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女児霊といっしょに。~学校の七不思議~
第六章:蝕愛 5
しおりを挟む騒動から程なくして、禄矢君は目を覚ました。意識ははっきりしており、悪霊の視線も感じなくなっていた。
しかし、家を抜け出したことやオレに襲いかかったことなどは覚えていなかった。また、悪霊に体を無理矢理使われたせいで全身筋肉痛で動きたくないそうだ。
母親は禄矢君が急にいなくなったためパニックになり、警察に連絡したり街中探し回ったり。当然奥部小にも問い合わせをしており、迎えに来てくれるらしい。
「その……ごめんなさい」
「だから謝らなくていいって。あれは全部悪霊がやったことなんだから。クラスのみんなにもオレから事情は説明してあるから、体が治ったら安心して登校してよ」
まったく、こんなに可愛くて良い子を酷い目に遭わせるなんて趣味の悪い霊だ。次に会ったら一発殴らないと気が済まない……普通の拳は当たらないけど。
「樫戸君、お母さんが迎えに来たわよ」
担任教師が保健室に入ってくる。相当な速さで車を飛ばしてきたのか、随分早いお迎えだ。それくらいに心配だったのだろう。
「そうだ、帰る前にこれを持っていってくれ」
オレは防心の札を渡す。悪霊が一旦離れたからといって油断大敵、また取り憑きに来るかもしれないし弱ったところを他の霊が勝手に割り込んでくるかもしれないからだ。
「ありがとうございます。……あ、お札で思い出したんですけど――」
そう言いながら、禄矢君はポケットから一枚の黒い紙を取り出す。
「――これを見て下さい」
「まさか、これって……」
「はい。昨日貰ったお札です。昨日家に帰ってから段々黒くなっていって、朝には真っ黒になっちゃって。それで駆郎さんに見てもらおうと思ったんですけど……その時にはもう体が動かなくて……」
お守りとして渡した防心は黒一色に染まっていた。しかも不純物が混じった墨で塗りたくったような歪な汚さ。一体どんな邪念があればこんな酷い作品に仕上がるのだろうか。そしてオレの防心が殆ど役に立たなかったのが悔しいぞ。
「この汚いのはオレが処分しておくよ。あと、もう一枚あげるね」
「あ、はい。どうも……」
念のため防心を追加であげることにした。
禄矢君は担任教師と一緒に母親の元へ向かっていった。とりあえず一週間は学校を休むことになるらしい。
「うわ~、これ本当にあのお札?」
「そうだよ。信じられるか?」
「一晩でこれって……本格派のヤバさだよね」
「同感だ」
黒くなった念導札。染まり方も酷いが臭いも同じくらいに酷い。因みにこの“臭い”は悪しき気配の残り香ではなく、一般的な意味で臭いのだ。さすがにヘドロレベルではないが、好んで嗅ぎたいとは思わない。
こうして一晩で札が汚物にされた訳だが、渡してから変化しきるまでが早すぎる。しかも防心を貫通して禄矢君の体も乗っ取っていた。それは偏に悪霊の霊力がミラクルパワフルなせいなのだが、それだけ強いのならとっくに禄矢君の体を支配下に置くことが出来たはずだ。
しかし今までそれをせず徐々に体力を吸い取る寄生虫だったのに、昨日の今日で急に意識を乗った挙げ句オレに襲いかかった。それは詰まるところ、天敵である念導者の出現を快く思っておらず抹殺したいということだろう。
……だとすると、またぼろ布霊はオレを狙ってアクションを起こすはず。それも手段を選ばず目立つことすら厭わずに。
だが、結局その日は最後まで悪霊が現れることはなかった。
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