が戻り、私が元居た場所へと着弾した。
黒球は直径3メートル付近まで膨れ上がり、無音のまま地面をえぐり取った。
音を伝える空気まで飲み込んでいるのかもしれない。
ヤギミイラを遠目から観ると動揺の色が初めて伺えた。
一瞬、私を見失い周囲を見渡していたが、私を見つけたようだ。
私の背にムスカリ君がいない事に関してどう考えているのかは分からない。
うーん.....こんなことなら私も別の場所に隠れておくべきだった。
まあ、スローモーションが解ける条件なんて知らないから、仕方がない。
それにしても.......
私がヤギミイラへの攻撃方法を考えた瞬間、スローモーションが解けた。
攻撃しようという意図とスローモーションは共存できないということ?
となると、攻撃手段は通常時に考える必要がある。
実質、戦闘においてスローモーション自体は回避にしか使えないということだ。
しかし、逆を言えば、通常時にスローモーションが解けた後の攻撃手段を考えておけば、姿を隠した場所から奇襲をかけられるということなのだろうか?
私の貧弱な攻撃でもダメージを与えられるかも!
私は側にあるボーリングの球ほどの岩石を片手で持った。
強化された力によってグッと指を岩にめり込ませ、しっかり掴む。
試しにそのままの状態で時間がスローになったイメージをする。
が.........何も起こらない。やはり攻撃の意図があるからだろう。
私を発見し観察していた様子のヤギミイラだったが、残りの1つの黒球をこちらに発射してきた。
私は急いで世界がスローになるイメージをする。
この場合、ミイラや黒球がゆっくり動くのを脳裏に思い浮かべる。
黒球がピタリと動きを止めた。
そしてダンゴ虫が歩くような速度へと変わった。
ヤギミイラはいつも動きが少ないから分かりづらいが、他のミイラが変な姿勢のまま、すごくゆっくりと動いている。
やったぁ!!!スローモーションになった!!
現状では、これは、回避・カウンター型の能力といっても良いかもしれない。
相手からの攻撃に対してじゃないと発動できないのかも。
まだ全然よく分からないけど。
私は大きい岩を片手に持ち、ヤギミイラの15メートルほど後方へと走って移動した。
そして、この岩が砲弾のように飛び、ヤギミイラの仮面の後頭部に直撃するイメージを浮かべた。
瞬間、スローモーションが解ける。
同時に、私の手のひらに魔法陣が描かれ、岩石はヤギミイラの後頭部へと一直線に飛び......
ボグゥッ!という鈍い音と共に直撃した!!!
ヤギミイラの仮面は砕け散り、前に両手両膝をつき倒れる。
黒球も私が元居た場所へと着弾し、地面を抉り消失したのが見えた。
うふふふ......やっと一矢報いてやったわぁ!!!
ん.....?ヤギミイラの仮面が粉々になった後、黄土色の何かが出てきた。
え、あれって、金髪?
後頭部が少し陥没して、血を流しているが、あれは紛れもなく金髪である。
え、え、なんで??
ヤギミイラはゆっくり立ち上がり.......こちらへと向き直った。
少し長めでウェーブがかったボサボサの金髪、無精ひげの生えた顎、ニヤリと笑うその表情。
その顔は紛れもなく人間だった。欧米の顔つきだわ。
ただ..........眼だけは人間とは違い、白目に当たる部分が赤かった。
結膜炎とかそういうレベルじゃなく、完全に真っ赤である。
「ハハッ......こんな場所で人間に会うと思わなかったよ。お前も俺を拷問しに来たのか?」
目の前の”人間”が言葉を発した。
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