1 / 1
はじまりのプロローグ
しおりを挟む
この世界には、迷宮が存在する。
迷宮というのは、実に不思議な存在だ。
彼等は生きている。
彼等は日々成長する。
彼等は突然進化する。
彼等は魔物を生み育てる。
彼等は人を吸い寄せる。
彼等は人に刃を向ける。
彼等は人を餌として食す。
彼等は永遠の時の輪に囚われた存在。
何故、この世界に迷宮が存在しているれるのか、それは、知っていそうな神様にでも聞いてくれ。
俺は、好き勝手にしていいと言われただけだからな。そもそもそんな問になんか興味がない。
哲学じみたお堅い答えはしらん。わからん。どうでもいい。
いまさら、女神様に直接聞きたいとも思わない。知ったからどうだと言うんだ。
あの女神様には何度でも逢いたいが、女神様に直接尋ねる質問でもないだろう。
俺は俺だ。それ以外の何者でもない。
ここにも、1つの迷宮が存在してるしな。
ここの迷宮の逸話は、これまた傑作なんだ。
つべこべ言わずに黙って聞いてみてくれ。
──数限りない迷宮の中で、最も深き闇の奥底まで続く深淵の迷宮。
──人類誕生の遥か以前から存在したと伝わる最古の迷宮。
──果てしない階層が永遠に続くと思われる、無限の迷宮。
──全ての冒険者が目指す最後の頂き、人類未踏の最後の迷宮。
──人々の欲望を絶望に染め替え食らう破滅の迷宮。
──帰還者が誰1人としていない死者の墓場、生者を死へと誘う死者の迷宮。
いつしか地上の人々から、そう、幾つもの呼び名で呼ばれた存在──。
それが俺だ。
遥か昔に、ちっぼけな迷宮として異世界転生した俺。
お気に入りの呼び名は深淵の迷宮。
前世の記憶は女神様が気を利かせたのか覚えている。
だが、長い年月が過ぎたからな、記憶が朧気で、もう、微かに覚えているぐらいなんだ。
迷宮としての俺が精神の大部分を占めているから、記憶が朧気なのも、それはまあ、理解できる。
迷宮として生きていくには、人間の記憶は不要だからな。
長い年月を生きてきた俺は、人間の精神構造のままでは、多分発狂していただろう。
迷宮としての精神構造に置き換わることで、ここまで長生き出来たというわけさ。
俺の機能構造は、人間のそれとは根本的に違うしな。
敢えて人間の構造に例えるならば、
俺の中にある全ての階層が、独立した腕や身体の機能を持ち、
階層で暮らす全ての魔物が、免疫体の役割を担い、害虫の人間共から俺を守る。
迷宮の最深部にある迷宮核が、俺という存在の詰まった保管場所であり俺の頭脳とほぼ同義だろう。
そんな俺にとって今日は特別な記念日なんだ。
ようやく、この日を迎えた。
999階層の俺が1000階層の俺に進化するんだ。
盛大に祝いたい気分だが、俺の体内で暮らす魔物達に被害が出たら面倒だ。
俺が育てた魔物達の楽園を俺の力で壊すのは忍びないからな。
それよりも、今回の進化は、切りのいい数字だと思わないか。
こういう場合はやっぱ、お約束が付き物だろう。
とゆうか、迷宮に転生する前に、既に女神様と交渉を終えているから、それは大丈夫の筈だ。
あの可憐で儚げで清楚で美人で、お目にかかるだけで、心が洗い清められるほどのお姿をした女神様なら、決して忘れてないだろう。
あの神殿空間にあった装飾のセンスのよさが感じられた。
毎日変わるセンスのいい清楚な衣装も女神様の印象にピッタリマッチしてた。
アニメ声を聞いた時には、目が釘付けになり全身が沸騰して、運命の出会いが巡ってきたと何度も錯覚しそうになった。
小柄でスラッとした体型も俺の理想の女神像にピッタリ一致した。
決め細やかな気遣いも素敵だったし、なにより、手料理まで振舞ってくれた。
女神様のお話によると、魂がずっと肉体を持たないままだと、魂が消えてしまうらしい。
そうならないように、女神様は御自神の御力を分けてくださったのだ。
俺は女神様の優しさに振れて感動した。
もし涙が流せたら、涙が枯れるまで泣き腫らしていたと思う。
そんな女神様に惚れ込んでしまった自分がいたんだ。
女神様と一緒にあの神殿に住むことを許して頂けたなら、迷わず女神様と住む道を選んだのだが…。
俺なりに真剣にお願いして、なんとか暫くは半同棲生活を営んでいたが、最終的に、その願いは聞き届けていただけなかった。
