女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~

第二章:共同戦線 8

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 依頼主の元に到着する頃にはもう日は落ち、空は藍色から漆黒へと変わろうとしていた。

「遅れてしまい、大変申し訳ありません」

 年老いた男性である依頼主に、オレは頭を深々と下げて謝罪する。

「ったく最近の若いもんは、頭が軽すぎる。もっと誇りを持たんか」
「あ、いて」

 こつり、と骨張ったこぶしがオレの頭に乗せられる。ゲンコツ、のつもりだろうか。そんなに痛くはなかった。

「騒ぎがあったことくらい知っとるわい。大方そっちに手間取ったんじゃろーが」
「それは、その通りですけど」
「だったら謝る必要はないじゃろ、あんたは悪くない」
「でも遅れたのは事実ですし……」
「でももストもあるか!謝罪より仕事で男を見せろ!」
「は、はいっ!」

 このおじいさん、妙に熱血だなぁ。若い頃に学生運動でもしていたのだろうか。

「駆郎にぃ、男を見せるってどういうこと?露出狂?」
「絶対違うから」

 というわけで、おじいさんに霊のことについて詳しく聞かせてもらった。
 おじいさん曰く、その霊はここ数日家の周辺に出没しているらしい。おじいさん自身に霊感はないことからその霊は実体化していると推測出来る。それを裏付けるかのように庭のかきの木から実を取ろうとしていることもあったそうだ。もっとも、霊は食事が出来ないので無意味なのだが。

「その霊は他にどんなことをしていましたか?」
「それくらいじゃよ。柿をちょいともがれただけじゃが……まだうろついておるんじゃ」
「因みに、どんな姿でしたか?」
「普通の女の子……しかし乱暴そうな子だったな。それで確か服が……そう、そこの子みたいな感じで」

 おじいさんが指さす先。
 そこにいるのは左頬に傷を持つ少女。
 そしてその子の服は――白装束。

「あの子じゃよ、うろついている霊は」
「やけに冷静ですね」
「もう見慣れたわい」

 肝が据わっているおじいさんのことはこの際置いておくとして、問題はまたもや現れた白装束を着た霊だ。これで五人目だぞ。この子も奥部小に連れて行かなくては。

「あれ?駆郎にぃ、おかしくない?」

 霊に歩み寄ろうとしていたオレに、ななは疑問を投げかけてきた。

「どこがだよ」
「だって今まではみんなぼーっとしてたじゃん。でもその霊さんは柿をとってたみたいだし、ほら駆郎にぃのこと警戒してる」

 言われてから、はっとした。
 この子の瞳は虚ろではない。むしろその逆、猛々たけだけしい獣のように鋭い眼光でオレのことを捉えていた。

「もしかして君は、意識があるのか……?」

 オレがもう一歩、その子に近づこうとしたその時――

「来るな!」

 ――突風のような霊力が、彼女の足元から吹き出してきた。













「ぐっ」
「きゃあああっ!」
「わしの盆栽ぼんさいがっ?!」

 最大瞬間風速はどのくらいだっただろうか。
 ほんの一瞬だったが目も開けられないくらいの圧が周囲へ拡散し、その間に霊の子は草むら……そして山の中へと逃げようとする。

「待ってくれっ……!」

 と、一応叫んでみたが、「待て」と言われて待つヤツはいない。古今東西そんな大間抜けはいるはずない。

「追うぞ、なな!」
「ふにぇ?」
「目を回している場合か!行くぞ!」

 ここで彼女を見逃してはいけない。
 彼女は白装束の霊の中で現在唯一の、健常な精神状態の霊だ。聞きたいことが山ほどある。
 どうして最近になって晩出市内をうろつくようになったのか。
 邪怪の大量発生と何らかの繋がりがあるのか。
 そして、彼女達の身に一体何が起こったというのか。

「絶対聞き出してやる!」

 オレはこの事件の鍵を握るであろう子を追い、やぶの中へと分け入った。
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