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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~
第六章:焦燥のバトル・ロード 3
しおりを挟む「まずは挨拶代わりだぜ、土管野郎」
ましろが下水道の邪怪の真上を、宙返りしながら飛んでいく。無論ただのパフォーマンスではない。きっちり狐ノ殲滅と狐ノ撃滅による二挺拳銃連射の雨を降り注がせる。
土管の周りにへばりついたどろついた肉がえぐれて弾け飛び、光になって消えていく。邪怪も反撃してホースを伸ばし、ましろを絡め取って動きを封じようとするが――
「させるかよ!」
オレが振るう黒烏の斬撃によってホースは切断、邪怪は呻きながら引き下がっていく。
「そっちに山羊がいった!気をつけて!」
茶々の声がする方を見ると、郵便局の邪怪がこちらに向かってくる。邪怪同士仲間意識でもあるのか、下水道の邪怪をサポートしに来たのか。
「させねーよ」
だが、そんな郵便局の邪怪の進行を妨げる者が一人、牛来さんだ。
「オレの刃はひと味違うぜ?」
牛来さんが振り上げるのは念導杖かと思う程に長い戦斧。念導剣の一種なのだろうがその刃は鋭さよりも力任せに叩き斬るためにあるようだ。
「どりゃぁあっ!」
ごすりっ。
斧の刃が山羊の頭部、その縫い目に沿って真っ二つにかち割った。郵便局の邪怪は邪怪特有の黒い汁を撒き散らしながら、どうと仰向けに倒れた。
見た目通りのパワースタイル。
力尽くでヘヴィな一撃だった。
「へっ。ラム肉で一杯ってところか。ん、マトンかな?」
それどっちも羊の肉だから。
「ぼーっとしてる場合じゃねーぞ、駆郎!」
「おっと、済まねぇっ!」
ましろに呼び戻されたオレは、再び下水道の邪怪と対峙。ある程度ましろが浄怪を進めてくれたようだが、やはり再生のスピードが段違いだ。
「あいつの核はネズミの頭の奥にある。オレが出来る限り肉を吹き飛ばすから――」
「あたしが核を狙い撃ちってか?」
「正解だよ」
オレレベルの考えはお見通しってことか。
「いい案だ、そいつでフィニッシュといこうぜ」
「ああ!」
オレは撃罰を手に走る!
目標は下水道の邪怪、その体のあちこちに撃罰を貼り付ける!
どん、どん、どん!
巻き起こる連鎖爆発、飛び散る肉片と黒い体液。
――そして露出するグロテスクな核。
「今だ、ましろ!」
「言われなくてもっ!」
鳴り響く銃声。
だが、その弾丸は核を撃ち抜けなかった。
自動車の邪怪が庇うように飛来してきたからだ。おかげで浄怪出来たのは自動車の邪怪の肉、その一部だけ。
「こいつらやっぱり、フォローし合ってやがるっ!」
ましろは苦虫を噛み潰したような表情で、邪魔する自動車の邪怪へと発砲。しかしそれでも退こうとせず、その間に下水道の邪怪が再生していく。
「くそ、いい加減にしろ!」
オレは清絶で核を狙って引き金を引くが、ホースを盾にされて当たらない。全弾使い切ってしまい、かしん、と弾切れを示す撃鉄の音がした。
「済みませんね、私の相手だというのに」
空中をステージの上のように舞い踊る影、相馬さん。自動車の邪怪を追ってきたのだ。
華麗に舞って、手にしたナイフ型の念導剣で的確に邪怪の体を切り裂いていく。
リーチの短い武器を使用しての接近戦。しかもその素早さは茶々以上だろう。どこにも所属せず、斧使いとコンビを組むだけある圧倒的戦闘技術だ。
「車の割には遅いですね」
相馬さんの挑発を理解したのか、自動車の邪怪が捕食器官を最大限まで開いてアクセル全開で突撃してくる。
だが、相馬さんを撥ね飛ばすことは出来ない。衝突寸前で空中へと回避した相馬さんは、ナイフの先端を急ブレーキをかけた邪怪へと向ける。
ナイフが届く距離ではない。念導銃でやっと当たるくらい離れているのに。
と、思ったら。
ナイフの刃が、柄から発射された。
所謂スペツナズナイフというヤツだ。刃は邪怪の翼を刺し貫き浄怪、飛行能力を失って地面に墜落する。それと同時に刃がナイフの柄へと戻っていく。極細のピアノ線のような物で繋がっていたようだ。
念導剣にして遠距離攻撃にも対応。しかも一発屋ではなく回収機能も完備している、優れた浄怪道具だ。
「よし、今のうちだ!」
自動車の邪怪が事故車になっている間に、オレは再び下水道の邪怪へと向かっていく。既に再生が殆ど終わっており核はネズミの下に隠れてしまっているが、まだ治りかけの部分がある。
それは捕食器官。オレはそこへと一直線に駆ける。
通常であればそんな危険な場所へ突っ込むなんて戦い方はしないだろう。だが、既に似たような経験した身としてはそんなに怖くない。
あくまでもそんなに、だ。多少の恐怖心はあるぞ。
「打ち首だ、この野郎!」
オレは治りかけで脆い捕食器官からその上に位置するネズミの頭へと、黒烏の刃で斬りつけ削ぎ上げる!
