輪廻を終える方法~無限進化と創造神の法則~

たぶり

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マルフィに起きた大異変

59話 ヤギミイラとの決着

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 ヤギミイラは魔物じゃなかったの?
 今まで闘っていたのは人間?人間に大けがをさせてしまった!!
 何の目的で私を襲ってきたの?

 相手の言っている”拷問”って何のこと?

 ミイラと思っていた相手が人間であった事に混乱し、心の中で様々な考えが氾濫を起こしている。
 

 「ククク.....まあいい。お前が何者であれ俺は殺す。それも考えうる限り残虐な方法でなぁ....!!俺が究極の悪魔になるための踏み台になれるんだ、光栄に思えよォ」

 そういうと、焦点の合わない狂気に満ちた真っ赤な眼に笑みを浮かべた。
 
 -------------------------
 野田周視点

 時間魔法を発動させることでアリシャの危機を救えた。

 黒球がアリシャに迫った時、俺は”時間よ止まってくれ!”と心底願った。
 その瞬間、アリシャの足元に魔法陣が現れ、世界がスローモーションになった。

 イドのやっていた事と似ている。もしかしたら、イドも同じ適性の持ち主なのだろうか。

 ただ、なぜ、攻撃を回避する時にしか発動しないのか?と疑問に感じた瞬間.......

 心の内側から、

 ”アリシャの場合、相手をあまり攻撃したくない精神構造と同様に、攻撃の意図を持った瞬間に時間停滞オラアダージオが解けるようになっている。だが、正当防衛であれば攻撃に躊躇は無い一面もあるのでカウンターとしての使い方はできるようになっている”

 という思いが湧いてきた。
 時間停滞オラアダージオって....こういうのに名前つけるの、恥ずかしいような、カッコイイような。

 イドなのか分からないが、俺がアリシャを見守るように、俺を導く誰かによる回答だろう。

 魔法の性質はそのまま精神の性質を示すってことか。
 納得!



 それにしても、目の前の男、どういうことだ?

 ミイラの魔物に転生しているのかと思ったら、人間の顔をしている。
 魔人にしても、虐殺ガニにしても、これまでの事例からすれば魔物は魔物だった。
 
 しかし、目の前のコイツは包帯で身体をグルグル巻きにされているが人間の顔をしている。
 が......眼が真っ赤である。
 
 人間の白目に当たる部分に色があるというと、悪魔が思い当たる。
 それが真っ赤になるというのは何を意味するのだろうか?

 ..........なんであれ、今はアリシャを救うのが第一だ。


 相手が元人間である事が分かった時、アリシャはどうするだろうか。

 ------------------------------
 
 アイツが気持ちの悪い笑みを浮かべた瞬間......
 
 アイツの足元に魔法陣が描かれた。

 その瞬間、相手の姿が消えた。

 え!!もしかして、瞬間移動!?そんなことできるの??
 左右、天井などを見渡したがアイツはいない。

 もしかしたら、後ろ!?
 と、振り返ろうとした瞬間........

 「ヒヒ....お前はどんな声で泣くのかなァ」
 
 近くのどこか分からない場所から声がした。
 

 後ろの相手の顔を見る前に私の右わき腹に重い衝撃が走った。
 私は左に数メートルほど吹き飛ばされ、ピラミッドの段を転落した。
 
 身体を起こした後、振り返ろうとした方向に目をやると、アイツは居なかった。

 
 「どういう小細工で俺の消滅黒球ダークブレイザーを避けたか知らないが、これなら回避できねぇだろ」

 またよく分からない所から声がした。
 私は背筋が凍る思いをして、ひぃっ!!という声が漏れた。

 後ろを振り向くが、誰もいない。


 次の瞬間、腹部に重い衝撃が走り、弾き飛ばされピラミッドの段に叩きつけられる。
 
 うわぁ!!!

 一体何なの?なんで姿が見えないの??

