女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~

第二章:共同戦線 1

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「ふ~ん。大体分かったよ」
「理解が早くて助かる」

 茶々にななのこと、それから精神が崩壊している霊が何人も現れていることを洗いざらい全部話した。別段隠すことでもないし、何なら協力してくれると嬉しいし。でも“りばやし”が絡むとろくでもないことになりそうだけど。

「それにしても記憶喪失の霊に心が壊れた霊ね~。対霊処も大変だね、ぱぱっと浄霊すればいいのに」
「それはオレの主義に反するから」
「は~……っ、相変わらず面倒臭いねー、駆郎って」

 お前に言われたくないわ。

「何よーっ!あなたなんかに駆郎にぃの何が分かるのよ!」

 ほら、ななもご立腹だ。
 でもこいつに喧嘩を売るのはやめた方がいい。百倍くらいで返ってくるぞ。

「残念で~したっ。私は君のようなぽっと出の霊と違ってず~っと同じ学校に通う幼なじみなの。いくら初恋の相手で、今は相棒だって言っても所詮しょせんその程度の期間しか一緒にいないじゃ~ん」
「きーっ!大事なのは過ごした時間じゃないもん!それに幼なじみっていうよりただの同級生じゃん!このはさんには嫌がらせもしているし!」

 おお、ななもなかなか反撃するじゃないか。

「あっそう。ま、嫌がらせについては謝っておくよ。やっているのは私じゃないけどね。だから好感度に関しては問題なし♪」

 は?何を言っているんだお前。
 結局のところ、好感度はプラスマイナスゼロだぞ。

「大丈夫だもんっ!駆郎にぃはロリコンだからいくらあなたがぺったんこでもななを選ぶはずだからねっ!」
「ん~?誰がぺったんこだって?」
「待て、待て待て待て。一回落ち着けお前ら」

 さすがにヒートアップし始めたので、間に入って止めることにした。

「なな、再三言うがオレはロリコンじゃねーし、お前は恋愛対象外だ」
「あっ……。べ、別にななの好きは“ラブ”じゃなくて“ライク”だもん!」

 口を滑らせたことに今更気付いたのか、ななは急に顔を真っ赤にする。この永遠の九歳はいつになっても自分の感情を隠すのが下手だな。

「あとぺったんこは言っちゃだめだ、体のことで責めるのはNG。それだとななも永久に成長出来ないロリ体型って言われるぞ」
「うぅ……それは、ごめんなさい。でもロリ体型は好きでしょ?」
「ホント、ぶっとばすぞコラ」

 大人ぶる割に精神面は幼い、アンバランスなヤツだ。霊なのに。
 ここ一年中こんな調子だけど。

「こいつも謝ったわけだし……。茶々、ここはひとつ許してやってくれ」
「別に私はそこまで怒ってないからいいですよーだ」

 いや、絶対まだ根に持っているだろ。
 茶々はそっぽ向いたままだ。意外と胸がまな板なことを気にしていたのか。

「そ、それよりさ。ずっと茶々に聞きたいことがあったんだけどさ」

 オレは険悪なムードを解消するために話を逸らすことにした。

「何よ」
「対邪の専門家として聞きたいんだけど、何でさっきの邪怪は核が三つもあったんだ?それにフジツボも意味不明だし……」

 疑問だったのは本当だ。去年戦った奥部小の邪怪も同様の謎が残っていた(あちらはフジツボではなく烏賊いかたこだったけど)。あの時は晩出市の中心部だから特殊な個体なのだろうと思うことにしたが、今回も同じだったことを考えるとどうやらそういうことではないようだ。

「え~、そんなことも知らないんだ~」

 下手に出た瞬間、ぱっと表情が明るくなったかと思ったら急に見下してきやがった。物凄く腹立つな。

「ま、知らなくて無理ないけどね。知っているのはうちの店と清寂会セイジャクカイの上層部くらいだから」
「どういうことだよ、それ」
「簡単に言うと晩出市だけの特徴ってところかな」

 茶々曰く、晩出市の邪怪は他の地域と違ってどの個体にも必ず体のどこかに海洋生物がくっついているらしい。出現場所が山の中や地下駐車場でも、何処であろうとも具現化している。また晩出市の邪怪の中にはまれに核が三つあるタイプがおり、それをレア扱いしているそうだ。いずれもその原因は不明で、日々研究されているそうだ。

「じゃあ何でお前らだけの秘密にしてるんだよ」
「そりゃあ晩出市の人以外には関係ないからね。聞かれなかったら話す必要なしってこと」

 おいおい。
 そういうところだぞ、清寂会。
 頼むから報告・連絡・相談を上層部の間でもしっかりやってくれ。困るのは結局オレ達現場なんだから。

「何、その不満そうな顔」
「当たり前だろ。あんまり秘密事が多いとやりにくいだろ、仕事」
「別に~?そっちは精神崩壊霊で大変そうだけど、私達対邪処には関係ないし」
「それはアレか?協力し合う気はねーぞって意味か?」
「そゆこと。でも~、駆郎がうちに婿むこ入りしてくれるなら話は別だけど?」
「はぁっ!?」

 突然の婚約話に目玉が飛び出るかと思った。
 いきなり何を言い出すんだ、こいつは。

「だってぇ、駆郎が婿入りすればうちは安泰、“あまみや”は店仕舞い。清寂会からは晴れて対霊処が出店出来るってわけ」
「そういうことかよ」

 なるほど。
 醒果会セイカカイの超優秀対霊処所属の念導者、天宮このはことオレの母さんがいるせいで清寂会の店がやっていけないのなら、跡継ぎをいなくしてしまおうってことか。何て打算的な婚約だ。

「――ぷっ。冗談よ、冗談。別に本気で駆郎とラブラブするつもりないから」

 にひひっ、と独特な笑い声で腹を抱えている茶々。放っておいたらひーひー、とうまく呼吸が出来なくなるほど笑いまくってむせていた。

「ったく、こっちだってお断りだよ」
「そうだよ!こんな腹黒女と同じ屋根の下なんて、ななは嫌だからねっ!」
「お前、自然浄霊する気ないだろ」
「えー、このはさんと親戚になるのも悪くないと思うけどなぁ」

 オレ達の言い合いに割り込んでくる、渋いおじさん声。
 この声は――茶々の父親にして“りばやし”の店主、狸囃子行兵衛ぎょうべえ
 そう、オレの母さんに毎度毎度飽きもせずにセクハラしてくる変態オヤジだ。

「駆郎君、うちはいつでもウェルカムだよ?」
「あんたの目的は母さんだろ?」
「いやいや、駆郎君のことも好きさ」

 ねっとりとした視線で行兵衛はオレのことを見てくる。特に前髪――母さんの遺伝が一番濃く表れている場所を。












「そ、それって禁断の花園って呼ばれるBLボーイズラブなの!?」

 ななの口からとんでもない単語が飛び出してきた。

「あー、おじさんにそういう趣味ないから」
「そーなのかー……」

 何で残念そうにしているんだよ。

「なな、一応聞くけど誰からBLって言葉を聞いた?」
「それは勿論このはさんだけど?」
「だよな」
「そうかそうか。このはさんはBL好きか。よし、駆郎君。ちょっといいかな?」
「よくねぇよ」

 これ以上この場にいたら恐ろしい世界に足を踏み入れてしまいそうな気がしたので、さっさと退散させてもらうことにした。
 当然、呆けたふくよかな女性の霊を連れて。

「で、駆郎にぃはBLって好きなの?」
「頼むからそういう話は母さんとだけでやってくれ」
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