だが、俺はまだ諦めてはいない。
女神様もそれを当然ご存知だろう。
俺という存在を見続けて、遠くから、俺を見ながら笑ってくれたらいい。
女神様の玩具になれるなんて、途方もなく名誉なことだ。
お約束も無事果たせそうで、ようやく、次の一歩に踏み出せそうだしな。
たしか……約束を取り付けた時のお言葉は……。
「女神様、俺のこの願いなら叶えて頂けませんか」
「ええ、その願いだったら叶えてあげられるわね。でもタダでとは、いかないわ」
「はい、俺もただで願いが叶うとは思っていません」
「そうね。ダンジョンを1000階層まで進化させるのが条件よ」
「私の条件をクリア出来たなら、貴方の願いを叶えてあげるわ」
「私としても、息抜きも兼ねて、たまには見たこともない運命の軌跡も見てみたいから」
「今回は特別よ」
「条件を満たしたら貴方の願い、迷宮としての力を保ち続けたまま人化するスキル、それをプレゼントとして贈るわ」
女神様は、素敵な笑顔を見せて私の願いに答えてくれた。
俺はその言葉を信じて、ここまでやってきた。
俺が愛してやまない女神様は、きっと俺の願いを聞き届けて下さるはずさ。
それじゃあ、いっちょ、やってみますか。
『迷宮進化』
>深淵の迷宮は進化した。
>深淵の迷宮は新たに1000階層を創設した。
>女神アルフィラーゼから1000階層創設記念報酬が届いた。
>報酬【完全人化】スキルを取得した。
迷宮核から、進化情報の関連ログを取得した。
いよっしゃ~。アルフィラーゼ様、愛してるぜ。
いつの日か必ず肉体を持った姿で、貴女の横に立ってみせる。
今日がその最初のはじまりの日だ。
俺は【完全人化】スキルを起動するように強く念じた。
>深淵の迷宮は【完全人化】スキルを使用した。
スキルが起動すると、地上部では、深淵迷宮の入口が霞みがかって消えていく。
そして、紫色の魔素の瘴気で覆われていた深淵の森からは、深淵迷宮ダンジョンの存在が突然掻き消える。
突然の強い力の喪失により、周辺では、徐々に魔素の濃度が薄くなっていった。
迷宮というのは、実に不思議な存在だ。
彼等は生きている。
彼等は日々成長する。
彼等は突然進化する。
彼等は魔物を生み育てる。
彼等は人を吸い寄せる。
彼等は人に刃を向ける。
彼等は人を餌として食す。
彼等は永遠の時の輪に囚われた存在。
何故、この世界に迷宮が存在しているれるのか、それは、知っていそうな神様にでも聞いてくれ。
俺は、好き勝手にしていいと言われただけだからな。そもそもそんな問になんか興味がない。
哲学じみたお堅い答えはしらん。わからん。どうでもいい。
いまさら、女神様に直接聞きたいとも思わない。知ったからどうだと言うんだ。
あの女神様には何度でも逢いたいが、女神様に直接尋ねる質問でもないだろう。
俺は俺だ。それ以外の何者でもない。
ここにも、1つの迷宮が存在してるしな。
ここの迷宮の逸話は、これまた傑作なんだ。
つべこべ言わずに黙って聞いてみてくれ。
──数限りない迷宮の中で、最も深き闇の奥底まで続く深淵の迷宮。
──人類誕生の遥か以前から存在したと伝わる最古の迷宮。
──果てしない階層が永遠に続くと思われる、無限の迷宮。
──全ての冒険者が目指す最後の頂き、人類未踏の最後の迷宮。
──人々の欲望を絶望に染め替え食らう破滅の迷宮。
──帰還者が誰1人としていない死者の墓場、生者を死へと誘う死者の迷宮。
いつしか地上の人々から、そう、幾つもの呼び名で呼ばれた存在──。
それが俺だ。
遥か昔に、ちっぼけな迷宮として異世界転生した俺。
お気に入りの呼び名は深淵の迷宮。
前世の記憶は女神様が気を利かせたのか覚えている。
だが、長い年月が過ぎたからな、記憶が朧気で、もう、微かに覚えているぐらいなんだ。
迷宮としての俺が精神の大部分を占めているから、記憶が朧気なのも、それはまあ、理解できる。
迷宮として生きていくには、人間の記憶は不要だからな。
長い年月を生きてきた俺は、人間の精神構造のままでは、多分発狂していただろう。
迷宮としての精神構造に置き換わることで、ここまで長生き出来たというわけさ。
俺の機能構造は、人間のそれとは根本的に違うしな。