 私は目に涙を溜めながら周囲を見回す。
 ただ、周さんの魔法障壁のお陰か痛みは無かった。

 しかし、瞬間移動じゃなさそうだし、相手は一体どこにいるんだろう。
 どこから攻撃を仕掛けているの?
 まさか透明になる魔法だったのかしら。

 と考えている間に、今度は右わき腹に衝撃を感じ、私は左へと吹き飛ばされ、地面を転がる。

 どうしたらいいんだろう!
 今は物理攻撃だけど、いつあの闇魔法を使われるか分からない。
 
 だけど、もしかしたら、相手は私に張られた魔法障壁の存在を知らないのかもしれない。
 効かないのに物理攻撃を続けているのがそのいい証拠だ。
 

 攻撃が効いているフリをして、アイツのタネを暴くための時間を稼ごう!

 時間魔法を使うのもいいかもしれないが、アイツがどこにいるか分からないのでは意味がない。
 それに過度に時間魔法を使って見破られるのも避けたい。


 「うぐ!!痛ぁあ!!!」と言いながら、地面で右わき腹を抑える芝居をうつ。
 
 その間、私は相手の場所を探るのではなく、自身の混乱を鎮める事にのみ集中した。

 
 「ヒヒ.....その呻きが堪らない.....もっと聴かせてくれよォ」
 
 アイツからの攻撃の際、私はアニメの声優になったつもりで、「ぐわ!!うぎゃー!!あべし!!」だの、呻き声を上げ続ける。

 アイツは自分の手で私をいたぶりたいのか他のミイラの動きを停止させている。



 いたぶられている間、私の心の内側に一つの思いが湧いてきた。

 ”アイツは私が身に着けた何かに姿を変えている”

 え?私の身に着けた何か??

 私は自身の服装を見る。
 赤い色のTシャツにジーパンと、戦闘服とはかけ離れたいつもの姿である。
 
 あれ?ん...ん!?

 何か白く細長いピラピラがTシャツの裾から出てる。

 
 これは........包帯!!!?
 私は赤いTシャツをたくし上げ、中を見ると、私のお腹に2mぐらいの包帯がグルグル巻き付いているのが分かった。

 「チッ!!もう気が付きやがったか」

 と、その包帯から声がした後、瞬時にその包帯が解け、私の目の前の空間に包帯が直立した。
 なぜか包帯の端が千切れている.....普段なら気にしないのだが、なぜか気になった。

 直立した包帯が、徐々に金髪無精ひげのあの男へと姿を変えていった。

 
 おそらく、私がアイツを見失った最初の数秒間だろう。
 その間に私の服の中に包帯として潜りこんだんだ。

 だから顔面への攻撃は一切無く、腹部や脇腹の攻撃に集中していたらしい。

 一瞬、「変態!!」って思ったが、そんな事を考え続ける余裕も無い。

 .......ん?ってことは、アイツは瞬間移動自体は実際に出来るってことなの??
 そうでないと、背後を取り、私が見てない間に包帯を潜り込ませることはできない。

 
 もし、次にアイツが消えたなら瞬間移動を疑っておいて損はないだろう。

 
 「お前......俺の攻撃が効いてないだろ」

 私の事を観察するように観ていたアイツが口にした。
 
 げげ!!ばれた!
 アイツのタネが分かった事に安心して、平然としすぎちゃった。

 
 「こんのクソアマ!!!馬鹿にしやがってェエエエ!!!」

 アイツの足元に魔法陣が広がる。

 次の瞬間、見渡す限り周囲のミイラの包帯が解け始め、中の皺皺になったミイラの姿が現れた。
 が.......そのミイラの全てが黒く変色していき、黒球へと姿を変え、宙に浮かび始めた。

 え......やだやだやだ。あれってさっきの黒球と同じ奴じゃない??

 もしかして、あのミイラって、アイツの闇エネルギーだかで作られていたものなの?
 