ネズミの頭が蹴り上げられたサッカーボールのように回転しながら飛んでいく。その首元には脈動する急所――核。
「害獣駆除だぜ、ドブネズミ」
――ドンッ!
ましろが放った弾丸が、遂に核を完全に破壊した。
「残り二体だ、加勢に行くぞ!」
目映い光を放出して消滅する邪怪には目もくれず、ましろは次の戦場に繰り出す。
やっぱり、ましろは強くて頼りになるな。
「手羽先にしてやるぜっ!」
オレは羽を復活させようとしている自動車の邪怪へと飛びかかり、根元から羽を切り落とす。黒烏が鳩の羽を斬るなんて、皮肉の効いた洒落みたいだ。
「良い判断ですね。対霊処の人としては、ですが」
「一言余計じゃないですか?」
相馬さんが上から目線で褒めながら、追撃のナイフを放つ。刃はカサゴのひれを貫き浄怪、自動車の邪怪は身動きが取れなくなる。
「そういう人だから、気にしないで」
そこへ強襲を構えたこがねが飛び乗り、車体とその中の肉塊に向けて連射。蜂の巣にして一気に浄怪していく。
じたばたと抵抗する邪怪の上でも、こがねはバランスを崩すことなく撃ち続ける。
「あ、弾切れ」
「ならこれを受け取りな!」
かしん、と新たな弾倉がひとりでに装填される。ミサキちゃんのポルターガイストのおかげだ。
「有り難く使わせてもらうね」
こがねはタイムラグを殆ど作らず、一気に肉塊を破壊し尽くす。
そしてその中に眠っていた核もまとめてただの肉片へと変えていった。
「はい、これでおしまい」
核を失ったことで自動車の邪怪は光の粒子を放ちながら完全に浄怪。こがねはそんな光のステージからひょいとクールに飛び降りた。
「助かったよ、おかげで倒せた」
「礼を言われるようなことじゃねーよ」
こがねとミサキちゃんはハイタッチをして互いの健闘を称え合っていた。
さあ、残るはあと一体。
「よぉ、てめーが晩出市の対邪処だな!?」
「そうだけど、文句でもあるの~?」
「あたしのことを痴女呼ばわりしたって聞いたけど、人のこと言えんのかよ時代錯誤のぴっちりスーツが!」
「デカチチ揺らして戦う筋肉おばけよりましじゃないかな~?」
「需要のなさそうな薄いヤツがほざいても個人の感想ですってくらいに説得力ねーなぁっ!」
「ホンット、妹さんと同じくらいムカつくわねっ!」
……これは、酷い。
ましろと茶々が盛大に口喧嘩をしている。郵便局の邪怪はそのついでにやられている、という状況だ。
互いに対する怒りが浄怪の念に反映されているのか、邪怪はハイペースで光に還元されていた。
「それから、駆郎にちょっかい出してるらしいじゃねーか!」
「それは、まぁ同じ地区で商売しているんだし。交流の一つや二つはあるでしょ?」
「婿にするとか聞いたけどな?あたしと同い年でもう婚期を逃した行き遅れってか!?」
「失礼ね!冗談に決まっているでしょ」
「本音はどうなんだかな、唾付けておかないと心配なくらいの魅力なしなのかよ!?」
「そういうことを気にしているあなたの方こそ、どうなんでしょうね~?」
「どういう意味だ、コラ」
「家族ぐるみで仲良しなんだし、もしかして駆郎のことが好きなんじゃないの~?」
「んなっ!?そ、そんな訳あるか!あたしとあいつはただの友達だ!」
口喧嘩は許す。
許すからその話題はやめてくれ。周りの視線がオレに注がれていて、この場にいるのが辛いんだが。
「男女の間に友情は芽生えないと思うけどな~?あるのは愛とエロだけってね、にひっ!」
「その脳味噌桃色なところが気にくわねぇなぁっ!あと笑い方ぁっ!」
「そんなに耳障り?にひひひひひひひっ」
「とぉーってもな!その口、二度と開かねーように溶接してやろうか!?」
「あ~ら、怖い怖い。これじゃあ鬼嫁コース確定ね♪」
「性悪女よりマシだよ、ヘソ出しの穴からよぉく見えるぜお前の腹が糞の溜め所並に真っ黒だってことがな!」
「視力がいいねー、汚物がよく見えるなんて対邪処としては最高じゃーん」
「褒めるくらいならあたしの見える範囲から消えてくれた方が嬉しいんだけどな、こんな風になっ!」
銃声と共に、郵便局の邪怪が消滅していく。
口喧嘩をしながら戦っている間に、腹の奥にあった核を撃ち抜いていた。敵ではあるのだが、ついでで倒された郵便局の邪怪が不憫に思えてしまった。
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