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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~
第六章:焦燥のバトル・ロード 5
しおりを挟む牛馬コンビのワンボックスカーは、海岸に向けてひた走る。
周囲の景色も次第に建物が減っていき、まばらに生えた樹木が目立つようになってきた。段々と決戦の地へと近づいている証拠だった。
車体が傾く程の方向転換。
急ブレーキも度々。
牛来さんの運転は見た目通りの荒っぽさだが、それも仕方のないことだ。
何せ車内には生身の人間が六人に霊が八人、柴犬霊獣が一匹だ。しかも大量の銃火器や刀剣類、自転車まで積まれている。みっちりぎゅうぎゅう寿司詰め状態だ。さすがに後方確認が出来ないレベルなので、霊達には体を可能な限り透けさせてもらい視界を確保させてもらっている。
「そういえば、てめーの親父のセクハラはどうにかならねぇのか?このはさんのはらわたが煮えくりかえり過ぎてもつ鍋になっちまいそうだぞ」
「あんたが心配することでもないでしょー?それにうちのパパはなんだかんだ制裁を受けているし、おあいこってことで」
ましろと茶々の口喧嘩は未だに続いている。一方、こがねは面倒になったのかその辺のことは姉に任せて一眠りしていた。
「人妻に手を出す時点で有罪、しかも子供の前でもお構いなし。同じ遺伝子を持つてめーも前にならえでやらかしそうだ」
「私がセクハラ?にひひっ、私からのアプローチならどんな男でも喜んで受け入れてくれそうだけど?どこぞの筋肉おばけよりは」
「お?胸に使いやすそうなまな板を付けたヤツがほざくねぇ?それで料理すれば男の胃袋を掴めるってか?」
「大きければいいという話じゃないんですぅ。そういうあなたは夜の営みぐらいにしか使い道がないでしょう?」
よくまぁ、そんなに罵倒の言葉が思いつくな。オレの語彙力だったらとっくに「バカ」と「アホ」を連呼していそうだ。
「はぁ……、やはり現実の女性というのは醜いですね」
憂いの気持ちを溜息と共に吐き出し、眼鏡をかけ直す相馬さん。終わらない口喧嘩に、遂に苦言を呈したのだ。
「どういう意味だそれ。あたしらが道端の汚物と大差なしだってか?」
「別に私はあなたなんかのお眼鏡にかなおうなんてつもりないんですけど?」
口撃の対象が、今度は相馬さんに移った。しかも先程までいがみ合っていた二人が手を組んで責め立てようとしている。もしかして口喧嘩を止めて結束出来るように相馬さんはわざと怒らせたのか。
と、思ったけど全然違った。
「その通り、私は現実の汚物などに興味はありません。三次元など汚いタンパク質の塊、二次元こそが至高なのですよ」
ただの過激派オタクだった。
「二次元って、アニメとか漫画のことか?」
「ただの紙じゃない。っていうか作り物じゃん」
「これだから素人は。虚構の存在だからこそ私達を絶対に裏切ることのない、楽園に暮らす普遍的優美さを備えた天使達なのです!」
それに関しては……概ね賛同するけど。公共の場で、しかも他人に面と向かって宣言して良い言葉ではないと思うぞ、先輩。
「これがガチオタ……こがね以上だな――げぶっ」
ましろの顎にこがねのストレートパンチがクリティカルヒット。そして一撃ノックアウト。起きていたのね、こがね。あとオタ趣味があったのか。
「うわ~、ちょっと引きます。どうせアニメキャラのエッチなシーンでしか興奮出来ない、可哀想な人ってことでしょ?」
「失礼ですね。私はあくまでもキャラクターを恋愛対象として見ています。それにピカリンマジカルやラッキーキララシリーズにそのようなシーンはございませし、私は求めておりません」
うわ、相馬さんも見ているのかよ。これだとオレも同類扱いされてしまいかねない。
「あ、ななも見てるよ!あと駆郎にぃも!」
「ななは黙ってろ、いや黙っていて下さい」
「駆郎の趣味は玩具屋の一件でバレてるから。今更だからね~」
なーんだ、手遅れだったか。はっはっは。
笑えねぇ。
これでオレの趣味を知る人間がまた増えてしまった……隠しきれないな。
「ったく、オレ様にはそういう趣味は理解出来ないね」
運転しながら、牛来さんが会話に入ってくる。
「相棒の趣味には不寛容なかんじ?酷いね~」
「いや、二次元好きは否定はしていない。理解が無理なだけだ」
「じゃあそういう牛来さんはどうなのよ~?」
「オレは年増好みだ。特に四十代以上がストライクゾーンだな。むしろそれより下は全員子供に等しい」
牛来さんも相当じゃないか。
熟女好きなんてまるで行兵衛と似た者同士――
「まさか、牛来さんも母さんを狙っているのか!?」
「なめるなよ小僧。オレ様はあんな見た目の若い美魔女は好きじゃない。しっかり老けていなければ意味はない」
「あ、そうですか……」
これはまた、業の深いことで。
やっぱり念導者には変人しかいない。
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