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女児霊といっしょに。~晩出霊獣伝説~
第七章:澱神無 7
しおりを挟む――ずずずずずずっ……!
海が震えて、波が小刻みに飛沫を散らす。
両目を失った澱神無はその体を伸ばし、陸へと揚がろうとする。
その体は一本の丸太、それが流木になって海の生き物の住処になったような姿だった。
だが、不完全な体と重量が釣り合っていないようで、体が折れ曲がりそうになっている。それを補うように澱神無は胴体から飛び出して蠢く触手を絡め合わせて、体を支える足を作っていった。
『相手もいよいよ切羽詰まってきたようだな!』
ガトリングが呻り、澱神無の即席の足を撃ち抜こうとする。が、それは読まれていており、数々の貝殻を組み合わせて作られた分厚い盾に阻まれてしまう。削ったそばからまた貝殻が追加されていき、らちがあかない。
『根比べってか。なら乗ってや――』
行兵衛のその予想は、外れた。
――ドゴッ!!!
これまでで最大級――電車くらいに太い触手が、新兵器のヘリコプターに叩きつけられた。
プロペラがへし折られ爆煙を上げる。
制御不能となった機体は上空で回転、墜落必至の急転直下で砂浜へと落ちていく。
『くそ、開発費いくらだと思っているんだ磯臭野郎!?』
悪態をつきながら、行兵衛は墜落していくヘリコプターから飛び降りる。その手の中にはお姫様抱っこ状態の母さん。とっても嫌そうな顔をしている。
霊達によるポルターガイストの浮遊状態がクッションとなり、二人は怪我なく無事に着地。それと同時にヘリコプターは砂浜に突き刺さり、べきべきと真っ二つに折れていく。
ドガァァアアアンッ!!!
そして、燃料に引火したようで内部から大爆発を起こした。
こうして機体は完全な鉄屑と化した。
「あーあ、これは大目玉食らいそうだな」
「それより早く下ろしてほしいんですけど」
死を紙一重で回避した直後だというのに、二人は普段と変わらずの様子だ。ベテランなだけはあるというか、なんというか。
そんな二人へと澱神無の捕食器官がしゅるしゅると忍びより、頭から食らいつこうとしていた。
「っと、邪魔するなよタコ」
噛みつく直前に、行兵衛は触手を素手で捕まえた。しかも、目視をせずに。
ぎりぎりと締め付けられて触手は苦しそうにのたうち回るが、行兵衛の手から逃れることは出来ない。挙げ句、そのまま浄怪させられてしまった。
仕事服も浄怪道具もなし、完全な素手で浄怪なんて……凄い。母さんにセクハラさえしなければ尊敬出来るのに。
「核は残り一つか!?なら、あと一息だな!」
行兵衛が母さんをお姫様抱っこしたまま、こちらにやってくる。何様のつもりなのだろうか。
「そうですけど、何か?」
「あいつは滅茶苦茶に攻撃してくるはずだ。ならこっちもやりたい放題してやろうぜ」
「それには賛成しますが、母さんを早く下ろしてくれません?」
「それはつまりだ、オレもこのはさんにやりたい放題ってこと――ぐべっ」
顎へ垂直なアッパー一撃。
行兵衛は舌を噛んでしまったようで血を吹いている。
「次は本気で殴りますよー?」
母さん、もう今ので十分本気のパンチだったと思うよ。
あと行兵衛はもう少し時と場合を考えて発言してくれ。
そんな二人のことは置いておくとして。
「ボクは遠距離射撃を担当するから……」
「あたしと駆郎で中距離から弾丸と矢をばら撒いてやるか」
「んで私は至近距離から肉削ぎってことで♪」
「あたいらがお前達を浮かせてフォローする……で、いいよな!?」
―我は澱神無を倒せればそれでいい―
「私達のことも忘れては困りますね」
「オレ様だって活躍したいぜ」
「よ~し。あとちょっとだ、頑張ろーっ!」
「これが本当の最終決戦にしようじゃないか!」
澱神無のダメージは大きい。体は大きく損壊しており、崩れかけ。核も残り一つとなり、いつ浄怪してもおかしくない。
だが、その戦闘力は未だ健在。むしろ土壇場に立たされて余裕がなく、なりふり構わない猛攻を仕掛けてくる。
それでも、オレ達は最後……勝利の瞬間を目指して戦う。
最終ラウンドのゴングが鳴った。
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