 何十体といたミイラの全てが黒球に変化し、均等に上空に浮かんでいる。
 今にもその何十にも及ぶ黒球は降ってきそうである。

 「悲鳴が出尽すまでいたぶろうと思ったが、もうやめだ。俺の消滅黒球ダークブレイザーで跡形も無く消してやるよォ!!」

 ぎゃー!!やめてぇ!
 アイツ、技に名前をつけるなんて恥ずかしい!と思う余裕も無く、私は時間魔法を発動した。

 世界はスローモーションになる。

 20メートルほど先の大岩の陰に隠れ、アイツから姿を隠す。


 そして、アイツへの攻撃方法を考える事でスローを解いた。

 数秒間の沈黙。

 見つかるのが嫌で向こうを伺う事ができないが、アイツは私を見失っていることだろう。
 しかし、心の奥で”包帯の端の千切れに警戒したほうがいい”という思いがざわついている。

 私は嫌な予感がして、後ろを振り返った。
 
 次の瞬間、私の目の前の地面に魔法陣が出現し.......
 大きな黒球を頭上に浮かべたアイツが瞬間移動してきた!!

 黒球に恐怖し.........いやだ!!やめて!!!!と、反射的に、地面が尖りアイツを串刺しにするイメージが浮かんだ。

 次の瞬間、地面が鋭利な槍のようになり......アイツの心臓辺りを貫いた。

 「うがぁあああああ!!!」

 苦痛に顔を歪める金髪の男。
 それと同時に、頭上に浮かんでいた黒球も消失した。

 え、え?どうして?
 さっきは空間魔法で串刺しにする事はできなかったのに。

 襲われたとはいえ人間を殺めてしまった。

 私はどうしたらいいか分からず、まるでこちらが責められているかのように右手の平を前にして、「あ...あ..ご....ごめん...なさい」と、か細い声で言葉をひねり出しつつ、後づさった。

 同時に、私のTシャツの中からか包帯の切れ端がヒラヒラと落ちた。

 
 「はぁはあぁ........包帯の端を...お前にしのばせた事....なぜ..分かった....」

 やはり、あの包帯の端には意味があったらしい。

 私が姿を消した場合、私の位置を探知するために服に包帯を残していたのだろう。

 ミイラを黒球に変え上空から落とすよう派手に見せつけたのも、私の時間魔法による回避を誘うためかもしれない。安心した所へ背後からの奇襲を狙っていたのだ。

 私も包帯の端を気に掛けていなければ、安心しきっていた。
 そして、奇襲により死んでいたのは私だったと思う。

 
 「チ......ぐぅうう......痛てえェ............また..出直しか。俺は諦めねえぞ!!強い悪魔に....なって...人間を..根絶やしにしてやる!!!」
 串刺しにされた場所から血が滴っている。
 
 それをみて、奇妙な違和感を覚えた。

 え?.....なぜ、血が出るの?
 グランディの住民は身体に血は通っておらず、皮膚が破れて中が見える状態になっても、白い光があるのみなんだけど。
 
 マルフィだと違うの?

 色々疑問はあるが......私は一番気になることを聴いた。

 「あなたは誰なの?なぜ、あなたは私を襲ってきたの?なぜ、人類を根絶やしにしたいの?」

 あれほどの勢いで命を狙われたら、この結末も仕方がない。
 私はそう心を落ち着けながら、質問をした。

 「俺は....ナルバ・ラミレス。お前を襲った事....人類を根絶やしにする事.....なんの意味もねえよ....俺はただ....悪魔に...なりたかっただけ...だ」

 なにそれ、悪魔になりたいから....人類を根絶やしにしたいの?
 目的と手段があべこべじゃない!
 
 まるで、悪魔になりたいと思ったから人類への憎悪が後から湧いたような。
 文字通り、悪魔の操り人形になって思考すらも支配されたような....

 そんな印象を受ける答えである。

 「ねえ....あなたはアースに住んでいたの?」
 顔と名前の印象から、ナルバがアースに居た人間なのかが気になり質問した。

 ................
 
 何の反応も返ってこない。
 半目を開けたまま絶命しているようだ。
 
 おそらく、ラミレスの魂は消えずに、また他の何かとして転生すると思う。

 悪魔に魅入られた男と私を、静寂が包む。
 ひどく後味の悪い最後である。
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