敢えて人間の構造に例えるならば、
俺の中にある全ての階層が、独立した腕や身体の機能を持ち、
階層で暮らす全ての魔物が、免疫体の役割を担い、害虫の人間共から俺を守る。
迷宮の最深部にある迷宮核が、俺という存在の詰まった保管場所であり俺の頭脳とほぼ同義だろう。
そんな俺にとって今日は特別な記念日なんだ。
ようやく、この日を迎えた。
999階層の俺が1000階層の俺に進化するんだ。
盛大に祝いたい気分だが、俺の体内で暮らす魔物達に被害が出たら面倒だ。
俺が育てた魔物達の楽園を俺の力で壊すのは忍びないからな。
それよりも、今回の進化は、切りのいい数字だと思わないか。
こういう場合はやっぱ、お約束が付き物だろう。
とゆうか、迷宮に転生する前に、既に女神様と交渉を終えているから、それは大丈夫の筈だ。
あの可憐で儚げで清楚で美人で、お目にかかるだけで、心が洗い清められるほどのお姿をした女神様なら、決して忘れてないだろう。
あの神殿空間にあった装飾のセンスのよさが感じられた。
毎日変わるセンスのいい清楚な衣装も女神様の印象にピッタリマッチしてた。
アニメ声を聞いた時には、目が釘付けになり全身が沸騰して、運命の出会いが巡ってきたと何度も錯覚しそうになった。
小柄でスラッとした体型も俺の理想の女神像にピッタリ一致した。
決め細やかな気遣いも素敵だったし、なにより、手料理まで振舞ってくれた。
女神様のお話によると、魂がずっと肉体を持たないままだと、魂が消えてしまうらしい。
そうならないように、女神様は御自神の御力を分けてくださったのだ。
俺は女神様の優しさに振れて感動した。
もし涙が流せたら、涙が枯れるまで泣き腫らしていたと思う。
そんな女神様に惚れ込んでしまった自分がいたんだ。
女神様と一緒にあの神殿に住むことを許して頂けたなら、迷わず女神様と住む道を選んだのだが…。
俺なりに真剣にお願いして、なんとか暫くは半同棲生活を営んでいたが、最終的に、その願いは聞き届けていただけなかった。
だが、俺はまだ諦めてはいない。
女神様もそれを当然ご存知だろう。
俺という存在を見続けて、遠くから、俺を見ながら笑ってくれたらいい。
女神様の玩具になれるなんて、途方もなく名誉なことだ。
お約束も無事果たせそうで、ようやく、次の一歩に踏み出せそうだしな。
たしか……約束を取り付けた時のお言葉は……。
「女神様、俺のこの願いなら叶えて頂けませんか」
「ええ、その願いだったら叶えてあげられるわね。でもタダでとは、いかないわ」
「はい、俺もただで願いが叶うとは思っていません」
「そうね。ダンジョンを1000階層まで進化させるのが条件よ」
「私の条件をクリア出来たなら、貴方の願いを叶えてあげるわ」
「私としても、息抜きも兼ねて、たまには見たこともない運命の軌跡も見てみたいから」
「今回は特別よ」
「条件を満たしたら貴方の願い、迷宮としての力を保ち続けたまま人化するスキル、それをプレゼントとして贈るわ」
女神様は、素敵な笑顔を見せて私の願いに答えてくれた。
俺はその言葉を信じて、ここまでやってきた。
俺が愛してやまない女神様は、きっと俺の願いを聞き届けて下さるはずさ。
それじゃあ、いっちょ、やってみますか。
『迷宮進化』
>深淵の迷宮は進化した。
>深淵の迷宮は新たに1000階層を創設した。
>女神アルフィラーゼから1000階層創設記念報酬が届いた。
>報酬【完全人化】スキルを取得した。
迷宮核から、進化情報の関連ログを取得した。
いよっしゃ~。アルフィラーゼ様、愛してるぜ。
いつの日か必ず肉体を持った姿で、貴女の横に立ってみせる。
今日がその最初のはじまりの日だ。
俺は【完全人化】スキルを起動するように強く念じた。
>深淵の迷宮は【完全人化】スキルを使用した。
スキルが起動すると、地上部では、深淵迷宮の入口が霞みがかって消えていく。
そして、紫色の魔素の瘴気で覆われていた深淵の森からは、深淵迷宮ダンジョンの存在が突然掻き消える。
突然の強い力の喪失により、周辺では、徐々に魔素の濃度が薄くなっていった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる