女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~

幕間:去った跡地に残ったもの

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「はぁ……はぁ……」

 公園から大分だいぶ離れた先で、禄矢は荒い息を吐きながら街路樹に背を預けていた。
 元々運動は大の苦手、その上部活で走り込みをした後の全力疾走だったため、もう足はがくがくだった。
 だがこれでもまだ良くなった方だ。自分を鍛え直そうと入った陸上部では初日ではぶっ倒れて保健室送り、夏場では何度熱中症になったことか。その頃と比べたら運動能力は向上している。

「あ~……びっくりした」

 駆郎の「女性の霊がいる」という発言で、どうしてもかつて自分に取り憑いた悪霊のことを思い出してしまう。自分のことを常に監視していて、何故かエロ系の物に触れると途端に激しく悪さをする霊。
 あれ以来大人の女性が怖くなってしまった。それに女子受けが良かったことも災いして、挙げ句の果てには同年代の女子のことも避けるようになった。
 このままではいけない。
 禄矢は弱い自身のことを恥じて、強い男になることを誓った。
 女子を恐れることのないよう、自信が持てるようにと体力のなさの克服のため陸上部に入部。更に自宅でも筋トレを始めた。そして中二病は……普通に発症した。自信を持つことと格好をつけることを間違えた、ということにしておこう。

「見られちゃったな~……」

 一応彼のために補足をしておくと、中二病を発症していると言っても自分に変な能力があるとは思っていない。というより幼児のヒーローごっこの延長線上のようなもので、自分を助けてくれた駆郎に憧れて念導者の真似事をしているだけだ。だからこそ、本物に見られたのは恥ずかしい。

 因みに基本的には親から子へと受け継がれる念導者の素質だが、後天的に一般人が素質に目覚めることがある。
 一番多い事例としては怪異関係の事件・事故に巻き込まれた結果、その体の中に怪異後遺症として念導者の素質が生まれる、ということがある。要するにただの人間だったのに霊や邪怪などに体内を荒らされることで、自身の中の感情を現実世界に影響を与えるレベルまで練ることが出来るシステム=念導者の力が構成されるのだ。
 もっとも、禄矢は至って健康体。念導者のねの字もない、ごくごく普通の一般人だが。

「あ、禄矢さんだ~」

 へたばっている禄矢のところへ、一人の少女が駆け寄ってくる。声が大きく、そして異様に元気なその子は――鳥女とりめ美羽みう
 この子もかつて霊に関する事件に巻き込まれた子だ。こちらの事件は被害はなく、むしろ霊の方が怖がる始末であったが。

「あら、禄矢君。大丈夫?」

 美羽を追いかけてやってきたのは鳥女紅花こうか。美羽の母親であり、駆郎が初めて仕事で救った人物だ。
 実は樫戸家と鳥女家はどちらも駆郎と深く関わった同士ということで、今では交流する仲になっているのだ。特に禄矢と美羽は歳が離れているものの、面倒見の良い男子とやんちゃな女子ということでなんだかんだ仲良しなのだ。あと紅花は年上の女性ではあるがこの交流のおかげもあり、禄矢は苦手意識を持っていない。

「はは……ちょっと疲れちゃって……」
「え~、大丈夫なの~?」
「ただの走り過ぎだから心配しなくていいよ」
「無理はダメだよっ!ママみたいに倒れちゃうからっ!」
「え!?紅花さん、倒れたんですか!?」
「そっ、それはただ押し入れの片付けが終わらなくて、崩れてきた箱でバタンキューっていうか……って美羽、余計なこと話さないの!」

 そんな雑談をしている最中、轟音ごうおんがして。
 邪怪から逃げてきた住民が押し寄せてきて。
 三人ともその流れに乗って一緒に逃げることになって。
 禄矢はまた走らされるハメになるのだった。
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