女児霊といっしょに。シリーズ

黒糖はるる

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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~

第五章:翠と金の螺旋階段 3

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 その夜、会議と親睦しんぼくを兼ねた食事会が行われた。霊達は食事が出来ないので飛び回って大騒ぎしたりななとミサキちゃんによるポルターガイスト有効活用講座とかしたりと、それはそれで大盛り上がりのようだった。

「だからね、うおーってやる気になれば凄い力が出るんだよ!」
「大雑把過ぎるんだよ!いいか、あたい達だったら生け贄にされた怒りをパワーに変えてやるんだよ!」
「ダメだよ!悪いこと考えると悪霊になっちゃうんだよ!」
「あぁん?!あたいは澱神無をボコるんだよ、いいことだろーがっ!」
「ダメなものはダメなのっ!」
「んだと、コラ。理由もなくあたいに意見するっていうのか!?」
「こうなったらななだって本気なんだからっ!」
「よ~し、それなら力比べしようじゃないか!」

 盛り上がりの方向性がおかしくないか?案の定大人のはずのヒノエさんとフタチさんはまるで日常茶飯事だと思って笑っているし。千年前はどれだけ治安が悪かったんだよ。

「おら~、いいぞ~、やれやれ~、根性見せろ~」
「わははははっ、けんかだけんかだーっ!」

 イツマちゃんもだるそうながらもヤジ飛ばしているし、それに同調してムマシちゃんは馬鹿笑いしているし。酷い絵面だ。

「昔は喧嘩も娯楽ごらくだったのじゃ。妾は趣味ではないがの。それよりも“ぽるたーがいすと”とやらは楽しいのぅ。生きていた時は霊など恐ろしい連中と思っていたが、これは実に興味深い。そうは思わぬか!?」

 ナルカちゃんは最年少とは思えない話し方で機関銃マシンガントークをかましてくる。前髪で隠れていて見えないが、きっと目をキラキラ輝かせているのだろう。まるで土倉つちくら友子ともこちゃんのように。

「あの……」

 きゅっ、と。オレのそでをヨスズちゃんが引っ張る。

「どうしたの……って、この騒ぎにびっくりしているんだよね」
「はい……。わたくし、お座敷で一人かお付きの者と少々のお出かけくらいだったので……。こんな役立たずのわたくしにはもったいないくらいの時間です」

 あー……嬉しかった方なのね。
 それにしてもヨスズちゃんは異様に自分のことを卑下ひげするなぁ。生い立ちに思いをせると切なくなる。

「わははっ!ヨスズとムマっちはもうおともだちだぞーっ!」
「きゃぁっ!?」

 いつの間にか近寄ってきていたムマシちゃんによって、ヨスズちゃんは連れて行かれてしまった。お姫様抱っこで。多分ヨスズちゃんの方が年上だと思うのだけれども、軽々抱えていったぞ。馬鹿力だ。いや馬鹿の力か。


―駆郎、ちょっといいか―
「狼慈丸か」

 オレの肩に飛び乗る柴犬――じゃなくて狼慈丸。重さは殆ど感じないが、ほんのりとした暖かさと霊気特有の圧は感じる。

―晩出市に隣接する海岸一帯に意識を飛ばしてみたが、澱神無はまだ復活途上だ。時間はかかると見ている―
「そんなこと出来たのか!」
―今はこんな姿だが腐っても霊獣だ、それくらいは可能だ―

 柴犬姿のせいで馴染なじんでしまっていたが、狼慈丸は立派な霊獣だ。少なくとも一度は澱神無を打ち破る程の実力があるはずなのだから。

「……あれ?語尾はもうやめたのか?」
―あっ…………くぅん?―
「今更犬っぽくしても遅い」


 ――ずざざざーーーっ!

 オレの目の前に市場の冷凍マグロよろしく、殴られた行兵衛が滑り込んできた。

「ぐふっ」

 鼻血まみれで口からも血を吐いている。
 今度は一体何をしたのだろうか。

「いやー……、ワインを飲むこのはさんが美し過ぎてね、つい」
「つい、なんて軽さでお尻を秒速十六モミ打する人なんて普通いないですよ~?」

 母さんがゆっくりと近づいてくる。
 これは血祭り確定だな。
 霊達もこれから始まるバイオレンス劇場を今か今かと待っているよ。

「母さん、顔面はもう血まみれだから、ボディだけにしてあげようか。ね?」
「それもそうよね~。じゃあ……」

 まるで少女のような満面の笑みのまま、母さんは冷凍マグロ状態の行兵衛にヒップドロップをかました。

「ぐふぉっ!」
「続きましてー……」

 よろよろと起き上がる行兵衛に向けて、今度はラリアット。首元に直撃して薙ぎ倒されてしまう。

「ぶべっ!」
「そしてフィニッシュは~……」

 もう立つ気力が残っていないのか、片ひざをついた状態のまま行兵衛は立てない。
 その格好はまずいぞ、必殺技が飛んでくる。

「はぁっ!」

 母さんは行兵衛を踏み台にして飛び上がり、月面宙返り。そして着地直前に膝蹴りをぶち込んだ。
 これぞ、ムーンサルト・シャイニングウィザード。
 美しい合体技を前にして、行兵衛は断末魔を上げる間もなくダウン。なのにやけに嬉しそうな表情で伸びてるな、この人。かなりのマゾか?












「って、母さん!膝蹴り完全に顎に入ってたよ!?ボディだけじゃないじゃん!」
「いっけな~い!やり過ぎちゃった♪」

 いや、絶対わざとだろ。
 てへぺろしても可愛くないから、歳考えろ。
 あと明らかによい子はマネしないでね案件だから。大人が率先してやらないでくれ。
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