女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~学校の七不思議~

第七章:最後の一週間 5

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 次の日。
 学習サポーターの役目を今度こそきっちり居眠りせずに終えたオレは、真っ直ぐに晩出市立図書館に向かった。

「はい。依頼通りの資料よ」

 カウンターにて、震名さんはどっさりと新聞の山を持ってきてくれた。想像していたより多くて驚きだ。

「こんなにあったんですか……?」
「そりゃそうでしょ。事故でも事件でも、ちょっと新しい情報が入ったら記事にするんだから。あと事件に関してのコラムとか友達のメッセージとかも入っているからね」
「まさかそこまで細かく資料集めをしてくれるなんて……」
「あなたが頼んだことでしょ、関係する記事が欲しいって。だから私はそれに従ったまでよ」

 だとしても本当に全部、少しでも関係している記事を集めようなんてしない。普通だったらせいぜい第一、二報記事くらいまでだ。しかも分かりやすく付箋ふせんを貼ってピックアップしてくれている。マメな性格が仕事にも表れている。

「凄いですね、震名さんは」
「何よ急に。気持ち悪いわね」

 褒められ慣れていないのか、震名さんは怪訝そうな視線を送ってくる。素直に喜べばいいのに。でもそんなところが微笑ましい。

「それより、今日も本が飛んでいるんですけど」
「毎度申し訳ないです」

 またななが本でポルターガイストして遊んでいる。でも昨日と違って児童書コーナーではなく、大人向けの本が多い場所にいる。
 かなり難しい本があるし、振り仮名なしで読めるのだろうか。

「……あれ、どんな本が飛んでいるのかしら?位置からして心理系だと思うけど」

 震名さんは眼鏡をいじったり眉間にしわを寄せたりしながら遠くの文字を読もうとしているが、視力が低いためさっぱり見えないようだ。

「なんかハートマークが多いですね。え~っと、“オクテ男子をオとす必勝法”……“女の色気を磨く十の習慣”……何考えているんだアイツ」

 オレは確認できた題名を震名さんに伝える……が、その瞬間震名さんの体がびくんっと跳ねた。

「奥手に色気……まさか…………ふひゅ」

 オレと本が羽ばたいている場所を交互に見ながら、震名さんの体が段々バイブレーションしていく。
 どうやら、また変な笑いのツボが刺激されたようだ。

「ひひっ、んひゅぅ……。はぁ、そんな訳ないよね」

 何を否定しているのかは分からないが、自力で笑いそうなのをこらえている。その調子だ、そのまま耐えきってくれ。

「げっ」

 オレの視線の先、ななが手に取った本の題名のせいで思わぬ声が漏れた。
 それはいけない。読んじゃいけない。

「どうしたの?」
「うちの子が読もうとしているんですよ!“男心を掴む夜の営み講座”とかいう歳不相応な本を!」
「ぺびゅるふぉっ!」

 はい、見事に奇声を上げました。
 もう関わっていられないので、オレはびくんびくんと活きの良いお魚と化した震名さんを放置してななを止めに行った。

「はい終わりー。周りの利用者に迷惑だからやめましょ~」
「うひゃぁ!?駆郎にぃ、見ないで!」
「まずお前がその本読むのをやめろ」
「お、乙女の読む本を覗き見ちゃダメ!」
「大丈夫だ、うら若き乙女が読む本じゃない」
「うわ~ん!駆郎にぃのイジワル~!あ、でも好きな子にはイジワルしたくなっちゃうのか」
「そういうことじゃないから」

 などなどひとしきり叱ってからカウンターに戻ってくると、そこにはもう震名さんの姿はなかった。よく見ると他の職員に両足を掴まれて引きずられ、バックヤードへ運ばれていた。笑い過ぎで呼吸がろくに出来なくなったようで声を発することはなかったが、踊るかつおぶし削りみたいな動きをしていた。
 同僚の人達、毎度大変だな。
 婚活がうまくいかないのは口の悪さとか態度だけじゃなくて、この意味不明な笑いのツボもあるんじゃないかなぁ……。

 その後震名さんがカウンターに戻ってくることはなく、オレはゆったりと纏めてくれた記事を読むことにした。ななは大人しく児童書コーナーで本を読んでくれているので集中して考察が出来る。

「あったよ……。予想通り、やっぱりそういうことなのか」

 そして、目当ての記事が次々に見つかる。
 オレの仮説がどんどん証明されていく。
 奥部小の七不思議。その答えが導き出されていく。
 しかし、まだ不明な点はある。だがその辺は直接本人に聞くのがいいだろう。
 全ては、金曜日の早朝。
 長かった七不思議との決着を付けよう。
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